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異世界でもコツコツ強くなっていきます!  作者: 黒陽
五章 砂漠投獄
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第三十五話 説の検証

 第三十五話 説の検証


 その日、輝たちが外に出ると、全てではないが、いくつかの砂の塊がその形を残していた。

「えぇ!」

「ついにか……」

「よっしゃー」

 皆ははしゃぎまわり、砂を固まる仕事をしている人たちも大喜びであった。これは初めての出来事だったのだ。しかし、不思議であるのは、一日に製造するブッロクは同じ製法のはずが、残っているものと、残っていないものがあったということであった。


「どうしてだ?」

「不思議だな」


 輝はどうにか説を考え出した。

「あの四つの説があるのですが……」

「言ってみろ」

「一つ目は、山に積み重ねるとまわりに守られて中心にあるブロックは残ったという考え方です」

「それはないな」

「なぜ……?」


 すると、ブロックを積み上げる仕事をしている人がやってきた。

「残っているブロックがまばらだからな」

「なるほど……(違うのか)それで二つ目は、運び方の違い」

「というと?」

「運ぶ速度が違うと変わる可能性が……」

「それで三つ目は?」

「成分の違い? 全て砂で作っているとは言っても、砂の成分がまばらだとすると硬いものや脆いものができてしまう可能性も……」

「それならなぜこれが今まで起こらなかったんだ?」

「そうですね、ではこれも却下と……」

「最後は?」

「朝の風が弱まってきているっていうものです」

「そんな急に?」

「だからこれは単なる説です」

「どれも仮説だな」

「言ったじゃないですか!」

「じゃあ今日は積み重ねる係は押す係と混ざって、積み重ねずにグループごとに分けていくぞ」

「これは二つ目の仮説の検証?」

「そうだ」

「(信じてくれたんだ)」


 輝、ジジイとデブいちは今日も運び始めた。それぞれ自覚はないものの、昨日よりも運ぶ時間は短かった。そのおかげで一日前の四つよりも二つ多い、六つを運ぶことができ、仕事の時間は終わった。その日の夕食も、肉料理であり、囚人に筋肉をつけさせたいのかと問いたくなる料理ばかりであることに、今更ながら輝は気が付いた。


 その夜もレノルドは輝の部屋にやってきた。

「元気にしてるか?」

「まぁまぁ」

「今日はすごかったな」

「何が?」

「初めてブロックが残ってたじゃねーか!」

「俺にとっては三日目だけどね」

「お前が何かしたんか?」

「そんなことはないと思うけどな」

「それで今日は注射器を持ってきてないから自分で能力を解放してもらうぞ」

「そんなことを言われたも」

「いいから集中してみろ」


 輝は目を閉じ、体に法力を流すイメージを思い浮かべた。

「(なんか、法力の流れがわかるような気がするな)」

[体温が少し上がっていますよ]

「(嘘だろ)」

[いえ、五度ぐらいだけですけどね]

「(これって注射の副作用か?)」

[わかりませんね]

「レノルド、そろそろあの注射のこと教えてくれよ」

「なんか違いがあったか?」

「あぁ、ほんの少しだけ体温が上がった」

「ほんとか」

「そのようだ」

「やっぱりすげーな」

「何の話だ?」

「いや何も、今日はもういいぞ」

「もう!?」

「あぁ」


 すると輝はすぐに眠ってしまった。自力で法力を流すのには疲れが伴うことを恐れながら彼は知らなかった。


 二百四十八日目・フェブラリー五日


 次の朝、皆はランニングの際外に出て時、ブロックの確認に行った。いつもはブロックの場所までわざわざ見にいくものは一人もいなかったのにだ。

「おい」

「また!」

「誰のだ?」


 それぞれのグループに分かれている中、ある場所だけに残っていた。それは、輝、ジジイ、そしてデブいちの六つであった。

「ジジイ!」

「クロ!」

「デブいち!」


 三人は抱きしめあった。

「でもなんでだ?」

 デブいちは不思議そうにしていた。

「ジジイの魔法のおかげじゃないのか?」

「そうなのか、ジジイ?」


 ジジイはしばらく考えていた。

「いや、輝が来てから変わったんだ、輝に何かがあるはずじゃないのか?」

「でも俺は何も……」


 三人とも何もわかったいなかった。そこにカリュウがやって来た。

「ジジイ、俺たちのグループに入らないか?」

「いや」

「俺たちのところの方が稼げるぞ」

「それは問題ではない」

「本当にいいのか?」

「あぁ」

「勝手にしろ」


 カリュウは走りに行ってしまった。その後、ジジイは何かを考えている様子であった。しかし実際に、カリュウのところにジジイが行った方が、ピラミドの完成が早くなることは間違えなかった。

「ジジイはなんで?」

「俺たちのことを考えているんだな」

「なんか悪いな……」

「仕方ないだろ、今は放っておけよ、クロ」

「そうか……」


 走り終えて、いつも通り朝食を終えたが、ジジイはまだ考え事をしていた。

「デブいち、そろそろ何か言った方が……」

「でも何を?」

「任せておけって」


 そういうと、輝はジジイに話しかけた。

「ジジイ」

「おぉ、なんだクロか」

「そのカリュウのグループに入ることなんだけど……」

「私もちょうどそのことを考えていたんだ」

「一回試して見たらどうかな」

「試す?」

「そう、もしかしたらジジイの魔法が関係ないってこともあるかもしれないし、その時は俺たちもそのまま、ジジイを向かいいれれるだろ」

「だが、もし……」

「その時はその時、今は一回試して見て」


 そういうとジジイは何かを決心した様子で、カリュウと所へ行った。

「カリュウ」

「なんだ、ジジイか。入ることにしたのか?」

「今日一日試して見ていいか?」

「試すってどういうことだ?」

「もしかしたら私の魔法なんて関係ないかもしれないだろ、だから試すのもいいんじゃないのかと思って」

「そうだな、その方が、使えなかった時も切り捨てやすいし」



 そういうと、彼らは一緒に部屋に戻って行った。

「デブいち、これで良かったのかな」

「わからないけど、これがジジイのためにもなるだろう」

「でも俺たちはどうする?」

「お前がこの前、誘って来たやつにでも頼んでみたら?」

「この前……?」

[ケアキのことじゃないですか?]

「あぁ、ケアキ!」

「どうした急に?」


 輝は周りを見渡したがケアキの姿は見つからなかった。そこにレノルド

 が皆を部屋に戻しに来た。

「レノルド!」

「どうした、朝から騒がしいな」

「ケアキのことなんだけど……」

「あぁ、あいつのことか、一昨日から姿がないんだ、朝にどこかに行ったってことが考えられるがな」

「それで……」

「だから生きているかも死んでるかも知らないが、朝の風がある時点で、のたれ死んでいてもおかしくないけどな」

「そんな……」

「いいから、部屋に戻れ!」


 輝はうつむきながら、部屋に戻ってケアキのことを考えていた。

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