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異世界でもコツコツ強くなっていきます!  作者: 黒陽
六章 一年最終試験
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第四十八話 格の違い

 第四十八話 格の違い


 まずは第一回戦として、カレン対A組の生徒となった。審判はダルクのようだ。


「それではB組カレン対A組ノアの試験を開始する、始め!」


 A組の生徒ノアはカレンつまり勝負相手と向かい合ってもローブはとらず、かぶったまま戦闘開始の合図が出た。


 ノアは何か魔機を持っているようだが、それさえもローブで隠れている。対してカレンは昨日の短剣ではなく、長いすらっとした長刀のような魔機を持っていた。


 カレンはまず距離をとった。B組見に来ている生徒は皆注目しているのに対し、A組の生徒は誰一人関心を払っていなかった。


 ノアは特に何をするもなく、構えの姿勢一つとっていなかった。カレンは距離をおいた場から風を出した。


「エア・スラッシュ!」


 それをいとも簡単にノアは避けた。


「(おいおい、今のなんだよ?)」

[なんのことですか?]

「(なんか変な技の名前的なの言わなかったか? 厨二病かって)

[あれテルさん、授業は真剣に聞いていたのでは?]

「(なんだよ急に)」

[特定の魔法に名前をつけるとイメージさせやすくて、威力なども上がるとのこですよ]

「(そんなこと言ってたか?)」

[ほらダルク先生がコンストラクトとか言うじゃないですか]

「(確かに)」

[それも言わなくてもできると言ってましたよ]

「(へぇー)」

[本当に何も聞いてないのですね]

「(なんだよ、別に俺とか技っていうかただ熱出すだけ出し)」

[オーバーヒートとかは?]

「(なんだよ、エンストかよ?)」

[まぁいいですよ、ちゃんと見ましょ]


 カレンはその後も何度か"エア・スラッシュ"をするもののすべて避けられてしまった。


 しかし、やはりノアは何もカレンには仕掛けてこなかった。カレンはノア

 に挑発をかけようとした。

「ノアって言ったっけ、やる気あるの?」

「……」

「あくまで黙っているのね」

「それはこっちのセリフ、あんたこんなへなちょこが私に当たるとでも?」

「……」


 却ってカレンが挑発に乗せられてしまった。カレンは彼女の最高速度でノアの近くまで接近し、魔機の長刀を振り下ろした。しかし、ノアには避けるのが容易かった。


「(俺でもあれぐらいはできるぞ)」

[ここからじゃないですか]


 ノアは体制を崩したカレンの腹部を足で蹴った。すると、そのまま宙にカレンが飛んでいてしまった。


「(おいおい、なんだよあの脚力)」


 カレンは宙で体制を直し、風に乗って降りて来た。

「あんたなかなかの脚力ね」

「……」

「もしかしてそれがあなたの魔法?」

「……」

「それとも魔機?」

「……」

「秘密主義ね」

「いいわ、教えてあげる」


 その瞬間、ノアはカレンの目の前にきた。カレンには避けるのも何も準備することができなかった。

「待って……」


 その後、再びノアは蹴った。しかし今回は腹ではない、頭だった。蹴り飛ばされたカレンはそのまま起き上がることなく、病室に運ばれた。


「ノア、A組残留!」


 ノアは大きな声で言った。

「わざわざ負けて強いやつと戦おうと思ったけど、この程度? 笑わせないでよ」


 B組の皆は顔を見合わせた。なぜなら、わざと負けたということは、強者と当たることももちろんあるということであったからだ。


「(俺チャンスあるんじゃね?)」

[弱い人と当たるということですか?]

「(そうだよ、後ノアもスピード系だろ)」

[いやあなたの場合は殴る威力が完全に劣っていますからね、後強い人ほど自尊心が強いためわざと負けるなってことはないとも思いますよ]

「(確かに……な)」


 次にフレイがスタジアムに降りた。対してA組の生徒は突然現れた。気づいたらいたということだ。


「では次に移る、B組フレイ対A組クラークの試験を開始する、始め!」


 フレイは相変わらず昨日のような剣を持っている。そしてクラークは大きな体をして降り、二メートルぐらいはあるだろう。そしてローブを羽織っているのは変わりない。


 フレイはまず全身の炎を灯して戦闘に挑んだ。炎の色は青色、それは彼の中での熱さを表している。

「クラーク、お前のローブごと燃やしてやるよ!」

「……」


 A組は決まって無口だ。


 フレイは火柱でクラークの周りを囲んだ。

「フレイ・ロッド!」


「(おぉ、また技名が)」

[いちいち言わなくていいですよ]

「(いやマジで厨二病って感じだから笑えてくんだよ)」

[集中しましょう]


 クラークは焦る様子一つ見せず、地面に潜って行った。


「(すげー、これは強いな)」


「地面に隠れたってか」

 フレイは焦りながら床を見渡した。だが、どこにも何もなかった。


 フレイはキョロキョロ周りを見渡すがやはり何もない、そしてクラークはどこにもいない。


 すると、地面から出て来た手にフレイの片足が掴まれた。

「ここか!」


 フレイは地面に剣を突き刺すが何も起こらない。

「どうして……」


 そのまま、フレイは地面に引きずり込まれていく。

「おいおい、待てよなんで……」

 だんだんフレイの体の炎が消えていく中、フレイの姿は消えた。すると、地面からクラークが出て来た。もちろんのことまだローブを来ている。


「おぉ、クラークのA組残留決定!」


 クラークはそのまま、地面に潜ったかと思うと、A組の生徒のところへ戻っていた。


 ダルクは急いでコンストラクトを用いて地面に埋まってしまっているフレイを取り出したが、フレイには息がなかった。ダルクは焦って病室に運ぶが後に聞くとフレイは死んだとのことだ。


「(おいおい、これって死ぬこともあるのか?)」

[そのようですね]

「(A組容赦ないな……)」

[怖気付きましたか?]

「(ば、馬鹿言うな、そ、そんなわけないだろ)」

[まぁ時間の問題ですね]

「(お前は俺にどうして欲しいんだよ!)」

[いや、別に……]

「(次が始めるぞ)」


 ダルクが戻ってくた。


「次はスバル対カイだ」


 すると、A組の生徒はスタジアムにいるのに対して、B組の生徒はいなかった。

「おーい、スバルはどこだ?」


 スバルはいなかった。気づけばいなかったのだ。


「スバル! 不戦敗にするぞ」


 この声はすべての部屋にも届いているはずなのにスバルはやはり出てこなかった。


「なるほど……よし、A組カイの残留!」


 何も起こらずにしてA組の勝利が決まってしまった。輝はこのスバルの決断で心が揺らいでいた。

「(おいおい、どうすれって言うんだよ)」

[今からなら別に逃げてもそれほど恥ではないですよ]

「(そうだけど、ケレンはどうすんのかな?)」

[わかりませんね、次がすぐ始まるみたいですね]

「(あぁ、頼むケレン諦めてくれー)」


 ちなみにケレンはまだスタジアムに平然と座っていた。


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