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異世界でもコツコツ強くなっていきます!  作者: 黒陽
七章 四国対戦
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第七十七話 初の討伐クエスト

 第七十七話 初の討伐クエスト


「アンチ・フラワーフレグランス!」

 どこかからか花の香りとは相反して、異体の知れぬ強烈な刺激臭が発せられた。

「テル? これなんだ?」

「これか? あぁ、これは発展系、まだ威力は……なんだけど十分だろ?」

「いや、俺も辛いはこれ……」

「ガスの匂いでも嗅いどけ」

「いや、俺を殺す気かよ!」

「死なねーだろ」

「それでも機力の回復まで待つのはしんどいだろ」

「じゃあ、我慢しろ!」


 輝のあたりから人は遠ざかって行く。輝は堂々と国の中を歩いてゆき、魔獣のいる国の外に辿りつくこともなかった。


 というのも、それらの獣は国内にもいたのだ。人がやはり多いのはあの中心近く、国の城壁近くには大きいとも思われたシウホーンレベルの生き物がいた。


「デカい」

「やばいな」


 輝たちが最初に見かけたのは、ベーアクスと言われる黒い猛獣。体は人の三倍程度、腕の太さは五倍ほどだ。そして、何よりも目が赤く恐怖をそそる。


「怖いって……」

「なんだって、テル?」

「スカラは怖くないのかよ」

「いや、普通に怖えーよ」


 輝たちは距離をとって伺った。ベーアクスはその巨体の剛腕を輝たちに振りかざした。もちろんのこと、避けることは距離的にできる、しかし攻撃の手段がなかった。


「スカラ、お前の魔法見せてくれよ」

「効果あるか知らねーぞ」

「早くしろって!」


「ガスボム!」


 スカラは手から何かを出すような動きをした。すると、ガスの香りがほのかに香った。

「この香りはバレるな」

「だろ?」


 そうだ、ベーアクスはすぐにそのガスボムが行ったと思われる位置を避けた。

「使えないな……」

「じゃあ、お前のを見せてみろよ」

「いや、それより俺の香りの後にガスボムを使ってくれるか?」

「いいけど……」

「オッケー」


「(どの魔法を使おう?)」

[蜂蜜とかじゃないですか?]

「(甘い香りか……)」

[持ってないですね]

「(ラベンダーもいかんしな)」

[もう、普通にフルーツでいいのでは?]

「そうだな」


「テル? 俺に話してるのか?」

「えぇ? あぁ……いや(声に出してた? 恥っず)なんでも」

「そうならいいけど、いつやるんだ?」

「フラワーフレグランス・アタッチド!(あの熊!)」


 するとベーアクスのあたりから花の甘い香りが溢れ出した。ベーアクスは己の香りを嗅いで夢中になっていた。

「いまだ!」

「わかってるって」


「ガスボム!」

 スカラによって放たれた爆発性圧縮空気はベーアクスまで何事もないように向かった。先ほどのようにすぐにわかる香りもなく、うまくうち消えていると言える。


「これはいける!」

「そうか? 俺には見えんし……」

「そうなのか、そうだったのか……」

「なんだ? 誰にでも見えてると?」

「だからあの時も……」


 スカラは黙りこくった。

「えぇ? スカラ? 爆発の方は?」

「待て! 今そのガスを吸ってる」

「おいおい、ってことは?」

「そうだ。エクスプロージョン!」


 するとベーアクスは跡形もなく吹き飛んだ。

「やった!」

 スカラは宙に高く飛んだ。

「いや、スカラ君……」

「なんだ君付けなんてして?」

「いや、だって証拠をさ……」

「あぁ……すまん」

「いいけど、まぁ次……」


 輝は渋々次に移ることにした。しかし、輝は同時にスカラの魔法の威力に驚いた。

「これは使える!」

「だな!」

「そういや、さっきのっていくらぐらいだったんだろうな? あの紙捨てなきゃよかった」


 輝は俯いて自分を恥じた。


「えぇ? テル、捨てたのか?」

「あぁ、すまん」

 輝はスカラに頭を下げた。


「いや、そうじゃなくて……」

 スカラはポケットから丸まった紙を取り出した。

「てっきり、テルが落としたのかと……」

「えぇ!? マジ!」


 テルはスカラに抱きついた。決して同性愛などではない。

「なんだよ、急に!」

「スカラ、お前まじ最高!」

「なんだよ、気持ち悪いな! もしかして……」

「ちげーよ」

「よかった」


 二人は丸まった紙を開いた。すると、先ほどまでなかった数が表示されていた。

[ベーアクス、三十コンク、一とありますね]

「(これってもしかして討伐数まで表示されるのか!)」

[そのようですね]


「さっきのはベーアクスだったのか。三十コンクじゃねーか、テル!」

「スカラ!」


 輝は再びスカラに抱きついた。

「いや、テル?」

「すまんすまん、ちょっと嬉しすぎて……」

「よし、続けるか?」

「魔力の方は大丈夫か?」

「俺? 大丈夫大丈夫、テルのほうは大丈夫なのか?」

「あと二発行けたらいいぐらいだな」

「そうか……」

「それよりも機力が心配だな」

「いや、気力が切れた場合は俺たちの前から消えるから安心していいんだぞ」

「そうなのか?」

「前だってそうだっただろ」

「確かに! じゃあ、次行くか!」

「おう!」



 二人は次の獲物を見つけに国を歩いている頃、サクラも仕事を始めていた。

「あの……遺伝子分野の仕事はありますか?」

「ありますよ、そうですね……これなんかどうですか?」


 サクラが見せられたのはイノロクの研究の仕事であった。スピードと攻撃力をあげる研究らしい。


「はい、喜んで!」




「これは……カリマスカ、十コンク。渋いな……次!」


 輝たちはカリマスカと呼ばれる大きな釜を両手に持つ巨大なカマキリのような生き物に遭遇した。そして、今度はフラワーフレグランスで多少引き寄せてからのガスボムで輝たちは仕留めた。


「おいおい、またか!」

「いいじゃねーか」


「十コンク。やっぱ渋いな……」

「帰るか?」

「そうだな、戻って換金しよう!」


 輝たちは調子よくその後ももう一体のカリマスカを仕留め、気分良く帰る時……


「スカラ!」

「どうした?」

「いや、帰る分の魔力が足りない……」

「そうだったな……」

「お前のガスは使えないのか?」

「いや、これはキャンセルとかできないからな……」

「どうする?」

「待ってやるよ」

「あんがとさん」


 輝たちは人のいる場所を避けるべく、輝の魔力の回復を待つことになった。二人は果てた国の廃墟の壁沿いに座り込んだ。とその時!



「テル!」

「あぁ……」


 輝たちの目の前に巨大な動物の影が現れた。その影は濃く、大きい。そして先ほどのベーアクスよりも大きい化け物サイズであった。二人は小声で話し合った。

「テル、どうする?」

「俺、魔力ないし……」

「いや、俺も絶対これは無理だって!」

「じゃあ……(あぁ……)」



 輝の目の前は真っ暗になった。

「(機力切れだ……)」


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