第六十七話 惜しい失敗
第六十七話 惜しい失敗
輝は地図に小さな草原・草むらを見つけた。
「(蝶だから、草にいるだろう。流石にこの茶色い街の寂れた感じにはな)」
輝はその草むらに向かった。見た目は想像以上に小さく、輝は驚いたとともに、簡単な高額ミッションを選び抜いた自分を褒め称えた。
草むらの大きさは五十メートルプール程度の大きさ、形は長方形とは行かないが、まぁそのぐらいの大きさだろうと輝は思った。
だが、しかし、輝はこのなんでも起こりうるゲームの世界を舐めていた。輝が足を踏み入れた瞬間、輝の身の回りの風景は変わった。足元に生えていた草が、輝の身長を抜き空を隠した。その暗い中に輝は取り残されたのだ。運よく多少の木漏れ日があるおかけが見ることは目さえ慣れてくれば、問題なかった。
「(こういうトラップか……)」
輝はそれほど驚いたりはせず、魔法を使ってヌテライラフをおびき出す作戦に移行した。
輝は自分の思う草原の中心あたりに移動した。
「フラワーフレグランス!」
どこかから、甘い花の香りが醸し出された。
様々な虫が集まってきた。輝にはよくは見えないが、相当な量の虫が集まってきた。そう、輝が注目していたのは蝶一匹だった。
すると、運よくも輝は蝶を見つけた。しかし、その途端、蝶は方向を変え、てるから逃げるようにして飛んで行く。
輝も逃すまいかと、足元にいる何十、何百という虫を踏み潰して、追いかけた。
追いかけた。
追いかけ回った。
輝はまだ蝶を見ることはできるもの追いつくことができる程度ではあった。
蝶は飛んで逃げて行くため、足元の足が輝の道を拒んだ。
「(くそ、せっかく見つけたのに、邪魔が……)」
蝶との距離はだんだん離れていった。
「(そうだ!)悪魔ムリュウ!」
黒い煙とともに、ムリュウが現れた。
「なんだ!」
ムリュウは現れて早々テルに偉そうな態度を見せた。
「なんだとはなんだ? それより、あの蝶を追いかけて捕まえてこい!」
「なんだと!」
「契約主の言うことも聞けないないのか?」
「……」
ムリュウは飛んで、蝶を追いかけていった。
輝は特に何もすることもせず、周りにいた虫を踏み潰しまくった。次から次へと寄ってくる虫に限りはなかった。
しばらく、虫を踏み潰していると、ムリュウは手に蝶を持って帰ってきた。
「よくやったぞ、ムリュウ」
ムリュウは捕まえた蝶を輝に渡した。
「おい、生きてるよな?」
「あぁ、捕まえろって言っただろ」
「戻っていいぞ!」
「あぁ?」
「なんだ、戻らないのか?」
「お前が召喚したんだろ!」
「だから戻っていいぞって」
「テメエ! 調子のってんじゃねーぞ」
「乗ってねーよ」
「俺に戻る場所なんてねーんだよ!」
「……」
輝はしばらく考え込んだ。
「えぇ?」
「なんだ、お前が俺を召喚していない時俺はどこか別の場所にでもいると思ったのか?」
「そうじゃなないのか?」
「そんなわけないだろ!」
「じゃあ、どうなんだよ」
「粒子だ」
「えぇ?」
「俺は小さい粒子上の存在なんだよ、もちろん意思もないし、何も見ることも聞くこともできないけどな」
「ってことは……」
「あぁ、死んでるも同然だ」
輝は取り返しのつかないことを言ってしまったのではないのかと、後悔した。
「じゃあ……」
「お前の魔力が切れれば俺も消滅するよ」
ムリュウは静かな落ち着いた声で言った。
「(納得はしたけど…まだIVも残ってるぞ……)」
[二回フレグランスを使えばいいということですね]
「(そうだな)」
「フラワーフレグランス! フルーツフレグランス!」
どこから甘い果物の香りが漂ってきて、花の香りは一層香りを増した。さらに多くの虫が、そして虫だけでなく、小さな小動物も寄ってきたが、輝にはそれほど見えていなかった。それよりも見えていない方が良かったのかもしれない。
そしてしばらくすると、ムリュウの姿もなくなっていた。
「(なるほどな、俺ちょっとムリュウにひどかったかもな)」
[私にはそんな風に言わなかったのに!]
「(なんだ、お前は役立たずじゃねーか)」
[なんて言いました?]
「(悪かったって。トクがいなかったらここまで来れなかったからな)」
輝は蝶を手に、草原を中を進み始めた。
もちろん、どの方向に進んでいるのかはわからないが、長くても五十メートル程度だと、輝は歩いて行った。
この草むらには、結界のような効果がなかったためか、そのまま外に輝はでtることができ、外から見るとやはり膝ほどの草の生えた原っぱだった。しかし、振り返ると見える、虫の数はテルに吐き気を催した。数千という数だとも思えるほどだった。
中には、ムカデのような細長いものや、蛾のような羽のある生き物、カブトムシのような甲虫だっている。
輝はギルドニュービーに向かった。丁寧に殺さないように蝶の羽を持ち、急ぎ足で向かった。
ギルドニュービーに着くと、早速二階へ上がり、モブのバーテンダーに話しかける。
「ミッション終わりました!」
「えっと、ヌテライラフのミッションだね。では見せてもらおうか」
輝は蝶を手渡した。
「これです!」
モブは見た途端顔をしかめた。
「これはフテライラフじゃないね。ミッション内容をちゃんと読んだか?」
「えぇ?」
輝は困惑した。
「ミッション内容って?」
「これだよ」
バーテンダーはミッションを確認する機械を開いて見せた。
[フテライラフとは、羽があるものの飛ぶことのできない小動物の一種です。羽は広がっており、地面を這うようにして移動します]
「(おいおい、これって……)」
[踏み潰した中にいそうですね]
「(つまり俺は散々殺していたのか?)」
[そういうことになりますね]
輝は落胆した。輝は虫という虫をとことん殺していたためか、もう見つけることができない気がしていたのだ。
輝はそのまま、下を向いたまま、ギルドの外へとでた。
「(なぁ、この蝶はどうすればいいんだ?)」
[羽がキラキラ光っているので私もこれだよばかり……]
「(逃すか?)」
[コレクションに興味ありましたっけ?]
「(あるわけないだろ)」
[そうですね、逃がしましょう]
輝は手を広げ、掴んでゆがんだ羽を多少整えた。
「これでいいはずだ。ゲームの中だが、さようでな」
蝶はキラキラとした羽を広がながら飛んで行った。
「あぁ!ちょっとあんた!!」
どこらから大きな叫び声が聞こえた。




