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異世界でもコツコツ強くなっていきます!  作者: 黒陽
七章 四国対戦
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第八十五話 士気の高まり

 第八十五話 士気の高まり


「皆に聞いてほしい!」

 輝は大声で皆の注目を集めた。


「俺はテルだ。後五日で四国戦争が始まるのは知っているだろ。俺たちは本気で勝つつもりでこのゲームに参加している。だが、皆の力が必要なんだ!」


 輝の方を物珍しそうに見るものや、興味がないと注意を払わないもの、熱心に聞いているものもいた。


「(チッ、聞いてないな。仕方ないか……)フルーツフレグランス! レモン!」

 柑橘系の爽やかなレモンの香りが広がっていく。その後にも輝は幾度も同じ魔法を唱え、国中に香りが広がっていった。


 すると、人々は香りに翻弄されながらも、皆が輝の方を見た。


「これが俺の魔法だ。皆には弱いと罵られてきたがこの魔法でさえも、これほどの威力がある。知っているものもいるかもしれないがこれでダメージを与えることさえできる。だから、聞いてほしい。もう一度、やる気を出して国の勝利のため、ゲームクリアを目指さないか!」


 皆は顔を見合わせていた。突然現れた青年が何を言うと。しかし、香りの効果もあり、知力の上昇から今すべきことを考えていた。そこで先に言葉を発したのは輝の横ではなく、人々の中に紛れ込んだスカラであった。


「俺はやるぞー! おぉー!」

 輝は軽蔑の目でスカラを見た。


「私も勝つ! マルチリスト最強!」

 あっちでもバカをやっていると輝が向く方にはアケハがいた。


 しかし以外にも効果があったのか、賛同するものが増えていった。

「シャーねーな」

「せっかくだしな」

「勝っちゃいますか!」

「おぉー!」

「マルチリスト、万歳!」

「マルチリスト、万歳!」


 皆の声が響き渡り、活気が取り戻った。しかし皆が抱えていた問題はこれからどうするかと言うことであった。武器をほとんどのものは売ってしまい残ったのは酒、それも空ビンばかりだ。加えて魔法がそれほど使えないものまでいる。


「まず最初に場内にいる魔物を狩ってもらう! だがその前に城の下にきて魔法を見せたものには対応する魔道書を与えるかもしれないからそれを心得るように」


 そう言うと輝は城の屋根からアケハに降ろしてもらい、城の麓まで行くと、多くの人が詰めかけていた。皆が魔道書、魔道書と口を合わせてだ。


「えっと、どの魔法を使いますか?」

「炎魔法です」

「見せてください」

「それではこれを」


 魔法を聞き、魔法を確認し、それぞれにあった魔道書を三人三役で捌いていく。みるみるうちに山ほどあった魔道書の数は減って……いかなかった。その理由としては、酒に浸っていたものの使えない魔道書のハズレくじを記念にと持っていたものが以外にも多かったのだ。


「きついな」

「そうですね」

「いや、魔道書を探す俺のみにもなれよ」

 輝が二人に怒鳴る。

「これはテルの案だろ」

「私そう言うのは苦手だからね」


 そう言いつつテルに任せっきり、そうして魔道書がなくなる頃には、先ほどまで座り込んだ人で埋め尽くされた道には人一人いなかった。


「皆魔物を狩りに行ったか」

 輝は一息つく。

「あぁ……俺の魔道書、俺の金が……」

「それで私たちもいく?」

「当たり前だろ、金の分しっかり稼いでもらうぞ!」


 そうスカラが言うと三人は狩りを行う人だかりを避け、国外へと魔物を狩りに出た。実際に城壁の外にいることが普通であり、完全にマルチリストは遅れていたのだ。



 しかし輝たちが五百コンクほどの報酬額分を二日で稼いでいる間、場内の魔物は消え去り、人に活気が戻っていた。実際、ベーアクスのような魔物もいたのだが、マルチリストの強みである人の数により討伐、また魔道書の恩恵は大きかった。また、輝たちの稼いだ分はまた二百コンクほど魔道書に使い、三人のいらないほとんどのものを人々に渡した。


 スカラはその工程でちゃっかりとガスパペットというガス上の動く兵士を作るというかなり強い魔法の魔道書を見つけ喜んでいた。対して、アケハの方も四翼という永続魔法を魔道書で見つけ魔法が同時に二つ展開出来るようになっていた。しかし、取り残された輝は未だに特級の香り魔法の書を見つけたれず焦っていた。


「スカラ、今日はどうする?」

 アケハが行く気満々に言う。

「もちろんだ」

 そう言うとスカラも立ち上がる。

「俺も?」

 輝はふてくされながら言うが、もちろんだと言われ俯いていた。実際輝がしていることといえば、おびき寄せ、他には何もしていないのだ。結局戦争二日前までは討伐に終わることになった。毎回、フェロモンはまだかと輝は聞くと、まだ討伐中だとスカラが言う、そんなところであった。


 しかし、その二日前の日にあまりにもつまらなく輝は久しぶりに鼻をほじりながら香り魔法の作成者あとがきと言う本を読み始めた。初めはハズレとばかり思っていた輝は香り魔法の経緯の薀蓄を読んでいるうちに止まらなくなり、フェロモンを出せとスカラは何度輝に怒鳴ったか数えることはできなかった。そして、ついにきてしまった最後のページを開く、お前の最強の香り魔法をこの本へ放てと書かれていたのだ。


 輝は首を傾げながら冗談半分にすることにした。後に、フェロモン用の魔力が足りなくなることも考えずに……

「アンチ・フラワーフレグランス・アタッチド! ペパーミント! (この本に!)」

 しかし魔力も減っているにも関わらず、本からは香りが溢れ出さない。輝はおかしいと、別の魔法を唱える。


「アンチ・フラワーフレグランス・アタッチド! ラベンダー! (この本に!)」

 それでも何も変化がなかった。そしてまだまだと輝が3度目の魔法を唱える。ちなみに輝の魔力上限はフェロモンのおかげで着々と上昇し、ついにはLXつまり六十二まで達していた。


 他のスターテスと言うと、腕力:XX、脚力:XL、精神力:XXX、知力:VIIだ。それほど動いていない輝にはそれほどの成長はなかったのだが、あれほど乏しかった精神力がなぜか、そして城の門までの距離を飛んでではなく、ランニングをすることで脚力が上がっていたりと知力と腕力を除けばなかなか誇れるものではあった。


「アンチ・フルーツフレグランス・アタッチド! レモン! (この本に!)」

 すると、ついにきたのかと魔道書が輝き始めた。


「テル!」

「フェロモンお願い!」

 その間にもスカラとアケハが声を出して輝にフェロモンを催促するのだが、輝の耳には届いていなかった。


「(どうなってるんだ!)」

 輝は完全に夢中になって本を見つめていた。


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