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異世界でもコツコツ強くなっていきます!  作者: 黒陽
七章 四国対戦
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第六十三話 狂気の沙汰

 第六十三話 狂気の沙汰


「あの……」

「何? どうかした?」

「そろそろ帰りたいのですが……」

「そうよね、あなたには待っている人があるだろうしね、本当に付き合わせちゃったみたいで……」

「(何この展開? まじでモブかよ)まぁ、一様そうなので……」

「そうよね、それであなたはどこから来たの?」

「第二の町ビギナーズタウンという場所から……」

「あなたもしかして……」


 魔女は顔を試験管の置いてあった位置に向けた。


「(やばい)」

 輝は咄嗟にソファの上に乗り、隠した。


「それで、どうしたら帰れるのですか?」

「そうね、この沼地をずっとまっすぐいくと、二つの町の道に戻れるはずよ」

「なるほど、ありがとうございました」


 輝はソファから飛び降りて、魔女の家を出た。魔女は輝を見送るようにして、手を振って輝を見送った。


「(これで、なんとか……)」

 輝は必死に走ったが、沼地の走りにくさと、魔女の家が点に見える位置に来たために、歩き始めた。


 輝は安心して、歩き始めたもののなかなか着かない。輝は不思議がりながらも、ただひたすらにまっすぐ進んでいった。


「(なんだよ、どんだけ遠いんだよ)」

[イノロクにかなり引きずられましたしね]


 そして、輝がさらに歩いて行くと何かが見た。なんだか、小屋のようだ。

「(こんなところに家? 魔女の家以外にもあるんだ」」


 しかし、近づいて来てみると、見覚えのある家のようだ。

「(あれって、魔女の家じゃね)」


 すると、家の前にはだれかが立っている。

「(おい、あれって魔女か?)」


 輝は慌てて、方向を変えた。そう、家の方から離れ始めたのだ。

「(どうなってんだ?)」


 輝は小走りに、まっすぐ行く。そして、魔女の家が見えなくなったぐらいに、また小さな建物が見えた。

「(まじかよ! これって無限ループか!)」

[魔女の罠にはまったみたいですね]

「(どうしろっていうんだ)」

[もう、返しにいってわ?]

「(それは、できないな。金欲しいし)」


 輝は次に右に曲がって進み始めた。しかし、もう、罠にはまっているようで、どちらにいっても、魔女の家がある。

「(くそ! うまく行くと思ったのに)」


 輝は屈み込んだ。すると、家の方からだれかが近づいてくる。輝はもうわかっていた、それが魔女であることが。


「すいません」


 魔女は足を止めずに歩いてくる。


 輝は走り、様々な方向に行くものの、どの家からも魔女が近づいてくるのだ。


「助けて!」


 魔女はもう、輝の三メートル先程度に囲うようにして、立っていた。



「その薬品は返してもらうよ」

「でも……」

「私の家から何かを持ち出そうとするものは、絶対に帰ることはできないんだよ」

「どうしても、ダメですか?」

「悪魔を呼び指すそんなものをどうしてあげられる」

「……」

「それで、どうするんだ? 死を選ぶか、生を選ぶか?」


「……(そういえばこのゲームで死ぬとどうなるんだ?)」

[おそらくゲームオーバーでしょうね]

「(嫌でも、シウホーンにやられた奴らは……)」


[あれはただの処理能力が追い付かなくての機力切れと言っていたことから考えると別のものでしょうね]


「仕方ないな、わかったよ!」

 輝は諦め気味に、試験管を一人の魔女の方に投げた。


「ちょっと!」

 しかし、それは落ちて割れた。

「この中に本物は一人しかいないのに、あなたが投げたのは私の幻影……」

「えぇ!?」



 黒い煙のようなが発生した。



「魔女さん……特別の方法とかじゃなければ悪魔は召喚されないんだよね……」

「えぇ、でも結界の中では話が違うわ」

「ここって結界の中?」

「そうよ、だから無限ループと幻術が使えるのじゃない」

「ってことは、悪魔は……」

「あぁ……」


 魔女は焦ったようにして、何かしらの魔法の呪文を黒い煙にかけ始めた。



 しかし、手遅れであった。



 黒い煙は黙々と大きさを増していく。



 魔女は休まず何かしらの魔法の呪文を唱えていた。



 輝はただ呆然と立ちすくんでいた。

「(俺は何ができるんだ……)」

[適当に香りの魔法でも唱えていればいいんじゃないですか?]

「(効果ないだろ)」

[でも何かはしたいんですよね]

「(そうだけど……)」



「フルーツフレグランス! フラワーフレグランス!」

 輝は繰り返し唱えた。

「フルーツフレグランス! フラワーフレグランス!」


 しかし、想像通り何も起こることはなく、黒い煙はどんどん大きくなっていき、気づけば、輝は煙の中にいた。



「(もうダメだ……)」




 しかし、実際問題、黒い煙がテルを含むまでの大きさになったというよりは、魔女視点からしてみれば、煙が輝の周りを多い囲んでいたのだ。


 魔女は気付いたようにして、何かしらの呪文を再び唱え始めた。しかし、今回の呪文は違う呪文であった。


 輝の周りをまとわり始めた煙に対して、魔女は結界を小さくし始めたのであった。その大きさはだんだんと小さくなってゆき、輝は一人結界の中、煙に包まれていた。輝は動こうとするが、見えない壁がテルの行く手を拒んだ。



 すると、突然煙が消えた。


「(あれ? どうなっているんだ?)魔女さん、悪魔は?」

「ここだよ」

「えぇ?」


 輝は下に見下げると、小さな黒い、角の生えた、翼の生えた、尻尾の生えた、小さな人型の生き物を目にした。


「誰? 魔女さん?」

「誰だ、魔女さんっていうのは?」

「えっと……とぼけないでほしいな」

「なんだ、テメェ。お前か、俺をこんなに小さくしたのは?」

「小さく?」

「俺は災厄最強の悪魔リュウだ」

「いや、冗談もほどほどにして、悪魔がこんなに小さいわけが」


 輝は鼻で笑った。


「テメェ、殺すぞ!」


[輝、もしかしたら本当に悪魔かもしれませんよ]

「(でも、こんなに小さいんだぞ)」

[でも、見た目はよくアニメとかに出てくる感じじゃないですか]

「(トク、お前そんなものにまで手を出していたのか?)」

[まぁ、教養として…]


「本当に悪魔なのか?」

「言っただろ、悪魔ムリュウを知らないのか!」

「でも……」

「大きさのことは黙ってろ!」

「それで、俺を殺すって言ってんかったか?」

「あぁ!」

「それで?」

「なんだ?」

「殺さないのか?」

「……」

「もしかして殺せないのか?」

「……」


 悪魔は黙り込んだ。


「俺には力がない……」

「えぇ?」

「この大きさで召喚されたから、十分な力がないんだよ!」


 悪魔はかなり投げやりになった。


「それで、だったらどうするんだ?」


 輝はしゃがみ込んだ。まるで、子供と会話をするのかのように。



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