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異世界でもコツコツ強くなっていきます!  作者: 黒陽
五章 砂漠投獄
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第三十七話 監獄の給料日

 第三十七話 監獄の給料日


 輝は一瞬でレノルドの背後に移動した。

「こういうことだ」

「ヤベーな」

「それで、メタルはないのか?」

「あるよ、これだ」


 輝はメタルを握ると、すぐに塊が柔らかくなった。輝はそれを振りかざした。すると、先が伸びて、針のような形になった。

「変形するってこういうことか」

「そうだ、本当にすげーな」

「それで、そろそろ寝ていいか?」

「あぁ、いいぞ」


 そういうとレノルドは輝の部屋を出た。そして、輝はレノルドのやべーなという声をかすかにきき、そのまま眠った。



 二百五十一日目・フェブラリー八日


 あさが来た。皆は、走って外に出ると、ほとんどの砂ブロックが残っていた。全て出ないのは残念としか言えないが、これはかなりの発展だ。これは同時にテルの熱の魔法が鍵であることも意味をしていた。

「ジジイ!」

「クロ!」

「すげーな」

「カリュウのとこ行くのか?」

「そんな褒めなくても、あとこれからもよろしくね」

「クロ!」


 輝はデブの四つ子と歳食ったジジイと抱き合った。そこにやってくるのはカリュウであった。

「クロってきもい名前だよな! 俺たちの元に来たらテルでいいんだぜ」

「そんなことはどうでもいい」

「本当にいいのか?」

「あぁ」


 周りはざわつき始めた。また喧嘩が始まるのではないのかという皆の不安や期待だ。しかし周りにはレノルドの姿はなかった。最近皆の期待から仕事を熱心にするものが増えたためか、レノルドは一部屋一部屋起こしに行っているようであった。


「やんのか?」

「来いよ(負ける気がしねな)」

[でも体温の方は?]

「(ちょっと試してみるか)」


 輝は魔法発動のために集中力を高めた。カリュウは輝に殴りかかった。輝の法力はまだで準備できておらず、テルは距離をとって、目を閉じた。


「逃げるだけなのか?」


 その時、輝はカリュウの背後に一瞬にして回った。


「これでもか?」


 そして、輝は引いた右腕をカリュウに殴りつけた。


「どうだ?」

「痛くもかゆくもないな?」

「熱くもか?」

「あぁ、ちっとも」

[テル、体温が下がっています]

「(なんで?)」

[殴る瞬間にシュッと……]


「いくら速くてもこれじゃあね」

「なんでだ?」


 そこにレノルドが遅れてやって来た。

「お前らまた何やってんだ?」

「何もやってねーよ、行くぞ」


 カリュウはレノルドの持って来たスピーカーを奪って走って行ってしまった。皆もそれに続くように走って行った。


「それでテルはこれをどう説明を?」

「何もなかったですよ」


 輝もチームを連れて行った。そして先頭に有に間に合う速さでレノルドは輝たちを抜かして行った。


 そして無事朝食も終わり、仕事の時間がきた。テルはまたどのブロックにも法力を送っていった。皆はそれを運びの繰り返しだ。その結果もあり、皆はピラミド作りに本格的に乗り出したのであった。



 二百六十二日目・マーチ一日


 大量のブロックが運ばれ、積み重ねる砂上に入り始めた中、始めての給料日が来た。この給料は監獄のお金ルクスで支払われるもので、お札というよりはコインのようなものであった。ルクスにはゴールド、シルバー、ブロンズがあり、価値はブロンズ十枚で一シルバー、シルバー十枚で一ゴールドといった形だ。ゴールド一枚払えば好きな電化製品や大きな家具が部屋にもらえ、シルバーだと小さな家具、小物が、ブロンズの価値はほとんどないものであった。


 この日の朝は、レノルドは全ての部屋に回り給料を渡していった。


「来てるよな」


 レノルドの足音が近づいてくるのを待ち受けるテルは、扉が開いた時、レノルドに飛びついた。


「そんな焦るな、じゃあこれな」

「ありがとうございます」

「あと今日はランニングはないから、そのまま朝食に来てくれ」


 輝は白い封筒を渡され、レノルドは去っていった。


「(よっしゃー)」


 輝は早速封筒を開けて取り出した。すると、そのには二つのゴールドルクスと、三つのシルバールクスが入っていた。また添え書きで、もっとも頑張ったためにゴールドルクスが追加されていると書かれていた。


「(てか、これって多いのか……)」


 外に出ると皆が嬉しそうに白い封筒を手に持っていた。デブ四人もジジイもいる。


「ジジイ!」

「おぉ、クロか、嬉しそうだな」

「それはそうだよ!」


 すると、デブ一が給料について話し始めた。

「クロはいくらもらったんだ」

「ゴールド二枚とシルバー三枚だけど……これっていいのか?」

「いいも何も、ゴールド二枚ってなんだよ!」

「デブ一はどうだったんだ?」

「俺たちはみんなシルバー三枚だぞ」


「お前らの給料はどうだったんだ?」

 そこにカリュウがやって来た。


「お前には関係ないだろ」

「どうせシルバー数枚だろ」


 カリュウは鼻で笑いながら食堂へ向かっていった。その時、輝はカリュウに言い放った。

「ゴールド二枚とシルバー三枚だけど、カリュウはどうなんだ?」


 カリュウは振り返った。

「ゴールド二枚って言ったか?」

「あぁ、それでどうなんだ?」

「よかったな初給料」


 そういうとカリュウは歩いて去って行った。


「なんなんだ?」

「クロよりも少なかったってことじゃ」

「あのカリュウが……」


 朝食を済ませると買い物の時間に入った。カタログのような本には様々な商品が乗っておりそこから購入するようであった。輝は早速、ゴールドルクス二枚でダブルベッドを購入した。他にも、カリュウのもつテレビなどの選択肢もあるなか、輝はそれを選んだのであった。


[なぜ他のものではなくて]

「(やっぱり寝るのが全てだからな)」

[それにしても……]

「(いいだろ)」

[まぁ……]


 仕事の時間になると皆は外に出て、積み重ねる作業に入った。何人係でも持ち上げることはできず、結果的に傾斜を使った運び方が始まった。輝も熱処理を終わらせて、ジジイとデブ一に加わり、以前の組み合わせに戻った。


「久しぶりに一緒にするな」

「鈍ってないだろうな、クロ」

「期待はすんなよ」


 傾斜では通常よりも押す作業が大変であったが、輝はレノルドとの秘密の特訓のおかげで法力の操作が上手くなっていた。


[それにしてもなぜ操作が急にできるようになったんでしょうね?]

「(あの変な注射のおかげだろうな)」

[不思議ですね]

「(何かわからないのか?)」

[一つ言えることは、あの注射をすると法力の流れが早くなるということですね]

「(やっぱり法力の仕組みとかを学校で学んでおけばよかったな)」

[一度でも目に通していれば私が]

「(トクには頼りたくないけどな)」


 輝は皆とともに砂のブロックを押し運んでいた。

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