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異世界でもコツコツ強くなっていきます!  作者: 黒陽
七章 四国対戦
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第七十五話 絶望的な出会い

 第七十五話 絶望的な出会い


 サクラはすぐにアニマリストに抜擢され、毛皮の扉を抜けていった。



 その頃、輝はゆっくりと壊れそうなボロボロの吊り橋を渡っていた。

「(本当にボロいな、なんか場違い感が半端ない)」

[そうですね、かなり貧しい国って感じですものね]



 輝はひたすら歩いた。吊り橋と言っても、多少音が出て揺れるだけのこと、何も怯えるには至らないと輝は考えていた。



「(長いなぁ)」

[そうですね]

「(ちょっと走ってみるか?)」

[怖くないならどうぞ]

「(ゲームだからってこともあるけど心配はないだろ)」


 輝は全速力で走り始めた。輝の脚力は魔力以上を誇っている。その輝が走り始めて間もない頃、輝は人が立ち止まり丸まっているのを遠くに見た。しかし、なかなか国に着くと行った様子はなく、ただ景色が変わっていうだけであった。



「(誰かいるぞ! てか、疲れた)」

[前の人でしょうね。でもゲーム内で疲れるって不思議ですよね]

「(でもなんでかがんでいるんだ? あと、このゲームスタミナって項目ないしな)」

[言って見ましょう、疲れているなら歩いて行っても追いつけるでしょう]




 輝は歩き出した時、輝の振動を感じ取ったのかのようにその人は輝の方を見た。それは、男の顔であった。その男は特に逃げる様子もない。


 輝は慌てて走り始めた。


「大丈夫か!」

「……」


 返事がないことに構わず輝はそのまま男の方へ走って行った。


「(本当に大丈夫かな)」

[今は急ぎましょ]



 輝がついにたどり着いた。そして、男の方へ輝が一歩近づいた途端、周囲の色が変わった。そうだ、夕方のような薄暗いのだ。

「(これもゲームの仕様か、すごいな)」


 輝は手を男に差し出した。

「大丈夫か?」

「……」

「俺はテルっていうだけど、スカラで良いのか?(名前出てるしな)」

「……」

「それでどうしてここで立ち止まっているんだ? 疲れたなら運んで行っても良いけど……」

「……」


 しかしスカラは何も答えなかった。それどころか輝の方を見る様子も見せなかった。輝は呆れ気味に魔法を使う荒技に出た。


「フラワーフレグランス! ラベンダー!」

 爽やかな優しいラベンダーの香りが広がった。



 スカラは顔を上げ、息を大きく吸っていた。

「何? ラベンダー!」

 その顔は青年の顔であった。とは言ってもゲームの中での様子は実際とは違うのだが……


「これはお前……君が?」

「そうだけど、良い香りだろ。これが俺の魔法なんだけどな……はは……」


 輝は同情を誘うように言ったがそう上手くはいかなかった。


「いや、すげーよ。この魔法! なんか力が湧いてくるっていうか、心が強くなってる感じか?」

「それは、この香りの効果だよ。精神力上昇っていうね」

「すごい、すごすぎる!」

「(そんなに褒められてもな、こんな魔法を……)それでスカラはどんな魔法を使うんだ?」

「あぁ、そうだった。俺はスカラで、テルでいいんだよな」


 スカラは元気よく、先ほどまでの暗さは等になくなっていた。


「いいけど……」

「魔法か。俺の魔法はガス魔法っていうのかな? 可燃性のある空気が出せるんだ」

「それって爆発するってこと……?」

「そうだけど……」

「そっちの方がすげーじゃん! てか、なんでマジリストにいかなかったんだよ!」


 輝はまるで同級生に話しているような気分で会話を続けていた。


「いや、そんなことはないよ。俺の場合は、香りが問題なんだ。この独特な香りがガスがあるってことを知らせるから魔法使いとしてはやっていけないってな」

「そんな……」

「でも、それを武器とするテルはすげーなと思ってな」

「そんなことはないと思うけどな……」

「そうか?」

「あぁ!!」

「なんだよ急に?」

「スカラ! 俺とタッグ組まないか?」

「なんだよ急に? さっき会ったばかりだぞ、そんな魔法だって関連性ないし……」


 輝は黙ってスカラの方を見た。


「いや、テル待てよ! もしかしてテルの魔法ってだーめ時も与えることができるのか?」


 輝は微笑みながら頷いた。


「つまり、テルの香りを嗅げばダメージを、俺の香りを嗅がなければ俺が爆発できるってことじゃね!?」

「そうゆうこと!」


 輝とスカラは手を強く握った。

「よし、俺たちはマルチリスト最強タッグになるぞ!」

「なんだよんそれ? てかスカラはなんでさっき屈みこんでたんだよ」

「いや、それは……?」

「もしかして暗いのが怖いのか?」

「そんなわけないだろ!」

 スカラは額にしわを寄せた。


「いや、ただショックだったんだ。本当に弱小、最悪の国マルチリストにきたことを実感してな」

「そうか? 俺はきたくてきたんだけどな……」

「えぇ? おい、まじかよ!」

「なんでだ? だってなんかどんな人でも受け入れるって言ってたから俺でもって思ってな」

「でも他だってきっとテルを……例えばアニマリストとか、香りに敏感な動物がたくさんいるのに……」

「いや、でもアニマリストに入りたいって言って入れなかったら恥ずかしいだろ。恥を掻くぐらいだったら安全にな」


 スカラはやはり理解していないようで、首を傾げていた。


「(ゲームだから俺の体が熱くなることはないだろうけどな)」

[そうですけど、まぁ自分から心がけているのは良いことですね]

「(俺制御できるようになったぞ!)」

[本当ですか? だったら今度……]

「(もういい、わかった。)」


 スカラは立ち上がり、輝と吊り橋を歩き始めた。長い道のりももうすぐではないのかと思わせるほど、空気が重くなっていく気がした。



 その頃、サクラはふわふわの毛皮出てきた橋を動物に乗って移動していた。

「わぁ! なにこの動物? 可愛い」


 そうだ、他の橋では国まで歩く必要もないのだ。アニマリストは動物にとって、マジリストは魔法によって、そしてパワリストはもちろん自力ではあるものの、吊り橋のように走りにくくはなく、しっかりと作られた橋であった。これは、同時に不平等さを表しており、これが理由で輝のようにマルチリストに志願する者はいなかったのだ。


 サクラの乗っている馬のような動物はベースアと呼ばれており、馬と違う点は馬ほど速く走ることができない代わりに、体が一回り大きく、体毛も柔らかいのだ。この動物は馬と同様、人間になつきやすいことからアニマリストでない国でも使われることはあるが、魔法や強靭な体があれば必要ないのかもしれない。


 しかし、輝はそんなことも知らず、今頃サクラが歩いているとでも考えながら、スカラと吊り橋を歩いていた。


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