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異世界でもコツコツ強くなっていきます!  作者: 黒陽
序章 異世界への招待
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第五話 再戦リベンジマッチ

 第五話 再戦リベンジマッチ


 三日目


 日光が窓から差し込む。輝は気持ちよく朝を迎えた。三度目の朝は左右を見てもアイリスはいなかった。

[今日はいないですね]

「(朝ぐらい静かにしてろ! ていうか、昨日強制終了したよな?)」

[強制終了と言っても私が黙っているかいないかの違いなので、私が消えているわけではありませんよ]

「(つまりそんな機能はないってことか?)」

[その通りです]


 するとアイリスが扉をノックせず入って来た。ローブも羽織っていない。

「おはよう」

「おはよう、何か用?」

「チェックアウトのお時間です」

「まだ朝なのに?」

「お金足りなかったでしょ!」

「わかったわかった」


 輝は特に準備するものもなく、ローブを羽織ると宿屋を出た。



 輝は未だこの世界の情報を必要としており、そのためには多額のお金を必要としていた。

「(どっかでバイトしないとな、トク、店員募集とかのチラシなかったか?)」

[はい、なかったですよ。情報屋に行けば……あ、無一文でしたね]

「(バカにしてんのか!)」

[地下闘技場が一番いいと思いますけどね、ファイトマネーって効率いいので]

「(前回はまぐれだぞ、誰かが助けてくれたから。あ! もしかしてローブ屋の時の人が助けてくれたのかも!)」

[あの時は体温が上昇してましたもんね]

「(なんのことだ? まぁいい、行ってみるか)」

 輝は大通りをアイリスの家の方へ歩いて行き、あの男を見つけた。小さく紺色のローブを羽織って路地の近くで人を待っている。

「兄ちゃん、強そうだね。いい仕事があるんだけど」


 輝はすぐに誰か気づいた。

「(ボンドの声だ)」

 輝はローブのフードを脱いだ。


「テルか! またやる気になったのか?!」

「あぁ、まぁ…」

「早く来いよ、ちょうどお前を指名している奴がいるんだ」


 前回と同じく、路地に入って、階段を降りると地下闘技場に辿りついた。場内はものすごく盛り上がっており、多くの観客がいる。また、今決着がついたようだ。

「勝者ボーズキン、これで10勝目です! ボーズキンには計二十万ハイルを贈呈します」

「そいつがテル、お前の対戦相手だ」

「いや、それはちょっと……」


「審判! テルがきました」

「オー」

「あいつって、ボーズキンを前に倒した奴だろ」


 観客は今まで以上に盛り上がった。

「テルか! 前はよくもやってくれたな!」

 ボーズキンもかなり気合が入っているようだ。


 輝は周りに押されるようにしてステージにたどり着いた。輝はローブを脱いだ。

「(なんだ? このプレッシャー……死ぬってマジで無理無理無理!!!)」


 審判が出てきた。審判は複数人いるようである。

「この戦いはボーズキンさんが自ら指名したリベンジマッチです。本戦には関係ありません。ファイトマネーはボーズキンさんから払われます。いくら払いますか?」

「全財産だ!」


 ボーズキンは自信満々に答えた。

「それではボーズキンさんの全財産をかけたリベンジマッチ、テル対ボーズキン、ファイト開始!」


 試合が始まった。ボーズキンはあの後随分鍛えたのかのように前回よりも全体的に一、二倍程度太く強靭な体つきになっている。早速ボーズキンが輝に突進を仕掛けてきた。

「ウォーーー」


 輝は必死に逃げたがギリギリ服を掴まれてそのまま突進の餌食になった。

「(痛てーー、しかも服が…)」


 テルの服は前回同様に豪快に破けている。すでに服としての機能をしていない。

「あれれ、またまた服が…」


 ボーズキンは余裕に笑みを浮かべ、観客も笑っている。しかし前回を踏まえてボーズキンはすぐに冷静に戻った。ボーズキンは右に左にと殴りかかり隙だらけであるのに、輝は手を出せず逃げ回っていた。レストランでもハードコアアルバイトのおかげか心なしか輝の体力がついていたため、長時間逃げ回ることができたが、結局は輝が先に疲れ果てた。

「(もう無理だ)」


 輝はステージに座り込んだ。ボーズキンは先ほど以上に嬉しそうに輝の方へと歩いてきた。

「(痛いのは…)」

「びり、ビリリッッッリ」


 輝のズボンが破かれ、下着があらわになった。

「おいおい、また赤パンかよ! もしかして服着替えてねーのか!」


 輝の顔は赤くなった。日本では毎日風呂に入り、服も着替えていたのに対し、異世界では三日目にして、まだ風呂にも、服も着替えていない。つまりボーズキンの言っていることは正しいが、それを言われると恥ずかしいのは当然のことだ。


[輝!身体の体温が急上昇しています。このままでは生命維持が……三十八度、四十度、四十五度、五十度、六十度に到達しました! でもなぜ生きているのですか?]

「(知らねーよ、もしかしたら前回助けてくれた人がまたなんかしてんじゃねーのか? そんなことより、また人前でパンツ一丁だよ。マジか)」


 そしてボーズキンはあの体勢に入った。

「ボディダイブ!?」

「正解! 今度こそこれで終わらせてやる」


 ボーズキンは輝の上に見事に乗った。その瞬間二人は悲鳴をあげた。

「あー」

「あー」


 すぐに審判が勝敗を見る。しかし、輝はこれ以降の記憶を失っていた。彼は全身のあちこちを骨折しており、あまりのショックで気絶していたのだ。


 ちなみに、勝者は輝。ボーズキンは前回同様体に火傷をおっており、熱が心臓に達し、死んだとのことだ。この現象に対し、人々は疑念を抱いたがすぐに忘れられることになる。


「勝者テル!テルには先ほどの賞金二十万ハイルを含めた、ボーズキンの全財産、計六十万ハイルが与えられます。」


 輝は病院にすぐに搬送された。商業都市であるルーマスには大きな病院はなく、輝を乗せた救急馬はハイルランド第一都市ハサークに向かった。


 ちなみに、ルーマスではこの世界の移動手段である馬は禁止だが、救急馬の入ることが許されてる。救急馬とは、足の早く、持久力がある馬四頭で形成される馬車のことだ。しかし、救急馬はルーマスにはいないため、隣町オビルリンからルーマスに来るため、合計十五時間以上の時間を有し、気を失った輝は三日目の夜、ハサークに到着した。


 輝は様々な異世界の手術を受け、それから二日後の五日目、輝の手術が完了し、輝の体は問題なくなった。あとは輝の意識が戻るまで、病室で入院することになっていた。

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