第四話 初めての食事
第四話 初めての食事
輝は中通りに出ると、中通りからさらに大通りとは反対側に伸びた路地を通って小通りのような道に来た。そこには多くの人の家がありどれも一軒家だ。輝は小通りを進んでいき、日も暮れて来た頃、輝は食堂についた。
[“ルーマストーマス”ルーマス料理専門店]
「(おぉ、トク正解じゃん!)」
輝が入店すると、毎度ながら濃い緑色のローブを羽織った店員が応対した。
「いらっしゃいませ、何名様でしょうか?」
「一人です」
「それではこちらにかけてください」
輝が座るとその店員はコップに入った水と一緒にメニューを持って来た。実は水を飲むのも二日ぶりだ。その辺りのサービスは日本と同じようである。
「ありがとうございます」
「お決まりになったらお呼びください」
「はい(トク早く読んでくれ)」
[はい、ルーマスライス、ルーマスフライ、ルーマスチキン、ルーマス……]
「(もういい、強制終了だ)すいません、ルーマスライスとチキンをください」
「はい、ルーマスライスとチキンですね」
数分経つとお皿に乗って食事が来た。お皿にはご飯と唐揚げのようなものがある。また、フォークとナイフが机の上に準備された。
「以上ですね」
店員は奥に入っていった。そして輝がフォークとナイフを使ってチキンを口にした。するとチキンの中から肉汁が流れ出て、輝の顔は笑みに包まれた。
「(サクサク、で旨い)」
輝は次にご飯に手を出した。うまくライスがフォークの上に乗らなくて多少大変だったが食べて見ると輝はすぐにチキンに手を伸ばした。
「(マジで美味しい、なんでこんなに客が少ないんだろ?)」
店内には輝以外に他の客は見当たらない。
輝は十分もすると料理を食べ終えた。そして輝は席を立ち会計に向かった。会計の場所には、日本と同じようなレジがある。店員はそれに打ち込んでいるみたいだ。
「二万ハイルにになります」
「二万?(トクいくら残っている?)」
[えっと一万五千七百ハイルですね]
「(四千三百ハイル足りないってか)あのなんでこんなにも?」
「えっと、ルーマスライスは五百ハイルですよね」
店員はメニューと照らし合わせながらいった。
「そして、チキンは一万九千五百ハイルです」
「いや、ここ見てくださいよ」
輝はメニューのルーマスチキンの列を指差した。そこには千ハイルと書かれている。
「はい、これはルーマスチキンですよ。お客さんが頼んだのは」
店員はメニューをめくっていき、ただのチキンと書いてある列を指した。そこには一万九千五百ハイルと書かれている。
「ですが私はルーマスチキンを…」
「いえ、あなたはルーマスライスとチキンをおっしゃいました」
[私もそう記憶してますよ]
輝は自信なさげに俯いた。
「もしかしてつけなんていう制度はありますか?今度残りの四千三百ハイル払うので」
すると店員は奥に入っていった。店員は紺色のローブを羽織った図体が大きい人を連れて来た。
「そんなのあるわけねーだろ!」
輝はその人に溝うちをくらい意識が朦朧とした。そしてその人は店の奥に戻っていった。
「そういうわけなので、これからここで働いてもらいます。あなたには時給千ハイルで働いてもらうので、それではこのローブを羽織ってください。」
「(おいおい今から五時間もしたら、真夜中じゃねーか)」
輝は渡された濃い緑色のローブを羽織った。
「名前は?」
「テルですが」
「じゃあテルこっちに来い」
テルはその後まさに真夜中になるまで働かされた。皿洗い、テーブル拭き、掃除、材料の準備などなどだ。店員はもともといた店員ではなく、声の低い男の店員に交代していた。輝は色々と思うことはあっても働くことからは逃げられない。
「この詐欺料理店め!」
「なんかいいました?」
「いいえ」
そして輝の仕事は終わり、ローブも元のものに着替えた
「いい仕事ぶりだったぞ」
「あのお金は?」
「仕事ぶりに免じて、六千ハイルやるよ」
輝は封筒からお金をだし、給料と合わせて二万ハイルを出した。
「ちょうど受け取りました、お疲れ様でした」
輝はローブを自身のものに羽織り替え店を出ようとした。すると、店員が輝を呼び止めた。
「テル、ハイルランドに来たばかりなんだろ? 宿はあるのか?」
「そんなんねーよ、この店がボッタくんなければあったかもしれないけどね…」
輝は言いたい放題に店をけなした。
「なら別にいいけど、安くていい宿があったのに……」
「どこだ? いや、どこですか?」
「いくら残っている?」
「千七百ハイル」
「足りるかな?まぁいい、街角のリスナーっていう宿屋がある。店長、トーマスからの名前を出せば宿代はなんとかなるかもしれない。もし仕事が欲しかったらいつでも歓迎だぞ」
「いい情報をどうも(二度とくるか!)」
輝は店を出た。外は真っ暗でぼんやりと等間隔にならんだ街灯が輝に道を記した。朝昼間ともにちょうど良い晴れの天気で温度も少し肌寒い十四度前後であったが、夜も相変わらず気温は変わらないようである。
輝は地図とトクの案内と共に大通りの端くれまでたどり着いた。
[宿屋 リスナー]
「(ここって、アイリスの家の方だよな)」
[……]
「(答えろよ)」
[終了しています]
「(めんどくセーな、オンだオン!)」
[起動します……その通りです、ここをまっすぐ更に端に大通り沿いに進むとありますね]
輝はトクと頭の中で会話しながら、その宿屋に入っていった。宿屋に入ると、毎度ながら濃い緑色のローブを羽織った店員が応対した。
「いらっしゃいませ」
「(女性の声だ!)あの今晩泊まりたいのですが……」
「二千五百ハイルになります」
「あのトーマスさんの紹介なのですが……」
「いくら持っていますか?」
「千七百ハイルですが……」
「んー、わかった、じゃあその千七百ハイル出して」
輝は封筒からありったけのお札を出した。
「はい、千七百ハイルぴったりと。じゃあこれが部屋の鍵ね、一号室よ」
「ありがとうございます」
輝は部屋の鍵を受け取ると、一と書いてある部屋に向かった。宿に入るとすぐあるロービーから廊下が右に伸びており、一号室はその廊下の一番手前だ。
輝は部屋に入るとベッドに飛び込んだ。ベッドは多少小さいながらもふわふわ、よく寝られそうなベッドだ。ベッドの他には特に何もないシンプル部屋だが、窓があり、大通りを見渡すことができる。建物の構造は横長のようである。
輝は起き上がりローブを脱いだ。
「すいません、サービスのパンをお持ちしました」
「そんなのいいのに、ありがと」
部屋を先ほどの店員がノックしている。輝はローブを羽織り直さずに部屋の扉を開いた。すると、店員は少し驚いた様子でパンの乗ったプレートを床に落とした。
「あなたってテルだよね?」
「そうだけど……(もしかしてコロシアムのファン的な……)」
店員はローブを脱ぎ捨てた。
「アイリス!」
「なんでここに……え! どうして」
「ごめん、ここでアイリスが働いているとは思わなくて……」
「もしかしてローブを買うときに助けてくれた?(一様男性の声だったけど……)」
「なんのこと?」
「なんでもない(やっぱり違うか)」
アイリスはローブを羽織り直すとパンとプレートを持って部屋を出ていった。
「おやすみ」
「おやすみ」
輝は久々の仕事で疲れたのか、アイリスがいなくなった途端、睡魔が輝を襲った。




