第八十二話 盗み見いていた者
第八十二話 盗み見いていた者
輝は箱を開けようとした。
[先ずは魔法を試して見てからでは?]
「(そうか、でもな……)」
実は箱は城を出た後から、動気が増していた。
「もしかして生きてるのか?」
「待てって」
輝は開く直前に魔法を唱えた。
「悪魔ムリュウ!」
しかし何も起こらない。
「(何も起こらないな)」
[では魔力を殻にして見ては?]
「(もう開けてダメなのか?)」
[ですが、何か嫌な予感が……]
「知るか!」
輝は自分自身に怒鳴った。
「テル、なんだってんだ?」
「すまんな、今開けるよ」
テルがゆっくりと箱を開いたや否、勢い何かが飛び出してきた。
「なんだ!?」
驚きを声に出すスカラと違い、輝は落ち着いて見上げた。
「(ムリュウだ……)」
そして、悪魔は輝の方へと急下降してきたと思ったら、輝を小さな力強い鼓舞して一発、二発、三発と溝うちを決めた。
「ウ、痛ってーな」
「大丈夫か、テル? くそ、よくも!」
スカラは魔法を唱えようとしたのを輝は手をスカラの目の前に出した止めた。
「いや、これは俺が悪いんだ」
そして、悪魔はさらに輝の顔面への一撃、輝は転倒し気を失った。つまり、このゲーム内では機力切れということだ。
「(くそ、ここまでやるか……)」
[まぁ、おそらく森の中で残されてあなたから離れたせいで死骸のようになったのでしょうね]
「(それぐらいは自分でも考えてるよ、だけどな……まさかな……)」
輝が機力の回復待ちをしている間、ムリュウはみるみるうちに力を失ってゆき、ついには死骸になった。
「おい、大丈夫か? なんだったんだ? いまあんなに強くテルを殴ってたのに……」
何も状況が掴めていないスカラは困惑しながらも、輝の帰りを待った。そしてすん時間が過ぎ、輝が戻ってきた。
「悪かったな……」
「テル、どうしたんだ、後こいつは?」
悪魔もまた活力を取り戻した。
「悪いな、ムリュウ、しばらく黙ってろ!」
輝のいつの間にか上がっている三重もの魔力を三度の魔法で使い切った。
「アンチ・フラワーフレグランス・アタッチド! ペパーミント! (そこの壁!) アンチ・フラワーフレグランス・アタッチド! ペパーミント! (あっちの壁!) フラワーフレグランス!」
輝が現在いるのは国を囲う壁と使われていない廃墟と壁との間にある行き止まり。輝はその両手にある壁に魔法を唱えたのだ。すると、両手からペパーミントの香りとは相反した、異体の知れぬ強烈な刺激臭が発せられた。また、輝自身からは花の香りが溢れ出した。そして、悪魔は消え去った。
「なんでよりによってこの魔法を!」
スカラは苦しそうにしながら輝の方を見た。
「魔力の消費が激しいからだよ」
「てかせっかくの悪魔が……」
「言っただろ! 魔力をからにしたからあいつも消えたんだ」
「そんなの聞いてねーよ。説明しろよ!」
「わかったって」
そして、輝の長ったらしい説明、そして悪魔ムリュウとの出会いについての話が始まった。
「という訳だ」
「へぇー、すげーな」
「だろ?」
「でも、別に消さなくても……」
「いいんだよ、かなりやんちゃで暴れるからな」
「でも強いんだろ」
「あぁ、魔女の結界を一撃で破りやがったからな」
「魔女の結界っていうのがまずわかんねーよ」
「それで、金は返して欲しいのか?」
「いや、納得したわ」
「だろ! それでこれからどうする?」
「なんだ、ムリュウが出せるまで待つんじゃねーのか?」
「そんな訳ないだろ、しまうのが大変なんだぞ」
「別に隠さなくてもいいだろ、いや、これが見られれば……」
「そういうことだ」
「ガサッ」
すると、輝たちの壁の横から物音がした。
「誰だ! スカラ!」
「わかってるって、ガスボム! エクスプロージョン!」
壁は見事に粉砕され吹き飛んだ。そこにいたのは見覚えのある女性であった。
「アケハか?」
「偶然ね、まさかあなたたちもここにいただなんて」
「それで、何の用だ?」
「だから、偶然だってば」
輝はアケハに対して鋭く行く。しかしスカラは何もせず黙っていた。
「言えよ、なんのようなんだって?」
「あの……」
「なんだ?」
「箱の方はすみません」
「あれは人違いだった。後、あのとき助けたのはアケハだろ、あれには礼を言っておく」
「あぁ、俺からもだ」
スカラが初めて話した。しかし自身がないようにだ。
「スカラ? なんでお前こんなに静かなんだ? いつもあんなに話すのに……特に交渉の時とかやべーじゃん!」
スカラは小声で輝に言った。
「俺、女性苦手なんだよ。うまく話せない……」
輝は多少驚きを顔に見せながらもアケハに戻った。
「それでどうして欲しいんだ?」
「あのよかったら討伐に協力してもいいですか?」
「どういうことだ?」
「この前も見てました、あのベーアクスとの戦いなんていうのを。もうこの国では誰もやる気が……」
「だから盗みをしていたと!」
「そうです」
アケハは俯いた。輝はアケハをじっくりとみていた。
「(ゲームのキャラってわかっていてもなんか超可愛いな。本物が懇願してでも討伐に参加して……のりたまに……)」
輝は微笑んでいた。
「(いかんいかん、これはゲームだった)」
[ゲームでなくてもですよ!]
「(わかってるって)」
「じゃあ、アケハは何ができるんだ? あれみたいなカスは一人で十分なんだが……」
「カスだなんて、あの香りは攻撃的にも魅力的にもなる武器ではありませんか! それに悪魔とも契約するなんて、チートですよ!」
「おい! 悪魔って!」
輝は血相を変えて怒鳴った。
「はい、見ていまし、聞いていました。でもそんなつもりは……」
輝はスカラの方を見た。
「スカラ! お前もしかして知ってたのか?」
「お前聞かなかっただろ」
「マジかよ! それでお前はどうしたいと思う?」
「俺は別に気にしないけど」
「でもお前がこう静かだとどうも盛り上がりにかけるんだよな」
「私は偵察もできますし、二人は難しいですが、一人なら運べますよ」
「ほら、お前飛べないからさ、テル」
「スカラ、お前だって!」
「俺には魔法があるだろって、この前だってギリギリで俺だけならガスコットンで助かってたんだからさ」
「マジか!?」
「そうだけど……」
「わかったよ! だけど俺の魔力今からだぞ」
輝は投げやりになって言った。
「ここら一帯は魔物はいませんでしたので、寝ていても大丈夫ですよ」
「信用していいのか?」
輝はどこまでも疑り深い。
「寝てろ! 俺がいるから!」
スカラは少し怒ったように輝に言った。よほど輝のアケハに対する態度が気に食わなかったらしい。
「それじゃ、二人で交流でも深めておいて」
「黙って寝てろ!」
輝は魔力回復のため、今度はゲーム内での睡眠をとった。
覗き見、覗き聞はやめましょうね




