第七十九話 偶然も実力の内
第七十九話 偶然も実力の内
「(動いた!)」
輝は後ろへ飛び下がり剣を構えた。
「(やばい!)」
輝の魔力はそこをついている。加えて、スカラもいない。輝は焦りながらも力図よく剣を握った。
しかし、輝を心配必要もなく、サイロスカリウスは目を閉じ気を失った。輝が討伐リストを確認するとサイロスカリウス、百コンク、一と書いてある。
「(やっと死んだんだ……さっきのはなんだったんだ……)」
[最後の抵抗なのでは?]
「(なんか悪いな……)」
[ゲームですよ]
「(わかってるよ! それで角はどうする)」
[そうですね、記念にいいのでは?]
「(そうだよな)」
輝は死んだとわかっていながらも、サイロスカリウスの近くにゆっくりよってゆき、角の根元を皮ごと萩ちぎった。すると勢いよく輝に血が飛び散った。
「(このゲームってこんなにリアルだったか?)」
[このゲームキャラクターやモブによって凝りが違いますからね。おそらくその仕様でしょうね]
「(ほんとだよな、あの魔女とかすげーリアルだったし)」
[そうでしたね]
輝は何もすることなく座って魔力回復および、スカラの生還を待った。
……
……
静かな時が続く。そして、輝も目を閉じ眠りに着いた。
……
……
「テル!」
「(なんだよ!)」
[私ではないですよ]
「テル、起きろって!」
「なんだって!」
「俺だよ! スカラ。ほんと無防備だな、こんなとこでよく寝れるよ。普通に殺されてたかもしれないのに……」
輝は慌てて立ち上がった。
「あぁ、ごめん……」
「それにしてもその血はどうしたの?」
「いや、それよりサイロスカリウスは?」
「死んだ後、キャラの誰にも目がつかないと時に消えるらしいぞ」
「そうだったのか!」
「そうだよ、テルが寝ちゃったからだぞ」
「すまんすまん」
「まぁいいけど、戻る? それとももう少し、やる?」
「(この角重いしな……)」
輝はズボンのポケットに歪にしまわれた角を見た。
「途中であったらやろうや」
「オッケー」
しかし、二人は何にも会うことなく中心部の近くについた。
「(ここからは人が問題だな)アンチ・フラワーフレグランス!」
どこかからか花の香りとは相反して、異体の知れぬ強烈な刺激臭が発せられた。
「テル、これはやっぱ辛いわ……」
すべての人が輝を避けていく。
「いや、これは結構気持ちいけどな」
「自分の香りがわからないからだろ!」
「そうだな、あんま匂いわかんないわ」
そして、二人は城についた。
「よし! がっぽり貰うぞ!」
スカラは張り切って入ってゆき、輝が渡しておいた血の少し着いた討伐リストを差し出した。
「おぉ、あんたらか! もう来ないか心配したぞ!」
「それで金の方は?」
「わかってるよ、えっと……あんたらサイロスカリウスをやったんか?」
「あぁ、それより金を!」
スカラはかなり金に執着があるようであった。
「えっと、百五十コンクだな。でも、倒したんならサイロスカリウスの角は撮らなかったんか?」
「えぇ? なんかに使えるのですか?」
「あぁ、他の猛獣がよってきにくくなるっていうのがな。だから、それには百ぐらいの価値があるってよ」
「なんでそれを先に!」
「いや、そんな。これを倒すなんて思わないだろ!」
輝は後ろで聞いていた。
「俺……持ってるんだけど……」
「テル!?」
スカラは目を輝かせていった。
「ほら」
輝がポケットから取り出したのは血だらけの一角のサイロスカリウスの角であった。
「だから帰り魔獣がよって来なかったのか!」
スカラは理解したように激しく頷いた。
「それでどうするんだい?」
「百五十コンクなら売ってもいいぞ」
スカラは交渉し始めた。
「言っただろ、百コンクだ」
「どこに書いてあるんだ。どうせ後で高く売るんだろ!」
「わかったよ、百十コンクだ」
「なんだ九十コンクの利益は自分にってか?」
「わかった、百二十! これ以上は無理だ」
「テル、行こうぜ」
スカラは討伐額の百五十コンクを握って、輝の手を引っ張った。
「(別にいいんじゃないのか?)」
[これも交渉のうちですよ]
「(どういうことだよ)」
すると、ギルドの男は大声で叫んだ。
「百三十だ!」
スカラは輝が手に持っている角を、男に渡すと、百三十コンクを受け取って輝の元に戻った。
「スカラ、百五十じゃないけどよかったのか?」
「あぁ? 最初からそんなつもりはないよ、こういうのは彼自身が安全に居たいから買ってるだけだから金額はまぁそこまでは叩けないだろうと思ってね」
「(どういうことだ?)」
[いいんですよ]
輝は首を傾げた。
「それで、スカラどうするんだ?」
「そうだな、まずはそれぞれ百四十ずつな。それより角はありがとな」
スカラは満面の笑みで輝に微笑んだ。
「あぁ。スカラは何に使うんだ?」
「俺か? そうだな、武器とかが欲しいかな。まぁ、威力上げのために魔法の書でもいいけど、ランダムのやつは当たらないからな」
「そういうもんなのか? でも売れば戻ってくるだろ」
「俺は売らずに直接その魔法を使える人に高めに売る主義なんだ。だからそんなあっても仕方ないんだよ」
「へえー、じゃあ俺の魔法の本とかもありそうだな」
「香りの魔法か? 知らねーな、今度確認してするよ」
二人は商店のような場所にきたものの、見た目が全く違った。そこにいるのは一人の女性。そして、売り物も何も飾って居ないのだ。
「あの……ここが商店だと思ったのですが……」
「そうよ」
すると、その女性はタブレットのようなものを取り出した。
「これで頼んでね」
そう、そこにはオンラインショッピングのような金額と商品の写真が載っているのだ。
「オークションとかがありそうだな」
輝は冗談で言ってみた。
「えぇ、あるわよ」
「えぇ!?」
「まぁ驚くわよね。今ちょうど面白い商品が販売されたのよ」
すると、その女性が輝たちに見せたのは黒い紫色の何かであった。商品名は『悪魔の死骸』とある。
「(おいおい、これって!)」
[ムリュウっぽいですね]
「(なんであいつがオークションに!)」
[誰かが拾ったのでは?]
「(でも死んだって……)」
[とにかく買いましょ]
「(でも金額みろよ!)」
その死骸の値段は百コンクにたった今上がった。
「あの、オークションにはどうやって参加を?」
「テル? これが欲しいのか?」
「あぁ、どうしてもいる」
輝は真剣な眼差しをスカラに向け、スカラは少し引いた様子で輝を見た。
「それなら、私に払って。いくら?」
「これ全てで!」
「おい、テル正気か!?」




