第八十一話 欲しかった者
第八十一話 欲しかった者
無事に悪魔の死骸が入っていると思われる箱を輝は開いた。
「テル、欲しかったものは手に入ったんだな」
「あぁ」
「早く見せろよ」
「今開けるところだって」
輝は箱を汚く開いた。すると、中には一ダースの瓶が入っていた。
「なんだ、テル? まさか悪魔の死骸という酒だったとかいうなよ」
「いや、そんなはずは……確かにあの写真では……」
「もしかして間違った箱を取ったとかいうよな」
「いや、って俺? 飛ばしたのはスカラだろ」
「俺のせいか? 俺は助けようと」
「とにかく一度あそこに戻ろう」
「かなり遠いな……」
「飛ばすのよ!」
「じゃあ、お前だけでもゆっくり歩いてこい」
「俺の脚力を舐めてんじゃねーぞ!」
「なんだ、脚力上昇の香りでもあるのか?」
「そんなんねーよ」
スカラはため息をついた。
「わかった。どう戻るかはおいておいて、次の箱はどうするんだ? あとこの酒は?」
「くそ、あのアケハとかいうやつをまたひっ捕らえて……」
「なんでだ? あいつは悪くなかったんだぞ」
「そうでもないぞ、箱を渡したっていうことは誰かのものをとったことには変わらないだろ」
「それで本当に飛ばして帰らなくていいのか?」
「わかったよ、こいよ!」
スカラは微笑んで輝に魔法を唱えた。
「ガスガム! ガスガム! ガスガム! エクスプロージョン!」
「どかーん」
「(やっぱ痛いよな、これで威力抑えめって)」
輝は勢いよく空に吹き飛んでいった。
「俺も急いでっと。ガスガム! ガスガム! ガスガム! エクスプロージョン!」
スカラも輝を追って空へ城の方へ飛んで行った。
輝とスカラは無事? に城まで飛ばされた。輝は誰のものかもしれない酒の箱を持っていた。着陸まで一分もないというところで輝は思い出したように言った。
「スカラ! そう言えば着陸は大丈夫なのか?」
「あぁ……忘れてた……」
「おいおい、それって……」
地面は輝たちにだんだんと近づいていく。
「スカラ、冗談だって言ってくれよ」
「いやそんなこと言われても……」
その瞬間、目に見えない速さで輝の目の前に人影が現れてるが気づいた時には地面に、スカラも同じくであった。そしてその人影はすぐに姿を消した。
「誰だ!」
「アケハじゃないのか? ありがとな」
輝は顔を顰めながらも大声で言った。
「俺からもだ」
そうだ、輝たちは無事目的地城前にすぐについたのだが、箱がある様子はなかった。
「もう、箱が取られたとかないよな」
「俺たちの金が……」
輝たちはとにかく城の中に入った。
「ここにあるってことは……」
すると商人の女性が輝たちに手を振っていた。
「これ届いていましたよ」
「おぉ!」
輝は酒の入った箱をスカラに渡すと走って箱を受け取りに行った。
「それにしても珍しいですね」
「何がですか?」
「いや、別の誰かに取られてしまうという事件が多発していまして、私たち内側の人もなかなか買うことが……」
「(それってもしかして全てがアケハが犯人とかってことか?)」
輝は目をそらして箱を受けとった。すると、城の上階から足を立てて国王執事のサルエットラがやってきた。
「そなた! あなたが持っているのは念願のあれか!」
「あれとは……?」
輝は首を傾げて言った。
「何をとぼける? 酒だよ、酒!」
「いえ、お酒はスカラが……」
サルエットラは走ってスカラの元へ行った。
「おぉ、これだよ、これ! これをどうやって!」
「えっと、テルが今持っている箱だと思って盗人から徴収してきました」
「そうか、そうか、それで」
「そうですよね」
スカラはサルエットラに箱を渡しかけた。
「それでなのですが、報酬とかはありませんか?」
「なんでだ、これはもともと……」
「ですが、もし私たちが取らなければ?」
スカラの顔には金をくれとでも書いてあるほど筒抜けであった。
「いけませんか?」
「いくらだ?」
「いくらまでですか?」
「なら商店で何かを買ってやる、それでいいだろ」
「じゃああの箱の中身を買った際の値段ではいけませんか?」
「わかった」
スカラは酒の箱を手渡した。
「それでいくらなんだ?」
「三百コンクです」
「嘘だろ?」
「そうですけど……」
「それを払えと!」
「まぁ許可しましたしね」
商店の女性の方を見たサルエットラに対して、女性は頷いていた。
「仕方ないな、今回だけか……」
サルエットラは三百コンク、つまり百コンク札を三枚スカラに払った。百コンク札はほとんどの者はまず手に入れられないゲームのお金であることから、国王執事であること、そしてかならゲームの中だけでもかなり稼いでいることがわかる。実は、ゲーム内のお金はE-gameないでゲームが終わる際に換金できるできないという噂もあるため、それはゲームであっても無駄使いを控えているものもいる。ほとんどの国で職業をしている者たちは他に重きを置くものばかりである。
「ありがとございます」
「(やっぱスカラはやばいな)」
[本当に上手いですね]
そして、執事は急いで上階に上がって行った。
「(飲みに行ったな)」
[そうでしょうね]
スカラは輝の方へやってきた。
「それでその悪魔の死骸は見せてくれるんだよな」
「ここでは見せれないな、悪い」
実は輝の手元に来てから箱が少し動いているのだ。
「外に行くのか?」
「あぁ、そういうことだ」
「それもちょっと急いでな」
「おうよ、ハードル上げていることに気づけよ。それで仲が本当にゴミだったら
……」
「その金は全部やるよ!」
「元からこれは俺のなんだけどな」
「そういうこと言うのか?」
「利子だよ。ウィンウィンだろ」
「あっそ! じゃあこれも俺一人で行くよ!」
「わかったって」
城を出た輝を追ってスカラも出た。そして、輝は人のいないところへと行くことにした。
「アンチ・フルーツフレグランス!」
輝からの鼻も詰まるような強い刺激臭が放たれた。
「やっぱ、何回嗅いでもな……ちょっとこれは……」
輝は一人颯爽と人をどけ歩いて行くのをスカラも急いで追いかけて行った。
「テル! 待ってって!」
「……」
「わかった、百やるから」
「本当だな」
「あぁ」
輝は振り返ってスカラを待ち、ともに人のいない国の外壁沿いに向かった。
「スカラ、これから見るものは人に言うなよ」
「わかってるって」
「あと、金は?」
「なんだ? くだらないものだったら俺がもらっていいって行っただろ」
「そんなことないってわかってるから言ってんだよ」
「わかったよ」
スカラは渋々あの珍しい百コンク札を取り出して輝に渡した。
「箱を開けるぞ」
「あぁ、早くしろって」
輝はゆっくりと箱の蓋を開け……
物と者うまくかけれていますか?




