第七十六話 囚われた小鳥たち
第七十六話 囚われた小鳥たち
輝たちはついにマルチリストの国へ到着した。そこはやはり暗かった。しかし暗いのは明かりだけでなく、人の顔もだった。皆がゲームをしている微笑みも喜びなく、ただ生きているようであった。
「なんでさっさとログアウトしないんだろうな」
「……テル……」
「どうした?」
「俺も試した。ログアウトできないんだ!」
スカラは俯いて言い放った。
「どういう事だ?」
「試してみろ!」
輝は言われた通り喉仏を押してみる。
「(ログアウトできないわけがな……)」
輝はその場にいる。輝は再び押してみる。
「(まさか……なんかの間違いだろ!)」
「えぇ!?」
「だろ?」
「……」
輝は黙り込んだ。
「(なんだこの展開? ゲームにとらわれちゃいましたパターンか? 異世界のゲームでもこんなことが? えぇ?)」
[そのようですね……でも機力が切れれば]
「(そうだよな、機力が切れれば)」
「スカラ、これって機力が切れればいいんじゃないのか?」
「俺もそう思って魔法やら、動き回ったりって俺の機力を使い切ろうとしたんだ……」
「で?」
「目の前が真っ暗になった」
「ってことは?」
「いや、そのまま目が覚めないんだ……」
輝はしばらく考えた。
「それで、機力が回復したらこのゲームに……?」
「そういうことだ」
「なるほど……」
輝とスカラはしばらく黙って歩いていた。
「(ちょー気まずい)」
[いいじゃないですか! リミットもありますし]
「(始業の一日前にな)」
[……]
「(まぁ、楽しむしかないよな)」
国はどうやら国と言っても大都市程度の大きさのようで、国と呼べる国ではなさそうであった。そして、その吊り橋はどうやら国の中心に繋がっていた。
「到着……」
二人はため息をついた。
「それでこれからどうするんだ?」
「そうだな、なんか案内があってもおかしくないと思うんだけどな」
すると案の定、案内人と思われる人物が歩いてきた。身なりは吊り橋の下にいた人々に比べてと貴族とも思える服装で国王のようであった。しかし同時に黒いスーツから執事、または社長の雰囲気だどがある。
「ようこそ、マルチリストへ」
「あの、国王様でしょうか?」
輝は早速聞いてみるが……
「いいえ、私は国王執事サルエットラと申します」
「あの、アバターでしょうか?」
「はい、この世界のあなたたちのいた世界は別物と考えてよろしいですよ。こちらは全てアバターで成り立っています。まして国王もですよ」
輝は唖然と顔をスカラと顔を見合わせた。
「(まじか……)」
「それで僕らはこれからどうすれば?」
「まずはこの四国戦争について私たちが得た情報をシェアしましょう。知っての通りログアウトは現在不可能です。そして、今日がジュライ十二日ですから後十七日あることになります。それまでは自分の魔法を磨くなり、この国での生活を楽しんでください。もちろんギルドもありますのでお金はそちらで」
「あの……買い物は……見た所商店という様子は……」
「そちらは安心してください。今私たちは二階にいるのですが、一回に行くと何でも屋という国の商店があります。ギルドもそこにあるので」
輝とスカラが頷き一階に向かって行った頃、サクラも早くも到着し一階でギルドを探していた。
「スカラ? お前、お金あるか?」
「あるけど? もしかして?」
「あぁ……(一文無しです!)」
「貸せねーぞ」
「わかってるって、ただギルドどうかなって?」
「いいぞ」
「ほんとか!?」
二人はギルドに仕事を探しに行った。豪華な螺旋階段を降りて行くと、大きく開けた広間がある。そこには、外の暗さを反対をいく、賑やかさがなかった。
まず第一に人が少ない。数人いるのに加えて、商人と思われる人物も寝転んでいる始末だ。そして、ギルドのブースのような場所に二人はついた。
「えっと、どんな仕事がありますか?」
「ほんとにするつもりなのか?」
「(何この人?)はい……」
「いや、最初はみんなやる気はあるんだけどね、みんな外行くとダメだからさ」
「ダメというと?」
「自分で確かめてみな」
輝とスカラは顔を見合わせた。そして、外へ向かうと、見えたのは人溜りであった。皆は路地生活者のようにグダッと寝転び、恐らく飲んでいるものは酒と見られる。
「おいおい、これって……」
「完全に崩壊してんな」
「俺の香りで!」
「いや、やめといたほうがいい。変に寄られると困る」
「いや、俺から別に香り出さなくでもいいんだけど……」
「そうなのか?」
「そうだけど」
「なら……いや、まずはギルドと行こうや」
スカラはかなり引いていた。これにはなりたくないと皆が思ったであろうがこの始末だ。
「戻ってきたぞ」
「おう、どうだった?」
「クズだな」
「だろうな」
「それでどんな仕事がある?」
すると、ギルドに立つその人物は機械を取り出した。
「ここの国でのミッションは安くてな、ほとんど魔獣討伐だ。この様子だとわかるだろ?」
「えっと、何が?」
「あれ、執事は言わなかったか?」
「何をだよ」
「国の外で死ねばゲームから強制ログアウトってことをだよ」
「そうなのか!」
「だけどな、その分E-gameが壊れるっていうのが問題なんだけどな」
「そんな……」
「それでも自殺ができないからってする奴がいるから魔獣が多いんだ、人を食うな」
「……」
またも輝とスカラは顔を見合わせた。二人は以外にも気があうようであった。二人は小声で話し始めた。
「スカラ、どうする?」
「テルは?」
「俺はするよ」
「じゃあ、俺もだな」
「それじゃあ仕事を頼むよ」
「なんだ? 腕に自信があるのか? 死ぬなよ!」
「早くしろって」
「これが討伐リストって言ってな、ここに金額が書いてある」
輝たちが受け取って紙には、様々な動物の名前と横に金額が載っていた。
「そういえば、このゲームって動物を仲間にするっていうのなかったか?」
「それはアニマリストだけだけど……」
「そうだったのか……」
「そんなんいいじゃねーか、やろうぜ、テル!」
「そうだな」
二人は扉の外へ向かった。
「そういえば、動物の名前ってどうやって知るんだ?」
「そんなのあてずっぽだろ?」
「効率悪いな」
輝は受け取った紙を丸めて捨てた。
「まずはここをどうやって切り抜けるかだな」
そう、二人の前に立ちはだかるのは数えきれないほどの人々、何をされるかわからない。そんな恐怖を前にしていたのであった。
小鳥ってどんな隠喩だよって思いますか? まぁ、ゲームマスターからしてみれば、プレイヤーなんて庭で戯れる小鳥程度だと思いますよ




