第五十九話 追いかけっこ?
第五十九話 追いかけっこ?
[フルーツフレグランス:IIとありますよ]
「(えぇ!これって俺が使えるようになったってこと?)」
[そのようですね、それも消費魔力は二、つまり使えますね]
「フルーツフレグランス!」
輝は大声で叫んだ。
「何? テル急に?」
すると、どこからか甘い果物の香りが香ってきた。
「あれ? 何この甘い香り? もしかして、魔法?」
サクラは輝に聞いた。
「そうみたいだね……」
輝は自信なさげに言った。
「それで何に使えるの?」
「動物を惹きつけるらしんだけど……」
サクラは辺りを見渡した。
「あぁ!」
輝もサクラの向いている方向をみると、何やら大きい何かがやってくる。
「(なんだあれは?)」
距離がまだ遠くよく見ることはできない。
「あれってもしかして……」
だんだんと距離が縮まってくるにつれ、その動物らしき何かがはっきりとしてきた。
「(大きな二本の牙、大きな鼻、四足歩行だな……)」
[もしかして象なのではないでしょうか?]
「(でも象はあんなに速くないだろ、あと象にしては小さいかもな)
サクラはぼっそっと呟いた。
「まずいわ」
「何がだよ?」
輝はサクラに聞き返すが返答はなかった。
それどころか、サクラは突然に道なりに走り始めた。
「テル! 行くわよ!」
「えぇ!?」
輝は遅れ気味に、サクラを追うようにして走って行った。
「(よく考えてみれば、この香りはどのぐらい続くんだ?)」
[そうですよね、時間制限や距離制限があってもおかしくはないですもんね]
だが、獰猛な動物は追ってきていた。そしてだんだんと近づくにつれ、輝はその動物が猪であることに気がついた。
「(イノシシ?)」
[見た目はそのようですが、体全体が大きいだけでなく、頭が特に大きいですね]
「(あんなのに頭突きでもされたら即退場じゃね)」
[そうですね、あの牙で串刺しと言ったところでしょう]
輝はサクラを追いかけたながら聞いた。
「あの生き物はなんなんだ?」
サクラは必死に走りながら言った。
「あれはイノロクよ、途中の看板見たでしょ?」
「えぇ? ごめん、本読むのに忙しくて……」
「じゃあ簡単に言うわよ、あれは物凄く危険なの! 懐かせることもできないし、匂いに敏感らしいってね……」
「じゃあ逃げるしかないってことね」
「そう言うことよ」
そんな時、道の先には町が見え始めた。第一の町に比べて多少規模は大きいようだ。
「あれって? 次の町?」
「そのようね、急ぎましょ!」
そうは言いながらも、イノロクと輝たちの距離は徐々に縮まっていく。しかし、輝はようやくサクラに追いつき、追い越した。これはおそらく脚力のVIとVIIの違いであろう。
輝は必死に走って行く。
「(やばいって!)」
そして、休みなしにどんどんと走り加速してゆき、街との距離も縮まってきた。
「サクラ! もう少しだよ!」
輝は後ろに振り返ると、サクラは遠くにいた。
「サクラ……?」
そう、輝は何も考えずに力を振り絞るように走っていたせいか、サクラとの距離ができてしまった。そして今、輝は止まってサクラの方を見た。
「あぁ!」
「テル、もう無理!」
イノロクはもうサクラの間近にいた。
「サクラ!」
すると、イノロクは横へサクラを避けた。そして、輝の方へ一直線に走って行くのだ。
「(えぇ? まだ、香り続いてんの!?)」
輝は急いで走り始めた。しかし、元から助走のついていたイノロクにはすぐに追いつかれてしまった。
「(この魔法使えないどころか、不幸を呼ぶのかよ……)」
イノロクのは輝のすぐそばに来たその時、イノロクは何もなかったのかのように、輝を通り過ぎて、来た道を帰って行った。
「(あれ?)」
[恐らくは魔法が切れたと言うことですね]
「(結構持続時間長かったな)」
[不幸中の幸いですね]
「テル! 大丈夫だった?」
「魔法が切れたみたいでね…サクラは?」
「私は全然大丈夫、でもあなたの魔法がこんなに効果的だとわね」
「でも、危険ってパフューム以外にも匂い系の魔法があるのか?」
「いいえ、何か危険物があったりすると、攻撃してくるらしいの」
「じゃあ、門番的なやつか?」
「まぁ、チートとかを使っていきなり何かしようとする人を防ぐためでしょうね」
輝とサクラはゆっくりと町の方へ向かって行った。
「見えて来たわ、ビギナーズタウンですって」
[第二の町ビギナーズタウン]
「(そのままだな、じゃあ次はインターミディエイトタウンとかかよ)
[それは長すぎますよ]
「(確かにな)」
町へついてみると誰もが同じ服を着ていた第一の町とは違って、様々な服を着ている。ここに着てファッション要素も出てくるようであった。
「すげー、いろんな服きてるな」
また建物も、どれも平屋であった第一の町とは違って、二階建ての洋風の建物もいくつかあった。だが、ほとんどはまだ、木造建築が主流であるようであった。
ほとんどが洋服のTシャツにズボンだが、そのバラエティーも豊富であった。
「それはそうよ、ここではお金稼ぎがもっと重要だからね」
「稼ぐ? ミッションでか?」
「そうよ、武器なんていうのも買ったりしないといけないしね」
「そういえば、食べ物はないのか?」
「あるわよ、でも必要ないから最小限に控えたほうがいいわね」
「(効率重視か、やっぱゲーマーだな)」
輝は町の中を歩いて行った。
「それで、ここでもギルドを探すのか?」
「そうね、私たちのいた初心者ギルドを見つけないと」
「でも、もっと他にもないのか?」
「あるけど、入るのにはお金がいるでしょ。だからまずは稼がないと」
「そうか……」
らはりゲームの世界とは行ってもお金がなければ何もできないことに輝は落胆した。
そして、輝たちは初心者ギルドについた。そこは一目瞭然。見た目は全くと行っていいほど同じで、ボロボロの二階建てだ。
「ここに行くのなんか恥ずかしいな」
「そうかしら? ほとんどの人はここいるはずよ」
そして扉を開けると案の定その通りであった。外に賑わっていた人の数どころか、二倍三倍の人がいた。
「ようこそ、ギルドニュービーへ。酒場は一階へ、ミッションを受けたいのなら二階へ向かってください」
案内人に言われた通り、輝とサクラは二階に向かった。軋む階段までが同じであった。
「サクラ、でもここにいるのは全員すでにスターテス機能を持っている人たちなんだろ」
「そうね、ほとんどかな。だって、なくてもあの長い距離を歩いてこれるのなら問題なくここにたどり着けるしね」
「そんなこともできるんだ、じゃあ第一の町で完全に詰む訳ではないってことだったのか」
「まぁ、武器なんていうものを買うためには働かないといけないけどね」
そう話しながら、輝とサクラは二階についた。ミッション生活の始まりだ。




