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異世界でもコツコツ強くなっていきます!  作者: 黒陽
六章 一年最終試験
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第四十九話 いらない心配

 第四十九話 いらない心配


 ダルクが次に呼んだのはマリカの名であった。


「マリカ対ルイカ、試験開始!」


 すると、次は二人ともスタジアムにいた。


「(おぉ、マリカはちゃんといるぞ)」

[スバルさんだけでしたね]

「(いや、昨日の負け組は俺だけだから最初だったらいいけどな)」

[そんな変わりませんよ]

「(心持ちが違うんだよ!)」



 マリカの手にはやはりデカデカとしたあの盾が、ルイカの方はやはりローブで隠れて見えなかった。


 先手必勝、先に動き出したのはルイカであった。マリカは珍しく爆弾を投げる様子見を行わなかった。

「(なんで投げないんだ?)」

[先ほどのA組も人たちも先には何もしませんでしたからね]

「(だけど、様子見っていうのは……)」

[いや、手の内を見せないというのも作戦ではないのじゃないですか]

「(確かにそうだな)」


 ルイカは氷の上を滑るように地面を駆けてゆく、そして最初の一発、マリカは直接溝に食らった。


「(あれは痛いな)」

[まぁ、即退場にはならないだけいいでしょう]

「(それにしてもどうやって滑ってんだ?)」

[滑るといったら、熱や風、氷、宙に浮くなどがありますよね]

「(熱だったら被りじゃね)」

[まぁ、魔法が同じ人は多いですからね]

「(いや、でも水面じゃないのに浮いてるってことは、俺の温度より高いのかも……)」

[まぁ、A組ですからね]

「(これがダルク先生が言っていた意味か)」

[辛いですね]

「(辛いな)」


 すると、ルイカは魔機をあらわにした。まるで、次はこれで行くぞと言わんばかりだ。そこで盾をマリカは身構えた。


「(これで決まるな、爆弾が当たればマリカの勝ちってことか)」


 ルイカは再び滑り出した。マリカはそれに対して必死に爆弾を投げるが当たらない。


「何かしれないが、遅すぎんだよ!」


 ルイカが勝ったと思われたその瞬間!


「ドカーン」


「……」


 観客は爆風で前が見えなかった。


「(マリカの爆弾ってこんなに強かったか?)」

[……]



 すると、スタジアムには一人立っている。そして誰かが倒れている。


「勝者マリカ! マリカはA組に昇格です」


「(えぇ……)」

[何かが起きましたね……]


 実はそう、ルイカの魔法は油であったのだ。油を使って滑り、素早く行動していたのだが!マリカの外したと思われる爆弾がルイカの残した油後に着火して大爆発を起こしたというわけであったのだ。


「(こういう運がいいこともあるんだな)」

[やっぱり組み合わせ次第ですよね]


 そう、そしてマリカはA組の座っている位置に歩いて行った。これの衝撃はすごかった。誰もが絶望していた対A組の試験に合格したものがいたためだ。そして、次はついにあのケレンの順番だ。


 ケレンであるということがわかっているということは、A組の方もわかっているということだ。そのために、スタジアムにはすでに二人が揃った。


「それではA組負け組、B組勝ち組の最終試験を始める、ケレン対ゴウ、試験開始!」


 二人はまず距離を取る。ケレンは魔機類は特に持っていない様子である。対して、ゴウは相変わらずローブを纏って……燃えた。

「(えぇ!)」


 観客全員が顔を見合わせた。そうだ、燃えたのだ。ローブが燃え尽きた。するとゴウの顔が露わになった。彼は赤い髪をした美顔の少年だ。


「何、あなたもフレイみたいにエンタテイナーなのね」

「おぉ、君は話さない子かと思ったよ」

「そう?」

「まぁ、一つ言っておくと、僕は強い人に当たるために負けたんだけど、楽しませてくれるといいな」

「そうね、私もよ、そのために勝ったわ」

「そうか、なら面白そうだ」


 ゴウはフレイのような見かけの炎ではなかった。ゴウが炎を増すたびに、地面の土は揺れ、吹き飛んでいった。


「(こいつは強いな)」

[そうですね、千度以上はありますね]

「(だけどケレンは俺に勝ったんだぞ)」

[何のご冗談を、あのパンチでですか?]

「(お前までバカにすんのかよ)」

[……]


 ゴウは堂々とケレンの方に歩いていく。

「そういえば、お前可愛いな、その羽も使えるのか?」

「さあどうでしょうか」

「俺が勝ったら付き合おうぜ」

「ええ、いいですわ」


 その会話を聞いて輝は一人慌てていた。

「(おいおい今のなんだよ、強けりゃ誰でもいいのか?)」

[勝つ自信があるということではないでしょうか?]

「(そうか……)」



 そして、ゴウが動き出した。輝ほどの速さではないが、かなりの速さでケレンに向かっていった。


「よし、やったるか!」


 しかし、ケレンはまだ様子見といった様子で特に焦った様子もなかった。


「(クールだな)」


 そう、そしてゴウが近くまできたとき、ようやく動き始めた。ケレンは進む前に凍るを作り出し、滑っていっている。


「おぉ、氷使いか!」

「……」


 ケレンは無視して逃げてゆく。


「だけどこれじゃあ遅いな」


 そういうとゴウは勢いよく炎を体からではなく、足元から出した。すると、ロケットが発車するのかのように、ケレンに一気に距離を詰めた。


 ケレンは同じ速さでいってはいるがこのままでは追いつかれると思った時、ケレンは後方に氷の礫を繰り出した。その礫はゴウに向かっていくが、どれもゴウの目の前に溶けていってしまう。


「運が悪かったな」

「……」


 すると、カレンは氷で右手に武器のようなものを作り出した。


「おぉ、直接対決か?」

「……」


 ゴウの調子のいい一方通行の会話が続く中、ゴウはさらにスピードをあげた。


「ちょっと右腕はもらうよ」


 そういうと、ゴウは手に纏わせた炎でケレンの右腕を切り取った。


「(おいおい、容赦ないな)」


 しかし、ゴウは知らないがケレンの右腕は氷でできている。すぐさまに、ゴウの握った腕と武器は溶けていった。


「おぉ、これも氷細工だったのか!?」

「……」

「って、もしかして体全体が氷とかないよな」


 ゴウはケレンから少し距離をとって炎を一旦止めた。ケレンも止まった。ゴウは少し休憩しているらしく、対してケレンは右腕を創造していた。


「すげー、やっぱ再生もできるんだな」

「……」


 すると、ゴウは再び動き出す。


「そろそろ茶番は終わらせて終わろっか」

「……」


 そういうと、先ほど以上の速度でケレンに急接近した。誰もが終わりを予感した。


「(ケレン逃げろ!)」


 しかし、ケレンはびくともしない。


「ケレン逃げろ!!」


 輝は大声に出して言った。

「(やべ……)」

[これは恥ずかしいですね]

「(いちいち言わなくていいんだよ)」


 ケレンはやはり動かず、どうやらゴウと正面で対決するように立っていた。

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