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異世界でもコツコツ強くなっていきます!  作者: 黒陽
六章 一年最終試験
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第五十二話 一瞬の出来事

 第五十二話 一瞬の出来事


 ボビーの姿はなかった。ダルクは大声で叫ぶがやはり彼の姿はなかった


「ボビー! 不戦勝にするぞ!」


 その間、ケレンとクラークの会話は続いており、輝はこっそりと後ろで忍び耳を立てていた。


「それで彼が強いのは家柄かしら? どこの子なの?」

「どこの生まれかも知らないが、師匠の推薦で入っていると聞いたぞ」

「師匠……有名な方?」

「あぁ、魔賢者マグニスだ、って噂で聞いたが本当かは知らないな」

「えぇ、マグニスってあの!」


 もちろんのこと、輝には誰なのかさっぱりわかっていなかった。

「(誰だよ、そのマグニスって)」

[知りませんね]

「(けど、魔賢者ってことは……)」

[A級魔道士の上、法力、機力、知力全てが揃っていると言うことですものね]

「(だからやばいのか……)」

[それよりも、ボビーさんはどうしたのでしょうか……]

「(確かに遅いな)」


 ダルクは再び言った。

「ボビー、いいのか!」


 すると、ボビーが出てきた。体よりも大きいハンマーを持って。


「おぉ、ボビーどうしたんだ?」

「先生、これの値段証明です」


 ボビーはダルクに紙を見せた。

「了解だ、前もって準備できるといいな」

「すいません」

「じゃあ、早速始めるぞ」

「はい」



 ボビーは重そうにしてハンマーを持ってA組生徒の前にたった。


「それでは、A組キリとB組ボビーの試験を開始する」

 ダルクがいい終えたその瞬間であった。


 ばたりとボビーは倒れた。


「おい」


 ボビーは気を失っていた。ダルクはボビーの方へ駆け寄って行った。


「ボビー!」


 ダルクはボビーを持ち上げた。



「あのすいません……」


 キリがダルクに話しかけた。


「俺の勝ちでいいですよね」

「あぁ、A組キリは残留とする」


 ダルクはボビーを運んで行った。


「(何が起こったんだ?)」

[よく見てませんでしたもんね]

「(それもそうだが……)」


 ケレンはクラークとまた話し始めた。

「あれは速かったわね」

「あぁ、あいつはマジで速い。さっきのやつも速かったし、ほかにも速いやつはいるあ、キリの速さは集中して肉眼でやっと見える程度だからな」

「彼は本当に強いわね」

「相手が相手だったけどな」


 クラークは大声で笑った。しかし、キリが戻ってきた途端、クラークは黙った。

「……」


 対して、ケレンはキリの方へ寄っていった。

「あなた強いのね、私を見ていたかは知らないけど、私ケレンというの」

「……」


 キリはケレンを無視して、観客席に座った。だが、ケレンは負けじとキリの隣に座った。

「あなたの師匠が魔賢者のマグニスってきたんだけど、本当?」

「……」

「まぁ、あなた強いものね、あなたは魔導師を目指しているのね」

「……」


 ケレンはとことんキリに無視されていた。しかし、無視どころか深くローブのフードをかぶっている様子から、ケレンさえも見ていないようであった。


「(キリってなんなんだ? ケレンがあんなに話しかけてんのに)」

[キリに起こっているのですか? それとも嫉妬ですか?]

「(トク、お前は黙ってろ)」


 他のA組生徒もキリが戻ってきた途端に静かになった。輝は思い出したように、クラークに小声で聞いた。

「クラーク、なんでA組の生徒はローブを羽織っているんだ?」


 クラークも小声で返答した。

「最初に来た時、キリが着ていたんだ。それからだ」


 そうだ、どうやらキリはかなりA組に影響力があるらしかった。


 すると、ダルクが戻ってきた。

「これで全ての試験が終了した。A組の生徒は隣の塔へ、B組は明日の試験に向けて部屋に一度戻ってくれ」


 そう言われると、A組の生徒は全員一年の塔を出た。皆にとっても、輝以外には外に出るということは珍しかった。


 そして皆そろって一年の塔より少し大きく高い、二年の塔へ行った。

「(ここでは最上階!)」

[A組ですからね]


 そして、階段を上っていくと、たどり着いた。広々とした空間、そして教室に向かった。


 皆は静かに席に座っていく。ケレンはキリの隣に、テルはまたその隣に座った。そして、先生だと思われる女性が教室に入ってきた。


「こんにちは、それであなたたちがA組ね」

「……」


 どの生徒も一言も話さない。

「それで、新しいA組はケレンさん、マリカさん、そしてテルくんね」

「はい」

 輝は一人返事した。


「私はA組の担任A級魔導師のサクラです」


 髪は桃色、耳が尖っていることからエルビーだということがわかる。二十代前半の若そうな女性だ。


「私は去年もA組を教えていたから、あなたたち三人のことを少し聞いていいかしら」


 そういうとサクラ先生はケレンに質問した。

「あなたは羽があることから考えるとミラーノ族のようだけど……」

「その通りです」

「アウェスからかしら?」

「はい」

「それで魔法は見た所、氷結魔法のようね」

「そうです」

「わかったわ」


 すると、次はマリカに聞いた。

「あなたは……エルビー族よね」

「はい!」

「どこから来たの?」

「私はレクリアノスから来ました」

「首都ね、それで両親はどうしているの?」

「父は魔法使いとしてギルドに、母は家庭主婦ですが……」

「なるほどね、それで魔法は爆裂魔法と言ったとこかしら」

「はい」


 次は輝だ。

「(どんなこと聞いてくるんだろ?)」

[わかりませんね]

「(でもなんか言い方かっこいいよな)」

[そうですね、氷が氷結、ボムが爆裂ですもんね]

「(俺のはどんなんなんかな)」

[女性だけっていうこともありますよ]

「(そういうフラグ立てんなよ)」

[まぁ、第一印象は大事ですよ]

「(わかってるって)」


 サクラは輝に聞き始めた。

「えっと、テルくんだよね」

「はい」

「それで人族と……」

「はい」

「どこから来たの?」

「ルーマスって知っていますか?」

「現実世界からね」

「はい」

「珍しいね」

「そうですか」

「確かこのクラスの誰かも同じだった気がするわ」

「へぇー(同じってルーマスからってことか、それとも魔法界からじゃないってこと?)」


「それで魔法は熱であっているのかしら」

「(熱……そのままだな)はい……」

「両親の方は?」

「いません」

「あら、悪かったわね。師匠がいるのかしら?」

「はい、確かC級魔導師と言っていました(なんか恥ずかしいな)」

「C級ね……一様だけど名前を聞いていいかしら?」

「ベルトですが……」

「あなた……もしかして疾風のベルトのこと?」

「風魔法を使うのですが……」

「あなた騙されているわ、最近弟子を受け入れたと聞いていましたけどまさかあなたとわ……」


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