第三十六話 ケアキの居所
第三十六話 ケアキの居所
部屋に戻った輝は自分のせいでケアキを死なせたのでなはいのかという罪悪感が輝を苦しめていた。しかし、いくら考えてもどうすることもできず、気付いた時にはすでに仕事の時間であった。レノルドの呼びごえに、輝は真っ先に扉を開け、飛び出て行った。
「元気あるな」
輝は砂漠に出ると、朝のランニングコースを走り始めた。しかしどこにもケアキの様子はなかった。輝は探しに探し、探し回ったが結果は無であった。輝は諦めて、デブいちと一緒にブロックを押した。ビクとも動かないために、結局はデブよんも協力した。その日もブロックは積み上げずに、グループごとに分けた。どちらもたった四つずつしか運べず、ジジイのありがたみを輝は噛み締めた。
「ジジイ本当に行くのかな?」
「行って欲しくないけど、本人が行きたいのなら仕方がないよな」
「でも……」
その日の仕事を終え、皆が部屋に戻ったように思えた。しかし誰かがいなかった。
「おい、クロはどこだ?」
「トイレじゃないのか」
「でも夕食の時間にか?」
「まぁ、いいじゃねーか、あいつも疲れてんだよ」
皆は部屋に戻り、レノルドはケアキのことを教えたことを悪く思い、輝の部屋にその日は行かなかった。
二百四十九日目・フェブラリー六日
次の日、レノルドは輝を探し回っていた。ケアキのことを謝ろうと思ったが遅かったのだ。
「テル、どこだ!」
しかし輝はどこにもいなかった。皆も起きはじめ、朝のランニングのために外に出た。すると、扉の前に、輝とケアキがいた。
「テル!」
レノルドは心配した様子で、二人を中の病室に連れて行くと、皆には仕事をするように言った。
「今日は、仕事が先だ! 早く取りかかれ!」
皆は困惑した様子で、仕事を始めた。そしてその日も、輝のいたグループのみの砂ブロックが残っていた。
「チィ、ジジイは関係ないのかよ」
「それじゃあ……」
「あぁ、お試しは終わりだ、さっさと自分のとこに戻れよ」
あまりに勝手だがと思いながら、彼らも仕事を始めた。
その頃、輝の方は、かなりの緊急事態であった。大抵はレノルドのおかげで問題ごとは多くないため、医療師もいない監獄であった。ケアキはもう死んでいると思われた
輝は砂を吸いすぎたために、呼吸が困難になっていた。レノルドはあの注射を三本輝にさした。いくら砂でも、超高温となれば、溶けて液体として出てくるのではないのかという方法であった。実際に、輝の体は、レノルドが魔法を使いながら触っても、火傷するほどの熱さになっており、意外にもレノルドの方法は成功した。
輝は、苦しそうにしながらも、だんだんと落ち着いてゆき、レノルドは仕事を確認しに行くために、外に出た。しかし、誰も仕事をしていなかった。皆、話したり、座ったり、寝たりとしたいほうだいであり、誰からも士気を感じることはなかった。
「お前ら何やっている!」
その声を聞いた途端に、ほとんどのものは仕事を始めた。そして、誰にも朝食は与えられなかった。夕方に後回しになった、ランニングは朝にあるように行われ、ほとんどのものは夕食を食べることができた。
輝は熱も下がり、意識も戻った。
「ここは……」
「テル!」
「レノルドか」
「お前どういうつもりだ!」
「どうしたんだ?」
「あの中で息延びられると思ったのか!」
「いや、でもケアキが……」
「残念だが、あいつはもう死んでいるぞ」
「そんなことはわかっているよ」
「じゃあ、なぜ?」
「死体が見つからないわけないだろ、だから探しに行ったんだ」
「そんな無理をして、早く部屋に戻れ」
「はい」
輝を含め、全員が部屋に戻った。そして、輝はすぐに眠りについた。
二百五十日目・フェブラリー七日
今日もレノルドの声で皆が起きる。そして、皆が外に出た。すると、砂のブロックは一つも残っていなかった。
「どうして……」
「わからないのか? 今までジジイたちのグループだけが残っていなくて、昨日だけが残っていない理由が」
カリュウが演説し始めた。
「クロか」
ジジイが声を漏らした。
「それしかないだろ!」
「俺!?」
「そうだ、お前何か魔法使ってんじゃないのか?」
「いや特に……」
「お前の魔法はなんなんだ?」
「熱の魔法だけど……」
「何度だ?」
「いつも違うけど……」
「もしかしたらだが、砂のブロックは熱によって硬くなるのかもしれない。そう思わないか?」
「もしかしたら……」
「じゃあ、あのクロが鍵だってことか?」
皆は話し始めた。
「そこで提案なんだが、俺たちのところに来ないか?」
「いや、断る」
「お金もらえんだぞ」
「いや、そんなことはどうでもいい」
「本当にいいのか?」
「そう言ってるだろ」
「これは、質問じゃない、強制だってこともわかんないのか?」
「強制? 人に強制される覚えはないんだけどな」
「舐めた口を!」
カリュウは輝に殴りかかった。しかし、輝はいとも簡単に避けた。
「(なんか、違うな?)」
[体温が上がっていますよ]
「(えぇ? どうして)」
[わかりませんけど、ほんの少しだけ]
カリュウは次々に攻撃を繰り出していくが、輝は全てを避けていく。そして、その時、カリュウは背中という、輝の大きな隙を見せた。
「(いける)」
次の瞬間、レノルドが止めに入り、二人は本当の喧嘩両成敗、朝食を抜くことになった。しかし、二人ともがランニングには参加した。
朝食の時間、輝はジジイに少し分けてもらった。
「ジジイ、いいのか?」
「いいよ、このくらい。それよりクロは強いんだな」
「そんなことはないよ、ただ最近なんかが違うんだ」
「そうか、よかったな」
「まあな、今日も頑張ろうな」
そういうと、皆が部屋に戻って行った。そして、いつもの仕事の時間がきた。しかし、毎日が同じであった前と違い、皆にも士気があった。輝は積み重ねる係を言い渡され、全てのブロックに法力を送って行った。輝はブロックを押していた頃以上に疲れ、夕食を食べると、すぐに寝付いた。
そして、真夜中にレノルドが訪れると、輝を叩き起こした。
「テル!」
「もう少し」
「起きろ!」
輝は目を開けると、レノルドが目の前にいた。
「あぁ!」
「やっと起きたみたいだな」
「今日もあるのか?」
「昨日なかっただろ」
「でも……」
「今日はお前の好きな注射もあるぞ」
「いや、待て、それは……」
「悪いな」
レノルドは輝の腕に注射した。
[体温が上昇しています……三千度!]
「えぇ!」
「どうした?」
「三千度だってよ」
「なぜ他人事のような言い方をしてんだ」
「だって……」




