第八十話 消えた箱
第八十話 消えた箱
女性は輝の払った金額を数えた。
「えっと、百四十コンクね。はい、オッケー」
すると、輝の金額が画面に表示された。
[百四十コンク、出ました!]
「あの、これっていつ終了するのですか?」
「この商品の最高金額の三百コンクに達するか、ついさっきから一日の間でもっとも高い金額を出した人が受け取るのよ」
「えぇ……一日も……」
「でも大抵三百コンクを誰かが出すから出したんもん勝ちって感じだわ」
「それで出したお金は……」
「あぁ、今のやつのこと。それは私がもらうのよ」
「えぇ?(そんなんオークションじゃねーよ)」
「言ってなかった? ごめんね」
その女性は顔に微笑みを浮かべながら輝を見た。スカラは落ち込んでいる輝を見ていう。
「現実でもそうだろ! だから正気かって聞いたのに……」
「スカラ……」
「なんだ?」
「あの……言いにくいんだけどさ」
「おい、もしかして……」
「あぁ、頼む!」
スカラはしばらく無言で考えていた。その間に金額は二百三十まで上がっていた。大抵三百と言っているだけで、お金を出している人がいることから、いつもではないようだ。
「わかったよ!」
スカラはポケットから幾らかお金を取り出した。
「じゃあ、これ百六十コンクだ」
「スカラ! 自分の金まで……」
「なんだ? 絶対返せよ! 二倍にしてな!」
「あぁ、わかってるよ!」
「でもなんでこんな死骸が欲しいのか俺には理解できないよ」
「あなたたちがこのオークションに勝ったので、おそらく外で待っていれば届くと思います」
「えっと、どこから?」
「空からですよ、でも他の人に取られないように気をつけてくださいね」
「えぇ!?」
輝とスカラは外に出た。すると、一箱のボックスが落ちてくる。様々な人はそれを取ろうとか、輝たちの方を見た。
「やらねーぞ! アンチ・フラワーフレグランス・アタッチド! (あの箱!)」
箱の辺りから花の甘い香りとは相反した、異体の知れない強烈な刺激臭が溢れ出した。
他の人も箱を盗むのを諦めたように引き下がった。
「これで安心か」
「いや! テル!」
と、その時、宙を何かが通り過ぎた。空から降ってきていた箱はそこにはなかった。
「テル、追うぞ!」
「でも、今どこにいるか……」
輝は静かな声で言った。
「耐えろよ! ガスガム! ガスガム! ガスガム! ……」
「おい、ガスガムってなんだよ!?」
「エクスプロージョン!」
その瞬間、輝の腰元で爆発が起き、輝は空に打ち上げられた。輝は空に誰かがいるのを目撃した。
「(本当にスカラは何を考えてんだよ! てか、あいつか)アンチ・フラワーフレグランス・アタッチド! ラベンダー! (あいつ!)」
輝は全ての魔力を絞り出して魔法を唱えた。すると、輝は地上に落下し始めた。
「えぇーーーー(俺が飛んできた意味……あんな魔法で倒せるほどやわじゃないだろ……)」
と輝が落下し始めた頃、その輝の箱を盗んだ人も中心から離れたところに着陸していた。
「スカラ! 俺死ぬぞ!」
「なんだって? どこだよ」
輝はだんだんと地面に近づいていく。
「俺死ぬって!」
「あぁ? それよりどっちに行った」
輝はスカラの声が聞こえるためおかしいとは思いながらも、指でスカラに方角を教えた。すると、スカラは自分自身を爆発させながら、輝の指をさした方向に行った。
「俺の命は諦めたのかよ……」
すると、輝は目前というところで、クッションのようなもの守られた。
「(あれ……てか、ガスの匂いってことは!)」
そう、それはスカラのガスを雲上に発生させたものであった。ここで輝は巣からを舐めていた事に気がついた。輝はスカラがてっきりガスボムしか使えないと思っていたのだ。
「それで俺にはどう向かえって!!!!」
輝が叫んだ途端、輝の着陸したガスが爆発した。
「えぇ!!」
そうだ、輝はまたもスカラの爆発によって吹き飛ばされた。それも先ほど輝が指差した方向であった。
輝の体力はおそらくもうないであろうことを輝は自覚していたが、なんとか飛んでスカラの着陸した場所についた。
「スカラ!!」
「おぉ、やっと追いついたか」
スカラは輝を今度は素手で受け止めた。
「重いな!」
「うるせーな、もう吹き飛ばすなよ!」
「いや、俺ももう魔力はない。それよりよく体力持ったな」
「おい、もしかして、スカラ!」
「冗談だって、これは移動用ガスだから威力は抑えめなんだよ」
「ガスにも種類があるのか?」
「あるに決まっているだろ、そんなことよりもどこにいるかわかったか?」
そうだ、箱を盗んだ人がどこかに近くいるはずということしか輝は知らなかった。二人は手分けして探した。
「おい、テル」
スカラは小声で輝を呼ぶ。輝はすぐにスカラの方へ向かった。
そこは行き止まりの道、そこには目を閉じて鼻をつまむ女がいた。そして、横にはあの箱がおいてあった。
「くそ、あいつだ! 女だからって!」
輝は短い剣を手に握りしめ、今にでも飛び出して行こうとした。
「いや、待て。俺たちも魔力がいる。ここは待ってよう」
「でも、俺の魔法が切れる前に……」
「いや、一様俺も罠は貼っておくから逃げられないようにはしておく」
「わかったよ、こんな剣が短くてもだしな」
そういうと、二人は交代で休憩をしていた。そして、しばらくすると、箱から、そしてその女からの刺激臭が消えた。
「俺の魔法が切れた。もういっちょやるか?」
「いや、待て。一様飛ぼうとしたらここに充満させたガスを爆発させるつもりだから……」
「お前以外とエグいな」
「いや、できるならしたくないさ」
「ってことは、口交渉か?」
「あぁ、自分のものぐらいは自分で取り返せ!」
すると、輝はその路地に入っていた。
「あの、その箱を返していただけません?」
「……」
その女は怯えたように顔をあげた。見た目は二十代女性だがゲームだけあって中身は知れない。
「あの、それにお金払ったんだよね、だからさ。できるならレディーは傷つけたくないんだ(何がレディーだよ、あの盗人が……ここは落ち着いて)」
すると、女の方が立ち上がった。
「逃げようとするなよ、この匂いでわかるだろうけどここにはガスが充満している。逃げようとしたら俺が!」
「わかっているわ、でもガスは後ろの人の魔法でしょ。てことはあなたがあの香りのってことね」
「どうだ?」
「すごいわ。死ぬ思いだったわ」
「だろ。わかったなら、箱を返せ。返してくれ」
女は箱を輝の方に投げた。
「それで、私はどうするつもり?」
「(あんなことや、こんなことを!)いますぐ消えろ! 次したらぶっ殺すぞ」
「ありがと。私はアケハよ。じゃあまた会わないことを祈るわ」」
すると、アケハの腕が羽に変わったや否、空へ飛んで輝たちには見えないところにところまでに居なくなっていた。




