第三話 情報屋
第三話 情報屋
正午になり、日も本格的に照り出した。太陽の存在は元いた世界とは同じくあるようだ。地図には輝が現在いる大通り、そして多くの路地が繋ぐ中通りが存在する。その橋には大きな道はない。そして、輝の現在地から大通りをまっすぐ行き、路地を抜けた中通りの片側に情報屋があるようだ。
輝はまず大通りを進み始めた。店の内容がわからないにしても、店をキョロキョロと見るのはテルの心を弾ませた。
「(異世界だーー)」
輝は地図を見ながら路地を通った。路地はボンドが連れて行った地下闘技場があるような通りだが、そこそこ人数は多い。路地のように狭いが路地と呼んでいいのかは定かではない。そして路地を抜け、目の前と大通りほど幅も賑わいもない道にたどり着いた輝は地図と見比べて、目の前にある店に入った。
「(ここが情報屋のはずだ)」
輝は店に入店した。中には濃い緑色のローブを羽織った店員がいた。声は女性のようだ。他には客も店員もいない。
「いらっしゃいませ、どんな情報がご要望ですか?」
「この世界について、かな?」
「はい?このメニューから選んでください」
その渡されたメニューと思われる紙にはもちろんのこと異世界の言語で書かれていたため、輝には読むことができない。ただ四行の記号と数が並んでいるようにしか。しかし実は数の書き方は同じようである。それに従うと、最初の列から、二百ハイル、十万ハイル、千ハイル、そして最後列は数がない。
「(読めねー、なんて書いてあんだよ)すいません、実は読めないのですが……」
「お客様ラッキーですね、ちょうど一つだけ情報を読み取ることができる、つまり読むことができるようになるというものがありましてね」
「もの? はい?」
「2万ハイルです」
輝は理解してないながらも、読めるようになるという言葉を信じて、封筒から二枚の一万ハイル札を取り出し渡した。
「ちょうどですね、それではこちらに来て腰掛けてください」
そこには椅子のような怪しい機械がある。それだけでなく、店員が先ほどから妙に嬉しそうな顔をしているところも怪しさを増幅させた。しかしお金をすでに支払った輝は多少怖がりながらも機械に座った。
「それでは始めますね」
すると店員はヘルメットのようなものを輝の頭にかぶせ、ボタンのようなものを押した。機械から変な音が出た。
「ウゥーん、ギキッキッッギギギギ」
すぐに音が止まった。
「すいませんね」
店員が機械を二、三回蹴るとまた動き出した。
そしてまた音が鳴り始めた。
「ウゥーん、ウーゥーゥーゥーウううウうウゥーーん」
「完了しました、それではお立ちください」
輝が立つと店員は乱暴に機械をしまった。
「そんな乱暴でいいんですか?」
「はい、やっと売れたので」
「やっと?」
「なんでもないです」
そして輝はカウンターに戻りメニューを見た。すると輝の頭の中に情報が流れて来た。というよりは誰かがメニューを読み上げてくれている感覚だ。
「(最新情報・ニュース 二百ハイル/数
個人情報 十万ハイル/数
一般情報 千ハイル/数
その他)」
「三番目の一般情報をお願いします」
「はい……」
店員は少し驚いた様子で対応した。どうやら輝が読むことができていることに驚いているようである。
「数はどのくらいの情報をご要望ですか?」
「数? 全てお願いします」
「計三十万あるので…」
店員は電卓らしきものを取り出して、何かを打ち始めた。
「三億ハイルになります」
「えぇ!!!!!」
あまりにけたの違う金額に輝は驚愕した。
「最低限でも…そんなには必要ないのですが…」
「最低十万はあったほうがいいので、まぁ、それでも一億ハイルですね」
「わ、わかりました、ま、また来ます」
「ありがとうございました、またご贔屓にー」
店を出ると店の看板が読めることに気がついた
「(情報屋、鍛冶屋、宝石店、すげー)」
慌てて地図を出すと、地図上のすべての店の名前が読める、だが結局店の内容を名前に入れていないところもありわからない店も多かった。
「(それにしてもすごいな、どんな仕組みだったんだろ)」
[私のおかげですよ]
「(どこから聞こえるんだ?!)」
輝は周りを見渡したが近くに人がいる気配はない。
「どこにいるんだ!」
輝は大声を出してしまったことに少し恥ずかしがりながら、路地に入った。
[頭の中ですよ、先ほど私を入れたじゃありませんか]
「(頭の中? 先ほど? もしかして、さっきの変な機械か!)」
[そうですよ、先ほどのね]
「(そういえばそれさっきから声発してないのに会話になってる)」
[何を今更、私は読み取り用プログラム、トクです]
「(あんだけ金払わせておいて、こんな邪魔者を……)」
[何を言っているのですか? 私は合計百基のみ発売されたのですよ]
「(この気持ち悪さを味わっている人が他に九十九人も……)」
[いえ、あなたが最初で最後の成功者ですよ。発売されたのに駄作でしてね、販売停止で百基。私があの情報屋に入った日にその情報が入りましてね、誰も買わなかったんですけど……ね]
輝は一人路地で黙々と考えているようにしか他の人には見えなかった。
「(てことは俺って特別! ここにきて、ついに、最強装備的な!)」
[はい、あなたは異世界の人族ですもんね]
「(人族? なんでそれを!)」
[私は読み取り用のプログラムですよ、あなたの感覚からの情報からだけじゃなく、記憶からも読み取ることができますよ]
「(ますますきもいな、どうしたらいなくなるんだ)」
[無理ですよ、あなたの頭の中にすでにインストールされまいしたからね]
「(だからアンインストールを!)」
[だから無理ですって]
「(せめてシャットダウンはできるだろ!)」
[……]
「(もしかしてできるのか?!)」
[わかりました……強制終了……]
「(よし消えたのかな)」
輝は路地から中通り出て次の目的地を決めた。それは食事を食べる場所だ。異世界に来て二日間何も食べてなく輝はものすごい空腹感に襲われた。
「(あぁー、腹減った。そうだ地図を見れば!)」
輝は地図を見開いたが先ほどのように読めなかった。
「(やっぱりトクが必要だな)」
[およびですか?]
「あ!」
周りの歩行者は輝を白い目で見た。輝は恥ながら、また申し訳なさげに路地に再び入った。
「(トク、地図からレストランと思われる店を探してくれ)」
[了解しました。この地図には、ハイルフード、マウラレストラン、あとこれはおそらくなのですが、ルーマストーマスがありますが…]
「(よくわかんないな、トクのオススメは?)」
[私はあくまで読み取り用プログラムですから]
「(わかった、そのルーマスなんたらでいいよ。ルーマスのご当地料理的なのが食えそうだし)」
輝は料理店かもしれない店に地図とトクを駆使してそのルーマストーマスに向かうことになった。




