第四十話 トラウマの克服大作戦
第四十話 トラウマの克服大作戦
輝はどうすべきかわからず部屋に一回戻った。
「あれテル?」
「ボビー……」
「どうした? 何かあったの? さっきまであんなに張り切っていたのに」
「……特に何も、ちょっと早く行き過ぎたからね」
「僕もあとちょっとで行くからその時に一緒に行く?」
「そうだね」
輝はベッドで寝転びながらボビーの準備を待った。
「(俺はどうすればいいのかな?)」
[思うようにしてみればいいじゃないですか?]
「(でもさ、カレンの言う通りだよ)」
[しかしケレンはそれほど恨んでいたわけでもなかったようでしたよ]
「(それもわからないよ)」
「テル、行くよ!」
「わかった」
二人は教室に行った。扉を開けると、ケレンとカレンが既にいたが他の誰も来てはいなかった。
「おはよ」
ボビーも明るく二人に言った。
「おはよ」
輝も慌てて言った。
「おはよう」
ケレンはテルが来なかったと思い込んでいるようであり、キョトンとした表情をしていた。
「(あれって完全にカレンが勝手にやってるだけなんだよな)」
[そのようにも見えますね]
その日の授業も相変わらず情報を詰め込まれただけであった。しかし全てが無駄であるわけではなく、興味深いこともいうことはあったが、話を聞いている生徒はごくわずかであった。そしてその日もあっという間に過ぎてしまった。
三百五十五日目・ジュン四日
テストまであと十日に迫った。授業はテストまでなく、ジムは常に空いているということが伝えられた。また質問があるのなら教室まで先生に聞きに行くとのことであった。しかし特にすることのない輝は部屋で寝転んでいた。
ボビーは彼の使うであろう魔機のメンテナンスをしていた。
「ボビー、そういえばさ、そういう魔機ってどこで手に入れられるんだ?」
「それは先生に聞いて許可をもらって購入するんだ」
「購入? お金ないといけないのか?」
「いや、十マジク以下なら買ってもらえるし、一年のテストで使えるのも十マジク以下のものなんだ」
「カタログとかってあるの?」
「カタログ?」
「(カタログは通じないのか?)いろんな魔機が載っている本みたいなの」
「あぁ、それ僕持ってるよ、貸そっか?」
「ほんと! ありがと」
そういうとボビーは厚さが彼以上もある本を持って来た。
「これ?」
「そうだけど……驚いたでしょ」
「こっからどうやって探すのさ」
「じゃあ手伝うよ、どうせすることないし」
「ありがと」
二人は輝のべッドの上でカタログを見始めた。
「それでテルはどんなのが欲しいの?」
「金属?」
「メタルのこと?」
「そう、それ」
「って言ってももっと何かないの、武器っているのはわかったけど、メタルの中でも色々あるし……」
「そうだな……」
「じゃあさ、形はどんなの?」
「形は関係ないかな」
「そうなんだ、じゃあメタルについてもっと聞かせてよ」
ボビーはメタル一覧と書かれたページを開いた。
「(トク、これって全部メタルの種類なんだよな?)」
[どうですよ]
「(どんだけあるんだよ)」
[それよりも、どんなメタルかというのはわかるのですか?]
「(そんなこと言われてもな)」
[とにかく何かは言わないと]
「(わかってるよ)硬くて、融点が三千度ぐらいのかな……」
「融点が三千度……」
「(あれ融点って通じない?)そうだけど……」
「このうちのどれかかな?」
ボビーは一覧から二つを指した。
[オスミウムとタンタルですね]
「(知ってんのかよ)」
[いやこれは現実世界の周期表にもあったはずですよ]
「(やっぱお前は頭いいな)」
[いえいえ、あなたが悪いのでは……]
「(勝手に言っとけ)」
しかし輝にはどちらがなんなのかはとんと見当はつかなかった。
「どっちもよく知らないんだけど……」
「あと言っとくと三千度って言ってたけど、この二つ三千度よりちょっとたきんだけど大丈夫だよね?」
「(どうだ?)……」
[そうですね……]
「数十度だけなんだけど……」
「じゃあ、大丈夫かな(かな?)」
「それでね、それぞれ知ってる限りで説明するとオスミウムの方が重いんだけど匂いが体に悪いらしんだ」
「それじゃあタンタルか……」
「だけど、どっちもなんだけど十マジクでは買えないレベルだよ」
「えっ、そんなにするの?」
「そりゃあそうだよ、じゃあ融点のことは置いといて、十マジクで買えるメタルを探してくれない?」
「わかったけど、あるかわからないよ」
「やっぱりメタルは基本高いの?」
「そうだね」
輝は絶望に見舞われた。
「(これって俺の出番はないって感じかな)」
[難しいですね]
「(直で殴らなければ攻撃できると思ったのにな)」
[難しいみたいですね……]
「ボビー、ありがと、今回は無しで頑張ってみるよ」
「ほんとに? メタルとなったら仕方ないけどね」
ボビーはカタログを持って自身の勉強机に戻った。
「(それでトラウマをどう克服するかだね)」
[どうですね、先生に聞いてみては?]
「(じゃあ昼飯の後に聞きに行くか)」
輝は昼食を終えると、教室に向かった。ほとんどの生徒は部屋に戻っていたが、数人の生徒はジムに行ってもいた。
「(頑張ってる奴も多いな)」
[私たちも頑張らなければ]
「(なんで一緒に、みたいな言い方してんだよ)」
[一心同体じゃないですか]
「(気持ち悪いな、お前が勝手に入ってきたんだろ)」
[何を! あなたが私を!]
「(わかったよ)」
輝は教室の扉を開けた。するとダルクはそのにはいなかった。
「(あれ? 教室にいるって言っていたのにな)」
[不思議ですね]
「(ちょっと待ってみるか)」
輝は教室で席に座ってダルクが来るのを待っていた。案の定、少しすると教室に入ってきた。
「おぉ、テルどうしたんだ?」
「ちょっと聞きたいことがあって……」
「いいぞ、なんだ?」
「あのトラウマって知っていますか?」
「それは知ってるぞ、それがどうした?」
「実は私にトラウマがあるそうなのです」
「どんなものだ?」
「法力を使っているときに、他の人に触れようとすると、勝手に消えてしますのです」
「それがケレンを傷つけたトラウマだということか」
「はい、そうです」
ダルクはしばらく考えた。
「それでお前はどうしたい?」
「普通に使えるようになりたいです」
「また人を傷つけることになってもか?」
「……(確かに、もしまた……)」
「そこをはっきりさせてこい」
「でも、どうやって!」
「その答えが試験まで七日の日までに出たなら、お前のトラウマ克服にも手を貸してやるからな」
「はい……」
輝は首を傾げながら部屋に戻って行った。




