第七十二話 本から学ぶという事 二部
第七十二話 本から学ぶという事 二部
「(どうなんているんだ)」
輝は自分自身のスターテスに驚愕した。
[腕力:XV、脚力:XXX、精神力:X、知力:V、魔力:XXV]
「(これってかなり上がってね)」
「テル? どうしたの? そんなに驚いちゃって」
「いや…結構見ないうちに変わってたから……」
「ちなみに私のは、腕力:XVII、脚力:XIV、精神力:XVI、知力:XXI、魔力:XXよ」
「腕力:XV、脚力:XXV、精神力:X、知力:V、魔力:XXIIIです」
「まぁ! あなたの脚力と魔力にはいつも驚かされるわ、素晴らしいじゃない」
「それほどでも……(でも精神力はまだしも、知力とか…)」
「それでテル、これからどうする?」
「私は今朝まだここきたばかりなんだけど、もう四国に行きたいって気分?」
「サクラ先生は?」
「先生はやめてって。そうね、ちょっといろいろ見て回りたいかな。それでもいい?」
「じゃあ、ギルドにいてていいですか?」
「何かすることあるの?」
「本を買ったので読んでおきたくて」
「そうね、そうして。じゃあ、また明日くらいに会えるといいわ」
そう言うと、サクラは街の方へ歩いて行った。
輝は対して、ギルドの中に入って行き、買った本を魔法の袋から取り出し、机に並べた。木製の机に木製のベンチ、やはり安っぽい。
輝の購入した本は合計八冊、その中の二冊が異世界の言語、つまり日本語で書かれていた。その本以外にも、日本語で書かれている本があり、輝は不思議に思いながらも、本を選別し、香りに関係のありそうなものを探した。
「(それでだ。日本語で読めるのは後でいいかな。じゃあ、これからだ。トク! 頼むぞ)」
[はい、これは“べパーミントの香り”とありますね。これもフラワーフレグランスの派生のようです]
「(効果の方はどうなんだ?)」
[状態異常を取り除く、または軽減することができるかも? と疑問形で書かれてますね]
「(確かに毒とかは無理でも、混乱とか、情緒不安定とかの状態異常があるなら便利そうだな)」
[てことは、ほとんどないと言うことですね]
「(そうなるな)」
輝は魔法に“ペパーミント”が加われているのを確認すると、立ち上がった。
「(使ってみるか)フラワーフレグランス! べパーミント!」
すると、すっきりとした清涼感のある香りがギルド内に広がった。
「(これもなかなかいい香りだな、ミントって感じで。次行くか)」
輝は二冊目の本を開き、座って読み始めた。
「(えっと、トク?)」
[これは、“レモンの香り”とありますね]
「(じゃあ、これはフルーツフレグランス系かな?)」
[そのようですね。レモンの香り、フルーツフレグランスの派生。この香りは、集中力を増させ、思考回転を増加させる。知力が大幅に上昇するとありますね]
「(早速試してみるか!)」
レモンという魔法がフルーツフレグランスの下に加わっている。
このレモンも先ほどのペパーミントも消費魔力は一、足されるだけのようだ。
輝は立ちまたもや立ち上がった。
「フルーツフレグランス! レモン!」
ギルド中に柑橘系の爽やかな香りが広がって行く。
[ラベンダーの時はそれほど気にしていなかってですが、スターテスを見てください!]
スターテスの知力の横には“+”マークが付いており、地力が上昇していることを表していた。
「(これって、ラベンダーの時は精神力が、ってか?)」
[おそらくそうですね]
「(でも、で? って感じだけどな)」
[まぁ、何もないよりはましですよ]
「(次の本だ!)」
輝は次の本を取り出し、トクに読ませた。
[これは、エンハンスフレグランスと書いてありますね]
「(香りの強化ってか?)」
[まだ終わっていません。同じ香り魔法を重ねて行くと、香りの持続時間、強さ、そして、効果が増すとのことです。対して、違った香りを重ねて行くと、香りの持続時間が数ごとに減少、強さ、効果などは同じだそうです]
「(それで、他には?)」
[異常ですが……]
「(なんだ? 全ての本に魔法があるわけじゃないのか?)」
[そのようですね]
「(なんか、裏切られたな)」
輝は悔しそうにして、次の本を開いた。今度こそという思いでだ。
「(トク、読んでくれ)」
[これは、香り魔法入門の書についてとありますね]
「(なんか、嫌な予感)」
[香り魔法入門の書は一、二、三と三冊で構成されており、それぞれがフルーツ、フラワー、そしてフォレストとあるようです。最初の二つについては読みませんが、フォレスト、つまり森の香りであるそうで、豊かな動物の集まってくる香りだそうです]
「(それで、そのフォレストフレグランスが学べるわけではないんだな?)」
[そういうことになりますね]
「(そりゃ、そうだよな。最初がうまく行き過ぎた……)」
輝は次の本を読み始めた。
「(トク、頼んだ)」
[はい。これは、“ヒノキの香り”とありますね]
「(おぉ!)」
[ヒノキには、他の匂いを吸収する効果があるそうで、そのあとに使う香り魔法の効果を最大限に発揮することの援助ができるそうです]
「(これって便利じゃね)」
しかし、ヒノキの文字はスターテスには表示されていない。
「(トク、どうなっているんだ?)」
[えっと、どうやらこれはフォレストフレグランスの派生のようですね]
「(えぇ?)」
[つまり、香り魔法の入門三を手に入れるまたは、学ばない限りは使えないとのことです]
「(そんなのありか?)」
[そういうもんですよね]
「(じゃあ、次!)」
輝は最後の現地語本、六冊目を読み始めた。
「(トク、これが最後だ!)」
[そんなこと言われても、私は読むだけですから……]
「(そんなことはわかってるよ。早く読めってことだよ)」
[はいはい、“集合フェロモン”と書いてありますね]
「(フェロモンって! 動物とか操れるんじゃね?)」
[ほんとにその通りのようです。動物によって集団的な動物に形成、命令を出すことができるそうです!]
「(でも、これでどうせ別の魔法の派生だからっていうんだろ!)」
[その通りです。この魔法は、香り魔法中級に収録されている、“フェロモン”という総合的な香り魔法の一部だそうです。つまり、それがなくては何も始まらないとのことです]
「(何冊その、香り魔法系の本があるんだよ!)」
[でも、中級と書いてあって、番号がないことからすればこれ一冊と解釈してもいいのでは?]
「(それにしても、どうせ、初級、上級、特級とかがあるんだろ!)」
[ありそうですね]
「(でも、これからが本番だぞ。日本語の本だからな)」
輝は目を輝かせながら、日本語で書かれた二冊の本を取り出した。
「(よし、読んだるか!)」




