第四十四話 輝の決意?
第四十四話 輝の決意?
「そんな驚くことじゃないだろ! 俺の魔法は知っての通り熱、熱は大気の流れを起こすことができるのは知ってるだろ」
「でも……」
「それでケレンは?」
「部屋にいるわ」
「呼んで来てもらえないか?」
「なんでそんなことを?」
「いや……」
カレンは思い出した様に言った。
「一つ言っておくと、もう彼女あなたのこと好きじゃないからね」
「どういうことだ?」
「私の説得力の力よ」
「何を言ったんだ!」
「そんなの私の勝手でしょ」
「カレン!」
「あと、今回の試験でクラス替えがあるの知っているでしょ」
「あぁ」
「私たちはA組行くから、もうあなたには関係ないってこと」
「俺よりも弱いのにそんなの無理だろ」
「本当に? 私を殴る自信あるの?」
「どういうことだ? (あのトラウマのことは俺とダルク先生しか知らないはず)」
「だったら殴ってみなさいよ、あの灼熱のパンチで」
「……(知らないよな)」
「できないんでしょ」
「カレン、お前何か知ってんのか?」
「何を?」
「俺ができないってことをだよ」
「何を?」
「くそやろう」
「何? 女性に向かって? でもあなたとダルク先生の話しているときにたまたま教室を通りかかったわ」
「お前それを知っていて!」
輝は腕を構えて、熱の力で一瞬にしてカレンの目の前に立った。しかし、殴ろうとした瞬間に魔法が消えた。
「ほらね」
カレンは輝の拳を当たり前の様に捉え、掴んだ。
「くそ」
「殴るときは、法力が一緒でないと」
そういうとカレンは腕をひき、輝を風の力で加速させた拳で殴った。すると、アニメや映画の様に、輝が吹き飛んで行った。
「痛」
「そんな弱い奴はね、ケレンも好きじゃなくなるわ、ザコ」
「けどお前だってとろいだろ」
「速さがいくら早くたって、急に遅くなったらバカでも目で終えるっていうのもわからない?だからバカなのよ」
「言いたい放題だな」
「そうよ、まあいいわ、今日はこれぐらいにしておくわ、あとトラウマ克服なんて諦めることね、今日まででもどうせ何もわからなかったでしょ」
「どこまで知ってんだ!」
カレンは無視してジムを出て行った。しかし、締め切りだという日になっても輝は魔法についてどうも思っていなかった。また、どうすべきかも知らなかった。輝は食堂で朝食まで待つことにした。
「(考えるのには頭使うからな)」
そして、結局朝の七時ぐらいまでまち、朝食のパンを食べ終えると、ダルクに会いに教室に行った。
「おはようございます」
「お早う」
先生はすでに教室にいた。
「最近どうですか?」
「はいっきり言ってつまらないよな」
「そうですね」
「それで決まったのか?」
「いいえ、残念ながら答えは出なかったです」
「じゃあ、なんでここに来た?」
「あの聞きたいことがあって……」
「いいぞ、どうせ暇だし」
輝はダルク先生の前に座った。
「あの、上のクラスに入るためにどうしたらいいのですか?」
「そうだな、まずはトラウマの克服が第一条件だな」
「でも、俺には速さが!」
「いやそんなものは役には立たないぞ」
「役に立たない?」
「あぁ、速いのは当たり前だ。それに加えた何かがいるって事だ」
「魔機とか?」
「あぁ、それも一つだ」
「……」
「他に何かないのか?」
「カレンとか、ケレンが上に上がれる見込みは?」
「なんで他の生徒のことんか?」
「……(好きだからとか言えないよ)」
「これもトラウマからか?」
「……」
「なら問題ないぞ、ケレンの方は却って魔法の幅が増えたしな」
「カレンは?」
「なんだ? 双子の姉まで心配か?」
「まぁ……」
「彼女も速さはお前ほどではないかもしれないが、魔機の扱いも、魔法もなかなかだから、お前よりは見込みがあるな」
「……(そうだったのか)」
ダルクは再び真剣な顔に戻った。
「それで? 魔法を極めるつもりはあるか?」
「はい」
「人を傷つけてもだぞ」
「まぁ、その分誰かを救えるなら……(なんか適当なこと言ってるな、俺)」
「なら大丈夫そうだな」
「えぇ? トラウマの克服は?」
「いや、この問いに答えられるなら問題はないってことだ」
「でも……(なんだそれ)」
「でもって、もしかして適当にそれっぽいことを答えたっていうんじゃないだろうな?」
「……(そうなんですけど)」
「テル、お前な」
「でも一様悪いと思うからには上のクラスに行けるようには頑張りますよ(悪いっていうよりは、好きで振り向かせたいていうのか本心だけどな)」
「それならいいんじゃないのか?」
「今しのぎならね」
「よし、じゃあ一日前になるまで頑張れよ」
「こっそり教えてもらうことは……?」
「いや、私自身も伝えられていないからな」
「わかりました、それでは」
輝は教室を出て、自室に戻った。実際に多少のやる気はあるため、筋トレを一日中行い、ただ殴るだけでも少しは強くなるのではないかという期待を胸に込めた。腕立て、腹筋を始め、懸垂や亜鈴などを用いたトレーニングを毎日続けた。
「(こんなことやってて意味あるのかな?)」
[まぁどちらにせよ、他にすることはありませんしね]
その間、ボビーは魔機の手入れを毎日怠らなかったし、輝がケレンに会うこと、見かけることすらもなかった。
そして過ぎること六日間。
三百六十四日目・ジュン十三日
次の日にはテストだ。それに加え、テストの内容も今日わかる。
輝は珍しくいつも昼まで寝ているボビーに起こされた。
「テル! 起きろ!」
「なんだよ、ボビー」
「今日だぞ、早く行くぞ」
「そんな、って今何時だよ?」
「七時二十分前だよ」
「わかったよ」
輝は起き上がり、一通りの身支度を終え、ボビーと朝食を食べに行った。ここのところ人が集まることが少なかった食堂にはすでに五人集まっており、すぐに全員が集まった。
「お早う!」
「おはよう」
「久しぶりだな」
「ってこんな近くに住んでるのにね」
「おはよう」
今朝食を終え、食べ終えた人から教室に向かって行った。
「ボビーだけじゃなかったんだな」
「そりゃー、今日が明日のテストにかかっているからね」
「そんな内容わかったくらいで何もできないだろ」
「いや、対人戦なのか、対魔機戦、対魔獣戦なんてこともあるからね」
「そうだな(人じゃなかったら俺も行けるかもしれないな)」
[そうですね、あとは祈りましょう]
「(今頃祈っても何も変わらないけどな)」
そして、輝たちも教室に向かって行った。




