第八十三話 ウィンウィンの関係?
第八十三話 ウィンウィンの関係?
輝が目を覚ます頃には、すっかりアケハとスカラは話し込んでいた。
「おはよ」
「それでどうしたの?」
「それでな……」
二人は輝が起きたことにも気付かず話していた。
「スカラ! アケハ!」
「おぉ! やっと起きたか、つい話し込んじゃったよ」
「ずいぶん仲良くなったようだな」
「あぁ、結構アケハいいやつだぞ」
「あ、そう……なんだ……(なんか一人取り残された感があるな)」
するとアケハが話し始めた。
「それでどうするの? 今日まだ何日か知らないけど、そろそろ戦争開始でしょ」
「そうだよな、まぁ考えても仕方ないけどな」
「とりあえず今は討伐で稼がないと」
「ならアケハ、魔物がいるところを探してきてくれ」
「わかったわ」
アケハの腕は羽へと姿を変え、アケハは空へと飛んで行った。スカラと輝はアケハの帰りを待っていた。
「それでアケハはどうするんだ?」
「どういうことだ、テル?」
「討伐報酬のことだよ」
「そうだな、まぁ、何を買うかで決めれば?」
「てか、まず女性には話せないんじゃなかったのか?」
「いや、なんかアケハは違ったんだ、他とはな」
「そうか? まぁ、良かったな。克服できて……」
「それより彼女の魔法は想像以上だったよ」
「なんでだ? ただ手が羽に変わるだけなんじゃ?」
「いや、羽の大きさを変えると、風を起こすことだってできるんだって」
「(風って、ベルトかよ)そ、そうなんだ」
「それよりテルは金を何に使うつもりなんだ? 貯めとくなんていうんじゃないだろうな」
「ちげーよ。俺には魔法書がいるんだ。そうしないと魔力もかなり弱いからな」
「弱いって?」
「特にアンチ系は本当のよりもかなり弱くてな」
「そうか………俺の持ってる魔法書に何かないか見てみるか?」
「魔法書って、この前言ってた掛け合わせか?」
「そう、そう。高く売るためのやつ」
「おい、それって高く売るって言ってるようなものじゃないのか?」
「いや、勿論テルからはもらわないよ。その分、輝の討伐分は俺がもらうけどな」
「おいおい、それって……いや、悪くないな」
「だろ?」
「それでその魔法書は?」
「全部出すのか?」
「あぁ、頼む」
スカラは腰にかけた魔法の袋から次から次へと魔法書を取り出した。十冊以上の魔法書の山が四つ、五つ、六つとある。
「どんだけあるんだよ!」
「いや、これで半分ぐらいかな」
そう。その後ももう十冊もの魔法書が出てきた。その時、アケハが帰ってきた。
「えっ? 何してんの? あぁ、それよりここら辺は全然いなかったよ」
「アケハも自分の探してみる?」
「スカラ? まさかアケハの討伐報酬まで……」
「別にいいだろ、ウィンウィンなんだから」
「まぁ、いいけど……スカラは何に使うんだよ?」
「使わねーよ、このゲームは金稼ぐためだって」
「マジか?」
「そうだけど、言ってなかったか?」
「それでそのいらない本はどうするつもりなんだ?」
「まぁ、普通に売るだろうな」
「なるほど……」
そして、輝は香りの魔法書のため、アケハは自身の羽のバラエティーのため、そしてスカラは自身の仕分けのために山を漁り始めた。
「アケハ、これ!」
輝はアケハを呼んだ。そこにあったのは、ペガサスの羽と書いてある。
「あぁ、これ知らない……」
「(ペガサスってあれか?)ペガサスって知ってるのか?」
「勿論よ、現実世界でも幻の魔獣としているじゃない」
「そこは同じなんだ」
「同じって何と?」
「それはこっちの事情」
「それよりありがと、私の方は三冊ぐらいはなんて書いてあるか読めなかった」
「ちょっと見せて!」
「何、仕分けのために分けてはおいたけど……」
アケハの持ってきた三冊は全て日本語であった。そう、輝には読めるのだ。
「やっぱり!」
「何? テルはこれ読めるの?」
「まぁね」
アケハと輝はそれぞれ魔法書を読み始めた。輝の一冊目は香り魔法の書入門三巻、二冊目は香り魔法の書中級、そして三冊目は香り魔法の作成者あとがきという三冊であった。
香り魔法の書入門三巻からはフォレストフレグランス、つまり森の香りの魔法を、二冊目の香り魔法の書中級からはフェロモンを学んだ。フェロモンは特定の動物を惹きつける、操るなどの直接的な効果があるらしい。そして、あとがきとあるものには日本語で書かれており、香り魔法について創案者の考察などが書かれていたのだが輝は全てを読まずに書を閉じた。対して、アケハも書を読み終えていた。
「スカラ、試してみるか?」
「何をだ?」
「俺の新しい香りだよ」
「ならしろよ」
「フェオレストフレグランス! ヒノキ!」
あたりの香りがすっと消え、ヒノキの香りが優しく薫る。
「香り自体は結構弱いな」
「まぁ、これは消臭効果目的だからね、消費魔力もたった三だし」
「他にないのか?」
「えっと、フェロモン!」
しかし何も起こらなかった。
「(魔力が減ってないな)」
[単体での使用不可なのでは?]
「(そうか?)集合フェロモン!」
輝の魔力は六減った。それと同時に、輝から複雑かつ独特な香りが放たれた。
「何か変わったか?」
「いや特に」
「えぇ、何の香りも特に……」
「まぁ、フェロモンだから人には効果がないってことか……」
輝が一人ながら落ち込んでいるところに、水をさすようにしてスカラは言った。
「それでもう一冊あったんだろ?」
「それ、今言うか? あれはクズだったんだよ」
「そうか……まぁ、増えただけ感謝しろよ!」
「あぁ! でもアンチ系の香りは強くなってるはず!」
輝は急に目を輝かせて言った。
「アンチ・フラワーフレグランス! ラベンダー!」
途端に輝の周りから、花の香りと相反した、異体のしれない強烈かつ攻撃的な刺激臭が発せられた。
「おい! テル……」
スカラは顔を青くして言っている。
「体力も減っていっているわ……」
アケハも苦しそうに鼻つまんでいた。
勿論輝にはその強烈さはわからないのだが、フルパワーは人を苦しめ、攻撃するほどのものであることに変わらなかった。
「悪かったって。フォレストフレグランス! ヒノキ!」
あたりから香りがすっと消え、ヒノキの香りがほのかに香った。
「おぉー! それは便利だわ、苦しすぎ。マジで」
「それは使えそうだけど、私の前では勘弁ね」
「それで、アケハの方はどうだったんだ?」
「どうって? まだ試してはいないんだけど、結構やばいやつかもしれないと思うの」
「やばいって……」
「ちょっと見てて!」
~内容に関係ないです~
ちなみにWin・Winの関係があるときは必ずWin・Loseがあるって知ってました? そうですよ、皆が得するなんてことは空想上です。絶対どこかで苦しんでいる人が……




