第八十四話 真の力
第八十四話 真の力
「ペガサス!」
その時、アケハの腕は大きな漆黒の翼へと変異し、アケハは力強く飛び立った。そのまま、アケハは天にも届くほど空へ向かった飛び立った。
「すごいわ! ここまでこれたの初めて!」
アケハは空高くで叫んでいる。しかし、輝とスカラはそれ以前にアケハの飛んでいく様子に呆れていた。
「凄い……」
「俺のガスはやっぱりな……」
そして、急下降して降りてきたアケハを二人は見た。
「凄かったわ」
「見たよ、凄いな」
「まだこれだけじゃないのよ」
「飛ぶ以外にも?」
「えぇ、この翼は強いからね」
そう言うとアケハは翼のままで翼の先を丸めて壁を殴った。ボロボロと砕け落ちる壁、輝たちはもう狭い路地にはいないのだ。
「つまり、攻撃にも使えると……」
「でも消費魔力がね」
「そりゃこれだけだとね」
「それよりスカラは何かないの?」
「俺はもう全部確認したけどな」
「そう」
三人は魔道書の確認に再び着手した。そして、半分が終わった頃、特に進展はなかった。
「なんか色々あるけどあまりないね」
「テル! フェロモンについて書いてあるやつ見つけたけどこれって使えるのか?」
「試してみる。その本投げて!」
スカラの投げた本を受け取った輝は早速読み始めた。その魔道書は階級分化フェロモンについてであった。これは他の動物の潜在能力値を低下させる効果があるのです。
「これは使えそうだな」
「礼はいらないぞ」
「だって討伐報酬をもらうからな!」
「俺が損してるぐらいなんだぞ」
「それはこれからの討伐頭数次第だろ!」
「あぁ、しっかり働いてもらうからな」
そうして他の魔道書の整理も無事終わり、三人は他の人に使えそうな本を交換した。まずは輝から始めた。
「スカラにこれ使えそうだと思って……ガスガンって書いてあるんだけど……」
「おぉ! 夢じゃなかったのか! ありがと、テル。見たような気もしてたんだけど諦めてたんだ」
「それでアケハには何もなかった」
次にスカラが。
「テルにはさっきやっただろ。それでアケハには、鋼の羽ってのだけどどうだ?」
「えぇ!? なんか強そう! スカラ、ありがと」
「どういたしまして」
最後にアケハが。
「えっと、テルにはまた使えないと思うけど、フェロモンって書いてあるのがあったわ。あと、スカラには何も見つからなかった」
「ありがと」
「どういたしまして」
そうして他の魔道書を全て袋に入れたスカラたちはそれぞれの一冊を読み、会得した。まずは、スカラのガスガン。それは勢いよく発射されたガスの塊が衝突すると言うものであった。
「ガスガン!」
その目に見えないガスの塊は壁を突き抜けた。
「エクスプロージョン!」
そうして、もう一つの壁は破壊された。
「でもなぜ壁が……」
「ガスにガスガムを使って粘着させたんだよ」
「つえーな」
「そこはテルに感謝だな」
そして、アケハの鋼の翼は飛ぶことができないバッタもんであった。
「スチールウィング!」
アケハの両腕は翼の形をした鋼の塊へと変貌した。飛ぼうと試みるもののそう上手くいかずアケハ自身もおどおどとしていた。
「飛べない……」
「これは攻撃用ってか?」
「多分……」
そう言ってみるものの、国の壁のはしに囲まれた行き止まりの両壁はすでに崩れている。そう、残るは国の防衛壁なのだ。
「試していい?」
「……」
「……」
スカラと輝は顔を見合わせた。
そう言ったアケハは力強く壁に翼を叩きつけた。
「どガーン」
そうして、みるみるうちに崩れていく壁は、元々の高さの三分の一程度を失い、壁の土台部分は山のように盛り上がっていた。
「完全に攻撃用だな……」
「そのようね……」
「やばいな……」
そうして輝の受け取ったフェロモンの本は性フェロモンの魔道書であった。
「これ使ってみていい?」
「効果はなんだんだ?」
「雄の生き物を引きつける、また雌の生き物をなだめる効果ってあるけど……しかも広範囲らしい……」
輝は二人を見た。
「これって動物がよってくるってことか?」
「そうみたいだね」
三人は顔を見合わせた。
「使ってみるか!」
「えぇ、でも……」
「なんだ? ちゃんと討伐費用を稼いでもらわないといけないからな」
「了解。性フェロモン!」
広範囲に動物たちにしかわからない特殊な香りが発せられた。
「えっと……」
「アケハ様子を見てくれる?」
翼を変化させたアケハは空に飛び上がった。
「アケハ! 何か見えるか?」
「やばいって! なんか緑色の鎌見たいな奴が五、六匹やってくるのが見える!」
「それってカリマスカのことか?」
カリマスカであった。そして、穴の空いた両壁、そして元々の道からカリマスカたちが現れた。
「テル、どうしてくれるんだよ!」
「スカラが言ったんだろうが!」
「だからって、こいつら安いだろうが!」
「そんなこと言われたって……」
「ガスガン! ガスガン! ガスガン!」
スカラは全ての方向からのカリマスカを一瞬にして討伐。
「エクスプロージョン!」
そしてその背後のカリマスカまでもが吹く飛んだ。
「スカラ!」
「なんだ?」
「一人でやっちゃうなよ」
「いいだろ! まぁ、この調子なら結構討伐もできるかな、魔力消費もそれほどだしな」
そうして輝のフェロモンをアケハの翼でさらに広範囲から寄せ付けるなどをして、その討伐はスカラの魔力が切れるまで続いた。
「えっと、スカラまたやるのか?」
「いや、俺もう魔力が……」
「私も」
「俺は魔力が上がったからな! 四十だぞ!」
「まぁ、いろいろカリマスカ以外もいたからな、結構稼げただろう」
「じゃあ帰るか!」
「いや、ちょっと待とう! もっと狩るぞ!」
「じゃあ、二人は休んでて。アンチ・性フェロモン!」
そうして、スカラとアケハは眠り、輝もしばらくして機力切れで寝た。
そのような繰り返しの日々が続き、輝たちは合計数千コンクまでもの討伐頭数に達していた。カリマスカ以外にも、五コンクだが八匹程度の集団行動をするゴクロチと言う黒い小さなすばしっこい動物もいた。そしてある日、戦いまで五日という情報が全てにアナウンスされた。
「四国戦争をプレイしていただきありがとうございます。ついに五日前にまで迫りまして、準備はいいでしょうか? 一日前に最後のアナウンス、説明をしますのでそれまでお待ちください」
城に帰った三人はギルドの管理人から多額をもらい、全てをスカラのと言っていたものの結局は、魔道書を買うのに二百コンク程度使われ、結果は何もめぼしいものはなかった。
「さて、この本の山をどうする?」
「さてな、少しこの国に貢献するか?」
「どういうことだ?」
「配布だよ。つまり、この国のあのやる気のない奴らを駆り立てるってこと!」
「でも……」
「俺の香りとお前の本でだよ!」
「フェロモンか?」
「いや、普通の香りでいいはずだ」
「しかたねーな、金が勿体無いけどな!」
そうして輝、スカラ、アケハは城の前、つまり全ての人から注目を集められる場所に立った。そこは城の二階の屋根だ。
「(どうせゲームなら、集団でやろうじゃねーか!)」
[勝つってことですね]
「(あぁ)」




