第三十話 法力の時間
第三十話 法力の時間
この練習および特訓は半年もの間、毎日行われた。ただただ時間が過ぎてゆき、ひたすらに機力を磨いていった。
まずは、落ちこぼれクラスの方だ。先生の監視下において皆の頑張りが、全体の機力を底上げした。とはいっても、結局とところ個人差もあり、一番頑張ったソウマでさえも、始まった当初のカレン、フレイ程度の機力であった。
対して、輝、カコ、フレイはそれぞれコントロールを身につけて、棒を使った訓練も無事にできるようになったため、実戦形式で棒ではなく、機力を流すと柔らかくなる剣を使った特訓になった。もちろん、これは勝つこと以上に、相手を斬らない、つまり、斬る瞬間に機力を調節することを促進させるものであった。それぞれの、機力も凄まじい勢いで成長してゆき、輝の機力も一点五倍程度にもなった。また、注目すべきは教えるペア同士の関係の向上だ。カコとボビーは、べったりとっくつくほどに仲良しになったおり、輝とケレンもよく話すようになった。だが、フレイとカレンはそれほどうまくいっておらず、言い争いも度々あった。
二百四十四日目・フェブラリー一日
「よし、今日から法力の勉強に移るぞ!」
「よしゃー」
真っ先に喜んだのは、ソウマだ。あれほど真剣に練習したが、やはりほとんどのものは法力の方が興味があるようであった。また、ケレンや輝だけでなく、多くの生徒が魔法を隠していることもだいたいわかってきた。
「それじゃあ、まずはそれぞれの魔法を見せてもらう、全員ジムに集合!」
皆はぞろぞろと服を運動着に着替えて、ジムへ向かった。
「では、まずは入学当初魔法が使えるっていってた生徒からな。マリカ!」
マリカは皆の前に立った。そして、手を開くと、
「ドカーン」
爆発した。
「おぉー」
「上出来だ、次! カレン」
「はい」
カレンは目を閉じて前にでた。すると、彼女の周りに風が吹く始め、だんだん速度も早くなっていった。
「すごいな、他に何かできるのか?」
「打つこともできます」
「じゃあこれに撃ってくれ」
ダルクは的を準備した。
「ヒューン」
的の真ん中に穴が空いた。
「よくやった、次はカコだな」
カコは自身がなさそうに前にたった。
「何か物はないですか?」
「じゃあこれを」
ダルクはペンをカコに向けて投げた。カコをそれを受け取ると、それを手の上に浮かべた。
「ふーん、重さは関係あるのか?」
「はい、軽いものほど、高く上げれます」
そういうと、ペンを高い天井にぶち当てた。
「すいません、本来なら落ちてくるのですが、ペンが刺さっちゃったみたいです」
「へぇー」
「人は浮かべられるの?」
カコは自身の体を地面スレスレのやっと浮かんでいると分かるぐらいに浮かべた。
「いいぞ、次はフレイ」
フレイは堂々と前に立ち、身体中から炎を出した。口から吹き、手からだし、ファイアーショーのような腕前であった。
「なるほどな、それは温度どのぐらいだ?」
「わかりませんが…」
「ちょっと待ってろ」
ダスクはジムを出てゆき、温度計を持って帰ってきた。
「フレイ、炎を出してくれ」
「はい」
「六十二度とか、全然高くないのに炎が出るんだな」
「もっと高くできますよ」
「やってみろ」
フレイは、右手を出し、その上にのみ炎を出した。それは先ほどのような、赤い色ではなく、青色であった。
「おぉ、これでも三百度か、まぁ色の方は不思議だがいいだろう」
「はい」
「それで、ボビーは使えないんだよな?」
「はい……」
「他に生徒で、使えるけど隠しているやついるか?」
誰も反応しなかった。
「一つ言っておくが、隠したっていいことないぞ! その分早く実戦に入れるからな」
「先生!」
ケレンが手を挙げた。
「試してみていいですか?」
「自身がなかったのか、いいぞ」
ケレンは手を開いた。すると、冷気のような、白い霧が現れそこには、氷の礫があった。
「ほぉ、氷か、よくやったぞ」
「カッス」
ソウマは相変わらず、冷たい。
その瞬間、その礫はものすごいスピードでソウマの方へ飛んでいった。
「ケレン!」
カレンの声は遅かった。
「コンストラクト」
ダルクはジムにソウマの前に壁を作り礫を防いだ。
「飛ばすこともできるんだ、よし戻っていいぞ」
「すいません」
「いいんだ、それよりソウマ、お前は隠しているっていったよな、見せてもらおうか」
「わかったよ」
ソウマは皆の前に出た。すると、突然姿を消した。
「どこだ?」
皆は辺りを見渡すと、元の場所で座っていた。
「瞬間移動か?」
「似てるけど違うな」
「じゃあなんだ?」
「俺は十五秒前にいた場所に戻ることができるんだ、それだけだ」
「なるほどな、じゃあ直接対決に向いているな。その秒数は変えられないのか?」
「できたら困らねーよ、今の所は。あと自分の位置だけだからな」
「すごいじゃないか、他にいないか?」
「はい」
輝は手を挙げた。
「テル、前にこい」
輝は皆の前に立った。
「(どうしよう、ちゃんと使えるかな)あの使えるかはわからないのですが……」
「いいからやれって」
[私には何もできませんが]
「(じゃあ、黙ってろ!)」
[わかりましたよ]
何もせずして数分が過ぎた。
「テル? どうした?」
「先生! あいつは使えないんですよ」
「ソウマ黙ってろ!」
「テル、魔法使えないのか?」
「使えます」
輝は小さい声で言った。
「なんて言った?」
「使えます!」
「じゃあ、使ってみろ」
皆の目線は冷たく、あるものは話し始めた。
「テル、使えないなら戻ってもらうぞ、自分を辱めるだけだぞ」
「(恥ずかしいよ、だけど今戻ったらもっと……)」
輝は座っていた場所に歩いて戻った。ソウマは笑い、皆も笑いを堪えている。
「テル、大丈夫だよ」
ケレンは輝を励ますように、背中をさすった。その時、
「あっつ!!」
「どうした?」
ダルクはケレンの元に向かった。すると、カレンの手は火傷し、皮が剥がれてきていた。
「どういうことだ?」
ダルクは温度計を輝に当てた。
「おぉ! 千度だ!!」
実は、恥から、テルの体は高熱になっていたのにも関わらず、トクは黙っていたのだ。
「お前、使えるんじゃねーか! それよりも、ケレン? 大丈夫か?」
ケレンは手を自身の魔法の氷で覆っていた。
「先生、痛いです」
「ケレン、ごめん」
「テルは悪くないよ」
そう言いながらも、ケレンは涙を流していた。
「ケレンちょっと待ってろ!」
そういうとダルクは、急いでどこかへ行ってしまった。




