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異世界でもコツコツ強くなっていきます!  作者: 黒陽
七章 四国対戦
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第八十八話 秘策―必勝法

 第八十八話 秘策―必勝法


「これから絶対に勝てる作戦を言うぞ!」


 皆は息を飲んだ。


「まず……」


 輝はその後一時間にも上る間熱く語っていた。聞いているものもいればいないものもいる。しかし、アケハが輝のもとへ来た時、それも終わった。また、それと同時に放送も入ったのだ。


「近況をお伝えします。マジリストは国に戻った後、動きはありません。アニマリストは現在マルチリスト外壁近く、マジリストには目立った動きは見られません」


 皆は顔を見合わせて心の準備をしていた。


「アケハ、それで?」

「人数は百人ぐらいってことは国の半分ぐらいの人が攻めて来てる。でも一番厄介なのは動物かな?」

「それで鳥はいたか?」

「そこまではわからないけど、サイロスカリウスとかベアークスとかもいたよ」

「そこまでは想定範囲だな」

「後、ものすごく大きい鼻の長い……」

「わかった(象か? この世界にはいないのか? ならなんで……)」

「それでどうするの?」

「ここが俺の出番だな」


 そう言うと輝とスカラは外壁の外へとアケハに降ろしてもらった。すると、早速遠くから動物が輝のもとへ走って来た。

「フラワー・フレグランス! 階級分化フェロモン!」


 輝は剣を手に持ち、スカラも準備満タンだと言わんばかりに首を鳴らした。

「やるぞ!」

「おう!」



 そうして輝とスカラのツーマンショーが始まった。香りに近付いてくる動物はフェロモンで弱体化、そこをスカラは一気に仕留める。その連携のおかげもあり、足の速い動物は全般的に死んだ。しかし、軍はベースアやサイロスカリウス、ベーアクスに乗っている。そうして、軍は輝たちを前に止まった。


「テル!」


 そこに軍の中から走って来たのはサクラであった。


「サクラ!?」

「どう、すごいでしょ! 私実はこの軍を任せられてるんだ!」

「そうだね……」

「テルは強くなったみたいだけど、流石に二人じゃね……」


 サクラは輝に微笑んだ。そして、急に目を細くして言った。

「ここからは真剣勝負だからね! 手加減ももちろんなし!」


 そう言うと輝の方に三頭サイロスカリウスが放たれた。


「それじゃあ、お先!」


 そう言うとサクラ率いる約半分の軍勢は輝たちを避けて外壁に向かった。


「スカラ、早く片付けるぞ!」

「できたらな!」


 そうして輝の香り魔法が……先ほどとは違った。そう、動物は挑発にも乗らず、平然としていた。


「香りが効いてない?」

「みたいだな、さっきよりも手強い!」

「くそ、もしかしてサクラの魔法か……」


 輝はサクラの魔法によって遺伝子が組み替えられ鼻が存在しないのではと読んだ。しかし、輝も香りだけではない。剣は香りによって長く、鋭かった。そして、スカラは相変わらず、ガスの多量だ。なぜなら、香りが聞かないと言うことはガスも匂えないからだ。


「悪魔ムリュウ!」

 黒い煙幕とともにムリュウが現れた。


「久しぶりだな!」

「ムリュウ、早速頼むよ!」

「おい、なんだよその態度!」

「香りが効かないんだ、ムリュウ強いんだろ」

「おうよ、俺様を誰だと思っているんだ!」


 そうしてムリュウと輝によって人が、動物は全般的にスカラが体ごと爆発させることで気付けば敵一人に亡くなっていた。


 しかし、サクラが率いた半分の軍は城の方へと足を進めていた。

「それにしても人がいないんだね」

「そうですね、まさかパワリストに向かって行ったのがほとんどだったのでは? これもわかっていたのですね?」

「いや、待って、おかしい。それならなぜ私たちを入らせたの? でも動物たちの鼻は人の匂いがわかるのに……」

「王がいないからでは? つまり城で待っているしかないと知っていたのでしょう」

「どうかな?」


 そうしてサクラたちは城への階段を上っているとき、マルチリストの戦いが始まった。周りの建物から姿を表した全員が同時に五十人程度の軍勢に襲いかかったのだ。


 全員が輝のフォレスト・フレグランス、ヒノキのカプセルを用いて動物から匂いを消していたのだ。そうして輝たちが急いで城の方へと走っている頃、城の方からは大轟音が聞こえていた。


「始まったな!」

「うまくいくかな?」

「わからないけど、さっきのサクラっていうのはやばいぞ!」

「遺伝子組み換えなら……もしかして……」

「そうだ、スターテスを弄ることも可能ってことだ」

「やばいな……」


 そうして輝たちが着く頃にはサクラを含めた三人に対して、マルチリストは六百人以上いた。


「これ、俺たち行かなくても勝てるんじゃね?」

「いや、多分死んだやつらはこの三人にやられてるだろうな。だって見ろよ、あいつらの足元ばかりに……」


 そこで七度目の放送が入った。

「近況をお伝えします。現在マルチリストにアニマリストが攻め込み、全滅間際。マジリストはアニマリスト全軍に侵攻を開始しました」


 そのアナウンスメントを聞いて誰も驚きの顔一つ見せなかった。そう、これは輝が言った、スカラの作戦の一部だったのだ。


「それでは最初に俺とスカラが外壁前で何人かをやらせてもらうから、他は隠れていてもらいたい。このカプセルを使ってくれ。そして、城への階段を上がり始めた時に全員で攻撃だ。俺たちもあとで参戦する。それでだ、放送が入ったときにマジリストがアニマリストを攻めていたらそれは一番いいケースだ。マジリストア一番強いだろうからな。それで俺たちが参戦したら、また隠れてくれ、皆には最後まで生き残っていてもらいたい」



 そうして輝とスカラ、アケハはサクラとサクラの乗っている武装した象、そして二人の男が向き合った。


「サクラ、どうやらこれでアニマリストも終わりみたいだな」

「どうかな? ここで私たちが生き残るよ!」

「ずいぶんとマルチリストを舐めているんだな」

「だって、人数とあなたたち二人だけでしょ」

「まぁいい、始めよう」




 全員がまずカプセルを使用しスターテスを上昇させた。

「スチールウィング!」

 アケハの両腕は鋼の翼となり、男を二人相手にとった。


 相変わらずスカラは動物相手、匂いが嗅げない象を相手にとった。


 そして、サクラの前には輝がいる。


「私のあげた剣使っていてくれてほんとよかった」

「便利だからね」

「じゃあ、今回はお礼に負けてね」

「それはどうかな?」


 その瞬間サクラは輝の前から消えた。消えたように見えるほど速かったのだった。


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