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異世界でもコツコツ強くなっていきます!  作者: 黒陽
七章 四国対戦
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第八十六話 念願の開幕

 第八十六話 念願の開幕


 輝の眼の前にあった魔道書はみるみるうちに姿が変わってゆき、光が消えた時には輝の手ものにあった魔道書は香り魔法の書特級となっていた。

「すげ!」


 輝が思わず声をあげたのを快く思っていないスカラはアケハを連れて自ら魔物を狩りに行った。しかし、そんなことに気づかない輝は早速魔道書を読み進めていた。


 その本に載っていた魔法とは、香りカプセルという魔法であった。それも香り魔法を閉じ込めることができるカプセルができるというもので、使用がいつでもできる代物であり、誰でも使うことができるというものでもあった。


「(これはマジで使えるって!)フレグランスカプセル!」

 すると、魔力が一使用された輝の手ものにはカプセルができていた。

「(えっと、それで……)」

[アタッチド系の香り魔法で香りを閉じ込めるのですよ!]

「(わかってるって)フルーツフレグランス・アタッチド! (このカプセルの中に!)」

 すると、カプセルの色は変わり始め元々無色であったカプセルは今や虹色のような色を帯びている。


「(使用法はっと)」

 輝が魔道書の箇所を探しているとまたトクが自慢の記憶力で輝に伝えた。

[カプセルを潰すのですよ!]

「(今見つかったところなんだよ!)」

[もっと私に頼ってください!]


 そう言い争うながらも輝はカプセルを潰してみる。すると、カプセルから甘い果実の香りが広がった。


「(これはすげーな、これでフェロモン町もしなくてよさそうだ! 後、魔力切れも多少は心配いらないってことだな)」


 そういうと輝はカプセルを量産し始めた。状態異常を回復するためのペパーミントや、体力回復のラベンダー、スカラたちのための性フェロモンカプセルなど多種多様だ。しかし、輝がお詫びを入れようとスカラとアケハを探そうとしていた時、戦争一日前のアナウンスが入った。女性の声だ。


「ついに四国戦争前日です。準備はよろしいでしょうか? ここでルール説明です。まず、四国の配置はマルチリストが南東に位置し、北東にはパワリスト、南西にアニマリストとあり、北西にマジリストの国がそれぞれあります。攻撃の手順は問いませんし、一度負けたら退場つまりは戦争です。君主が取られたものが敗北というルールも変わっていません。それでは最後の一日優雅にお過ごしください」


 すると、輝は空を飛んで城の方に向かうスカラとアケハを見つけた。

「アケハ! スカラ!」

 二人はそのまま行ってしまったが、輝も急いで二人を追うようにして城に走って戻って行った。



 城に着くと、そこはいつかを思い出させる人で埋め尽くされていた。しかし前のように活力が抜け酒に溺れ切ったものではなく、皆がやる気に満ち溢れていた。輝が通っていくと、道がすっと開き、皆からの歓声をえた。

「(どうなってるんだ?)」

[もしかして王様だと勘違いしているのでは?]

「(俺そんなこと言ってないけどな)」


 中には輝に魔道書を渡すものもいた。

「テルさん、これ多分香り魔法系だと思います。よかったら使ってください!」

「私も当たりました! これよかったら!」


 そう進んでいく間に輝は四冊ほどの魔道書を手に入れていた。

「ありがとうな」

「ありがと」


 輝も誇らしげに歩いていく。すると、城の階段で待っていたスカラは照れながら言った。

「悪いな! ちょっとカッとなっちゃってな。それでこの魔道書使えるだろ?」


 そういうと輝はスカラから魔道書を受け取った。そのスカラの後ろには数十冊もの魔道書が積み上げられていた。

「俺も悪かった」

 ケチなスカラが自分のためにと輝は喜びを隠せずに、十ほどある性フェロモンカプセルをスカラに渡した。


「これは?」

 首をかしげるスカラに、輝は

「これを潰すと俺のフェロモンの魔法が発動されるんだ。それで俺は必要ないだろ?」

 スカラは嬉しそうに受け取っていた。


 そして輝はアケハに頼んで城の屋根まで飛ばしてもらった。皆の視線が集まる。香り魔法を使っていないのになと輝は首をかしげる。

「知っての通り明日から四国戦争開幕だ! そこで今日中に一度は魔力をきれさせることをお勧めするがそれは難しいだろう。それで作戦なんだが、きたものを返り討ちにするスタンスがいいと思うんだが、どう思う?」


 前回を思い出させるように、スカラは人に混ざって叫んだ。

「それでいくぞ! おぉー!」

 するとアケハの出番は虚しく、皆がすぐに盛り上がった。


 安心した輝は受け取った魔道書を読み始め、カプセル政策も開始した。魔道書の中にはレモンや、ペパーミント、集合フェロモンの三つ同一のものが存在し、使い物にはならなかったののの、二冊は新しい魔法であった。


 一つ目はフルーツスレグランスの派生、アサイーであった。食べた際に効果があると思われるアサイーの効果はなぜか筋力の増強であった。控えめなアサイーの香りが広がるそうだ。


 そしてスカラが準備した、二つ目は、世界樹の香りというものであった。アケハの情報によると現世でも伝説上とされ、ペガサスと似た立ち位置だとのことだ。その効果は魔力の回復、仕様に使う魔力とどちらが多いのかは気になるが、こちらはまるで森の中に一人いるような、自然の優しい香りに包まれるそうだ。


 輝がそうして大量のカプセルを作成してはポケットに入れていくことで輝の魔力も着々と上がっていた。


「テル!」

「なんだ? スカラ」

「あのカプセルすごいな!」

「そうか?」

「あぁ、お前みたいに文句は言わないし、しかも同じ効果だぞ!」

「もっとあるけど持ってくか?」

「いや、俺はこれから休憩に入る。お前も休んでおけよ」

「それでアケハは?」

「あいつは俺が昨日……違う、たまたま拾った魔道書を分けたいるぞ」

「そうか、他の奴らも強そうか?」

「まあまあかな、一様数だけが取り柄の国だからな」



 そういうと屋根に寝転んでいる輝の横で目を閉じ休み始めた。輝はそのまま屋根の上でカプセルの作成を続けているころ、ついに開幕のアナウンスが入った。


「それでは四国対戦スタートです。実況アナウンスメントは二時間ごと、各国の動きをおって説明していきます!」


 どの国の人もやる気に満ち溢れていたのだが、動き出したのはただ一国、マジリストであった。しかし守って攻めるスタンスのマルチリストからしてみれば戦争はまだまだ始まったばかりだ。


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