第三十一話 天罰
第三十一話 天罰
ケレンは大声で泣くこともなく、ただただ瞳から涙を流した。ダルクは一人のおじいさんと氷を大量に持ってきた 。
「大丈夫か」
「痛い……」
「ケレン!」
「……はい、もうダメ」
ケレンは気を失ってしまった。その後、カレン以外の生徒は全員部屋に戻され、ケレンの方は保健室に向かったよであった。
「(トク……どうしよう)」
[もう後の祭りですね]
「(もし何かあったら……)」
夜の食事の時間になっても、ケレンは現れなかった。カレンの方も目が赤く、よほど泣いたのだろうと思われた。
「カレン、ごめん」
「……」
「(そりゃ無視もするよな)」
「……」
彼女は泣き始めた。輝はどうすることもできず、ダルクに会いにいった。
「先生!」
「なんだテル?」
「あのケレンのことなんですけど……」
「テル、あれはやりすぎだ。実は伝えてはいけないんだけ教えておいてあげるが、ケレンはもうあの火傷した手では魔法が使えないんだ」
「それって……」
「それも、右手、利き手だ」
「すいません」
「俺に謝られてもな」
「会いに行けますか?」
「意識は取り戻しているけど、一人にしてほしいといってたからな」
「そうですか(くそ)」
輝は部屋に戻った。
「(俺のせいで……魔法が……)」
[仕方ないというしかありませんよ]
「それでも……」
輝はその晩寝ることができなかった。そんな真夜中の一時ぐらい、輝は部屋を忍びでて、保健室に向かった。扉をゆっくり開け、中に入った。
「誰?」
「……(起こしちゃったか)」
「カレンなの?先生?」
「本当にごめん」
「テル……気にしないでよ、仕方なかったじゃん」
ケレンは苦笑いをしながら、頬には涙が流れていた。
「あれはどうかしてたんだ……」
「本当に気にし……」
ケレンは体はひくひくと揺さぶり、まともに話すこともできなくなってしまった。
「それで俺に何かできるのかな」
「……」
「(どうしよ、この空気)」
[もう帰ったほうがいいでしょうね]
「ごめんね、寝てるの邪魔して。俺行くよ」
「待って」
「えぇ!? 何?」
「私にキスしてくれる?」
「なんで?」
「私ね、テルのこと好きだったんだ。それでね、実は……」
輝はケレンの方へ近づいていった。
「私のせいであなたに罰があるって、私が寝たふりをしていた時に先生が他の先生と話していったの」
「俺もずっとケレンのこと気になってたんだ」
輝がケレンに顔を寄せてったそんな時、保健室の扉が開いた。輝は急いで振り返ると、そこにはカレンがいた。
「あんた何してんの!」
輝はカレン殴られた。その音で起きたのか、駆け足でダルクがやってきた。
「お前ら何してんだ? あとテル!」
「すいません」
「カレン、違うの!」
「何が違うの?」
「違うの!」
テルはダルクに捕まえられた。
「あれは仕方ないと思っていたがな、これは許されないぞ!」
「何を?」
「自分がけがを負わせた寝ている女の子の寝込みを襲おうなんて」
「違います!」
「じゃあなんだ」
「俺はただ……」
カレンが再び輝を殴り、輝は気を失った。
二百四十五日目・フェブラリー二日
「今日はみんなに悲しいお知らせがある」
その教室には二つの空席があった。皆はざわついている。
「昨日の出来事で、ケレンは治療期間が必要のために、当分は授業が受けられないことと、テルはもうこのクラスにはいないってことだ」
ソウマが手を挙げた。
「なんでテルが?」
「それはこっちの事情だ。それよりも男子は三人部屋のうちの一人がボビーとの同室になることは考えておいてくれ」
「よっしゃー」
そしていつも通りの授業が始まった。
その頃、輝はある部屋にいた。それも暗く寒い部屋であった。
「(ここはどこだ?)」
[私もさっぱり]
すると、扉が突然開き、ごつい黒い髪をした男性が入ってきた。
「お前がテルか?」
「は、はい。あんたは? あのここは?」
「ここは、アビルクス監獄だ。俺はここの主任、レノルドだ」
「監獄? なんで俺が?」
「本当になんも知らないようだな、お前がここにいるのは主に三つの理由がある。一つは貴重なミレーノ族の優秀な娘にけがを負わせたこと。二つ目は、彼女を襲おうとしたこと」
「いやちょっと待てよ、そんなこと……」
「証拠がないからな」
「それで三つ目は?」
「お前は魔法のコントロールを学ぶ必要があるからだ」
「魔法のコントロールを学ぶのなら学校にいたほうが……」
「いや、お前は年上であることだけあった、才能はある。だから皆と同じスピードで学ばなくてもいいんだ」
「そんなことは……」
「とにかくお前には魔法の使い方というものを学んでもらうと同時に、他の囚人のように、働いてももらうということだ」
「でも……」
「でもは無しだ、早速働いてもらうぞ」
輝は部屋からで、広い廊下を通って行くと、大きな開いた場所に着いた。砂漠のような土地は広がっている。太陽は天高く、気温がとても高い。
振り返ると、監獄であると思われる建物が一つポツリとあり、柵も何も無い。
「ここはなんなんだ?」
「アビルクス監獄は砂漠地方アビルクスにある監獄だ。近くには一切の建物はなく、水もなければ、食べ物もない。一度来てしまったら逃げることはできないと言われるほどのな」
「それで仕事は?」
「お前にはブロック運びを頼むことになってる」
そういうと、歳ほどの廊下からぞろぞろと囚人たちがやって来た。それぞれあるものは右へ、左へと向かい何か作業を始めた。
「このプロジェクトはアビルクスにピラミドと言われる四角錐状の建物を立てようというものなんだ」
「(もろピラミッドじゃん)」
「それで仕事は三種類、砂を押し固める仕事、運ぶ仕事、積み重ねる仕事、そして一番大変なのが運ぶ仕事だ」
「それでもすぐできてもおかしくないんじゃ?」
「問題は、毎朝風によって無くなってしまう所なんだ」
「じゃあやる意味が……」
「だから毎日少しずつ製法を変えるなどと完成に近づけることも重要なんだよ」
「つら」
「なんか言ったか?」
「いいえ」
「じゃあ早速ブロック製造場所に行って、そっから運んでもらうぞ」
「はい」
輝は走ってブロックを作っている場所に行った。
「あのどのブロックを運べば……」
「そこにあるやつ全部だ」
「そこって……」
そこには高さがテルの倍以上、幅や重さもとうに運べるいきを押した砂の塊があった。
「これを運ぶんか(無理だろ)」
輝のアルビクス監獄での生活が今始まった。




