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異世界でもコツコツ強くなっていきます!  作者: 黒陽
七章 四国対戦
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第八十九話 先見えぬ展開

 第八十九話 先見えぬ展開


 サクラが消えたのち、輝が気づいた時にはすでに時遅し。輝の腹にはサクラの拳が命中していた。

「ウゥ……」

 輝は三つのカプセルを使用した。ラベンダーと世界樹の香り、そしてアサイーだ。これらでスターテスを底上げしている。ちなみに、カプセルは輝の魔法と違い、単体、つまり個人にしか効果がないのでサクラにも特があるわけではなかった。


「サクラ……やるな」

「まだ、話してる余裕あるんだ!」


 そして、また琢磨に二度目、三度目とサクラの物理攻撃を受けていった。

「くそ……」

「香りが効かない相手にはやっぱり脆いね」

「それにサクラが相手だからな……」


 しかし、輝には実際どうすることもできず、ただただサクラの猛撃を受けていた。

「(どうすれば……)」

[ムリュウを!]

「(でもあいつには待ってろって!)」

[だから呼び戻して!]

「(でも、俺あんなこと言って恥ずかしいだろ!)」



 現在、ムリュウは輝に言われ、別の人が隠れている建物にいる。いつものように魔力を空にするのは勿体無いと言うことで輝はわざわざお願いしたのだ。


「仕方ないか……」

「良い心得ね」

「悪魔ムリュウ! 頼む、力を貸してくれ!」

「悪魔? もしかして、それって私が森で見つけてオークションに出したの!」

「サクラだったのか!?」

「じゃあ、私は恩を売りすぎちゃったみたいね」


 笑うサクラを前に輝は真剣にムリュウに向き合っていた。


「ムリュウ、頼めるか?」

「魔力はどこまでの使用を?」

「三十ぐらいなら良いぞ」

「あいよ!」


 そうするとムリュウは輝とサクラの間に浮かんでいた。


「何この子、ほんと可愛い!」

「俺を可愛いってか?」

「何? 小さくて可愛いじゃない」

「小さいって……舐めやがって!」


 ムリュウの手から黒い球のような物が現れた。そして、見る見るうちにその形は長細くなっていき、最終的には剣のような見た目となった。


「あら、可愛い剣ね」

「……」


 ムリュウはサクラへと飛んでゆき、斬りつけた。しかし、サクラも油断してはおらず、瞬く間に輝の前へと移動していた。ムリュウも負けず劣らず、輝の前に飛び移り、サクラの拳を剣で受け止めた。


「なかなかの剣のようね」

「当たり前だろ!」


 そうして輝の前では次元の越えた戦いが繰り広げられている中、スカラもアケハもなかなかの苦戦を強いられていた。


 アケハの相手は二人とも狼になる変身魔法の持ち主で一人相手なら勝てる程度の相手だが、連携した攻撃にアケハは手こずっていた。片方を抑えようとしたならば、もう一人が、そしてその逆も然り。アケハは完全に攻撃型の鋼の翼を用いているからか、魔力の方に懸念が見られてきた。


 スカラが相手にして象は、象のように遅い動きでなく、腕力だけでなく速度もあった。そこにさらに加えれた賢さと頑丈さがスカラのガスを活かせていなかった。ガスを上手く交わして長い鼻を用いて息を吸うなどとまるでガスを嗅いでいるようであった。しかし、輝のフェロモンの効果がないことから鼻は効いていないはずだったのだ。



 輝の魔力はムリュウによって三十以上を消費されていたのにも関わらず、未だにサクラとの決着はついていなかった。


「なかなかやるんだな」

「あなたも小さいのに凄いわね」

「小さいのは余分だ。好きでこうなんじゃないからな」

「まぁ、魔力がもった方が勝ちみたいね」

「結局そういうことか」



 輝のカプセル、フォレストフレグランス世界樹の香りがあるために輝たちは魔力に置いて優勢であっても良いのにも関わらず、それでも苦戦は間逃れなかった。


「テル、どうだ?」

「こっちはマジできつい。象の方は?」

「ガスの匂いを嗅ぎ分けてるみたいなんだ」

「遺伝子を組み替えても元々鼻が良いからな……俺がやってみるよ」

「じゃあ、タイミングを言えよ」

「一、二、いや、今だ!」



 そして、それぞれ相手を変えた二人は違う相手を目にした。

「パウぉーん!」

「これで二体一ってことね」



 輝は早速、アンチフラワーフレグランスのカプセルを象の鼻に突き込んだ。カプセル型の利点はアタッチドをしなくて良い点であった。多少の効果はあったようで、象は辛そうに鼻を振り回した。


「まだまだ!」


 輝は次から次へと隙を見つけてはアンチ系香り魔法、レモンとアサイー、そしてラベンダーをつぎ込んで行った。


「ぱ、パウぉーん!」


 辛そうにしていた象にサクラは飛び乗り何かを行うとムリュウとスカラの相手に戻った。

「(とんだ余裕だな……今のでまさか……)」


 象は途端に痛みを感じなくなったよりにキョロっとしていた。


「(香りが防がれた……)」


 そうして今まで弱り切って動きも遅かった象は元気を取り戻し始めた。

「させるかー!」



 輝はひっそりと使用していた無数のアサイーカプセルの効果を用いて、剣で象に斬りかかった。通常なら象も防ぐ、または避けることがあるが今回は違った。


「ぱ……ぅ……」



 そうして巨体は地面に横倒れた。


「スカラ! やったぞ! (かなりカプセルを……)」

 輝の作成したカプセルはすでに最初の半分をきっていた。


「あれ……今かよ……」

 そしてそのタイミングで輝の機力切れ、輝はしばらく休みについた。


 そして、その間、スカラとムリュウもサクラが象に魔法を掛ける際にできた隙を狙って、サクラを追い込んでいた。

「やっぱり、二人相手は……」



 確かに、速度も力も何もかもが最強とも思える遺伝子組換えを応用した魔法だったのだが、防御はムリュウが担当し、対して攻撃にはスカラのガスがあった。つまり、サクラは一瞬たりとも油断ができなかったのだ。しかし、そのタイミングでの、輝の機力切れはムリュウがいなくなることを意味していた。

「おい、テル! 今かよ!」


 しかし、遠く離れた位置で戦っているアケハには異変があった。魔力が底をついたのだ。飛んで逃げてもその二人の狼男たちがサクラ方へ行っては、と必死に戦っていた。しかし、時は時、アケハの焦りが隙を生んだ。そして、その隙をしっかりと詰める、二人の狼男はアケハに留めをさした。

「あぁ……」

「悪いな、女の子にはこんなことは支度はなかったんだけどな、サクラさんはやっぱ怖いからな」

「俺もだ、一様自己紹介な。俺たちは双子でプレイしててな、俺がデイルで、こいつがドランだ」


 しかし、すでにアケハの背中をドランの爪が貫いていたために返答はなかった。そうして、二人はサクラの方へと走って行った。


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