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異世界でもコツコツ強くなっていきます!  作者: 黒陽
七章 四国対戦
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第六十二話 偶然の遭遇

 第六十二話 偶然の遭遇


 輝はゲーム四国戦争を再開した。


 勿論戻ってくるのは森の中だ。どこにいるのかもわからないただの森の中だ。


 輝は登ることも諦めた。輝はまた森の中を歩き始めた。


 木、木、木、木、歩けば木はどこにでもあるが、どこかに繋がっているということも、何かがあるということもなかった。


「(だから戻り抱くなかったんだよ!)」

[ここでフルーツフレグランスを使ってみては?]

「(なんでだよ、イノロクとかもこないと思うぞ)」

[いいから、何かしてみないと!]

「(わかったよ!)フルーツフレグランス!」


 どこかから甘い香りが漂い始めた。すると、イノロクではない、様々な生き物が顔を出した。



 鹿のようなツノの生えた生き物や、リスのような小動物も出てきた。しかし、イノロクのように飛びついてくるというよりは、遠くから匂いに誘われてやってくるという方に近かった。


「(これからどうするんだよ!)」

[さて?]



 しかし、そこにやってきたのは、動物たちだけでなかった。そうだ、そこに姿を表したのは、黒いドレスをきたまさに魔女の姿であった。


「(えぇ!? 魔女!)あなたは……もしかして……」

「あなたがこの香りを出しているのですか?」

「……はい」

「この香りは何かしら?」

「フルーツの香り? だと思います」

「それで、どう出しているの?」

「(なんか質問多いな。本当にモブか?)魔法を使っていますが……」

「魔法……私以外にも魔法が使える方がいらっしゃって! 興味深いわ、どうぞお茶でもどうかしら?」

「(これってイベント系なんか?)はい、ありがとうございます」


 魔女は森をよく知っているようで、右へ左へと歩いていくと、森から出ることができた。そこには沼地が広がっており、ポツリと小さな家があった。


「ここがあなたの家?」

「そうですわ、どうぞおあがりになって」


 輝は家の中に入った。

「お邪魔します」


 すると、小さいくこのジメジメとした沼地にあるとは思えないほど、清潔感のある木造の家であり、小柄な良い雰囲気であった。


「どうぞこちらに腰を下ろして」


 そこには二つのソファが置かれていた。


「でも、私泥まみれで汚いのですが……」

「それもそうね、じゃあ裏に川があるから浴びてくるといいわ」


 すると、輝は皮に案内された。


 その川は浅く流れもゆっくりだが、水は綺麗で透き通った色をしていた。


 輝は恐る恐る服を脱ぎ始めた。

「(そういえばこのアバターの体ってどうなってんだろうな)」

[まぁ、ゲームクリエーターからしたら同じようになっているでしょうね]


 そして案の定、体は現実とも変わらないものであった。輝は服と体を川で洗った。


 濡れた体で戻ると、魔女は魔法で輝の服を一瞬で乾かした。



 輝はこの時点で、どこまでがゲームなのかわからなくなっていた。なぜなら、魔女は CPUのはずなのに、生き生きとギルドの案内人とは違う人間らしさがあったためだ。



 輝はソファに腰を下ろした。すると、壁の上の方に、小さな紫色に光る試験管のようなものを見つけた。

「あの光っているものはなんなのですか?」

「あれは魔法の薬品よ。確か紫龍の右目から出た涙だったかしら?」

「噂で猛毒だと聞いたことがあるのですが……」

「あら、それはきっと紫龍の左目から出た涙のはずよ」

「えぇ!? 左右は違うものなのですか?」

「えぇ、左涙は皮膚もを溶かすほどの強力なもので、右涙は悪魔なんていう召喚獣を呼び出す際に使えたはずよ」

「悪魔!? そんなことが……」

「私にはできても、手懐けることはできないけどね……」

「それをどうにか譲っては……」

「欲しいの?」

「興味はありますね、光ってますし……」

「いいえ、悪魔は一度召喚されると手懐けられない限りは街一つを食い落とすとも言われているのよ」

「なるほど……(一体契約主は何をしたいんだ? 手懐ける自信があるのか? それとも戦争用か)」


 輝はしばらく考えていた。


「それで、今度は私からいいかしら?」

「はい……」

「あなたは魔法を使えるっておっしゃっていましたが、その香り以外には他にもできるのですか?」

「フルーツの香り以外は……香り全般はできるはずなのですが、覚えない限りでは……」

「魔法は覚えるものですもんね。あと、あなたはどこからきたのかしら?」

「街の方からきました……」

「でもなんで?」

「(その薬品を盗みにきたなっていえねー)香りを出したらイノロクに襲われて、気づいたら森に……」

「なるほどね。それで街に帰りたいの?」

「まぁ、はい(その薬品をとったら……)」

「そうね、私人混みは苦手なもんだからどうしたら……」


 輝は思い出したように言った。

「そういえば、香りに関わる魔法は使えるのですか?」

「私?」

「はい」

「そうね、花の香りとかかしら?」

「花の香り?」

「そうよ、あなたのフルーツほど甘くはないんだけどね」

「名前は……?」

「フラワーフレグランスよ」

「なるほど……」


「見てて、フラワーフレグランス!」


 すると、どこかから甘く優しい香りが漂ってきた。様々な蜂のような生き物や虫も寄ってきた。



 輝はスターテスの位置にフラワーフレグランスが加わったのを確認した。消費魔力はこれもIIだ。


「試して見ても?」

「何を?」


「フラワーフレグランス!」


 すると、どこからほのかに甘い、優しい香りが漂ってきた。


「あら……」


 魔女は驚いたように言った。まるで本当の人間のように。


「(すげー、このゲームマスター、このキャラに凝ったな。マジでもう人間じゃん)」


 魔女の家の窓や扉から、多くの虫が集まってきた。


「(きも!)」


 輝は逃げるようにしてソファに立ち上がった。試験管は手を伸ばせば届く位置だ。


 魔女は虫を追い返しながら言った。

「すごいわ! 私のでもこれほど寄ってこないのに!」

「それよりもどうしたら?」

「何あなた怖いの?」

「まぁ……」

「だったらアンチ魔法を覚えるべきね」

「アンチ魔法?」

「そうよ、逆の効果を持つ魔法のことよ」

「それはどうしたら……」

「まぁ、私は知らないけど、詳しい人に聞けばもしかしたらね」

「つまり虫の嫌いな香りってことですか?」

「そうなるわね」

「へぇー」


「(アンチ魔法。興味深いな)」

[あったほうがいいですね、それよりも試験管すぐそばですよ!]

「(こんなによくしてもらっていいのか?)」

[でもお金は?]

「(あと、これで街が滅ぶかもしれないんだぞ)」

[それはこのミッションを依頼した人に言うことですよ。あなたはすることをすればいいのです]


 輝は魔女とにこやかに話しながら、こっそりと紫色の試験管を後ろポケットに入れた。


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