第二十五話 魔法学校入学試験
第二十五話 魔法学校入学試験
「それでそのおばあさんはあなたなのですか?」
「どうしてわかった?」
「こんな詳しいし、ね」
「信じてくれるのか?」
「まぁ、はい」
「よかったら、ベルトに頼んでくれんか?」
「聞けたら聞くけど、すぐに消えて、ポッと現れるんだ」
「じゃあ、テル、頼んだぞ」
「はい」
「それと……先ほどおっしゃっていた魔法を一時的に無効にするってできるのですか?」
「あぁ、できるとも、私の場合は戻る体がないといかんがね」
「それは、一時的でしかないと?」
「大量に摂取すれば、もしかしたら、完全に解除されるかもな」
「それって」
「でも、本人さえも魔法が使えなくなるじゃろうな」
「そうか……」
「後」
「はい」
「とてつもなく、高いぞ」
「とてつもなくって……」
「鉱石状の物質で、名前は忘れたが、世界でも十グラムしか見つかっていなくてな。あのおばあさんが使ったのでさえ、零点数グラムを水に溶かしたのじゃろうな」
「どんぐらい、いるのかは分かりますか?」
「少なくても、五グラムはあったほうがいいじゃろうな」
「それって、世界の半分の量じゃ……」
「そうじゃけど……」
「分かりました」
「またな」
輝はその屋敷を出て行った。太陽はだいぶん空高くにあり、そろそろ昼の時間であるようだ。
「(世界ある半分ってどんだけ高いんだよ)」
[見つけるという選択肢もありますけどね]
「(絶対そっちの方が大変だろ)」
[分かりませんよ]
「(それで、まずはギルドに戻るか)」
[道がわからないと言いたいのですよね]
「(そうだけど、なんだ!)」
[そこを左です]
輝はドレアニクのギルドに戻った。 扉を足で蹴って開け、中に入って行った。
「どこ行ってたんだ?」
「えぇ?」
そこにはミサンガが椅子に座っていた。
「なんでここに?」
「今日も何かしたわけじゃないだろ?」
「まぁ」
「はっきり言ってここに仕事とはない」
「だから……?」
「行くぞ」
「もしかして、魔法学校かなんかのこと……」
「あぁ、ちょうどそろそろ入学シーズンのオーガストだからな」
「オーガスト? (八ヶ月のことか?) 今は?」
「そんなことも知らんのか? オーガストはハイルランドでは八ヶ月かなんかだったな。それで今日は、ジュライつまり七ヶ月の二十九日だ」
「なるほど」
「てことは、ジャニュアリー、フェブラリー、マーチ、エイプリル、ジュン、ジュライ、オーガスト、セプテンバー、オクトーバー、ノーベンバー、ディッセンバーってことか?」
「長くどうも、そういうことだよ! 特に荷物もないだろ?」
「まぁ、はい」
「なら行くぞ!」
輝は外へ出た際には、気を失っていた。
「(あれ……)」
ミサンガは輝を抱えて歩き出した。
六十二日目・ジュライ三十日日
輝が気を取り戻した時、彼はベンチに寝転んでいた。
「(どうしてここに? ここって?)」
「やっと起きたか! ここだぞ」
そこは多くの人で賑わっていた。大きな門があり、その背後には五つの城の天守閣が見える。
「ここが、魔法学校?」
「そうだ、魔法界学法都市ジクール、魔法界の魔道士専門学校だ」
「でもなんで俺が……」
「お前はバカすぎんだよ! 学び直してこい」
「(こっちに来て勉強かよ……)」
「じゃあこれを渡す」
輝は紙を渡された。そこには入学試験と書かれており、共に千マジクとも書かれていた。
「入学試験? 千マジク?」
「そうだ、これに落ちたら千マジクは無駄に、残っても、毎年生き残らなきゃならない、実力のある奴だけが残る究極の学校だ」
「あぁ、そう」
「じゃあ、行って来い」
輝はトボトボベンチから起き上がり、門に向かった。そこには、門番 のような人物が数人立っていた。
「紙を見せたまえ」
「はい」
輝はミサンガに渡された紙を渡した。
「じゃあ、進んで右側にある建物に入ってくれ」
輝は門を通って行くと、大きな城が五つ並んでいる。輝は右側にある最も規模の小さい城に入って行った。中はホールのような大きな作りになっており、椅子が無数に並んでいる。席もほとんどなく、輝は泣く泣く先頭まで行き、そこにあった椅子に座った。
少しすると人、ホールはいっぱいになっていた。総勢二千人以上いるだろう。すると、五十代前半ぐらいの紫色の髪の女性がホールの前にある、ステージに出て来た。
「新入生の皆さん、こんにちは」
「こんにちは」
声がまばらに聞こえた。
「それでは、入学テストを開始したいと思います。」
「オォー」
皆は盛り上がり、中には悲しそうに黙っているものもいた。だが、輝のように何をしてようにかわからずおどおどしているものはいなかった。
「それでは、後部座先の人から順番に来てください」
一人一人並んで進み始めた。ステージの上でその女性と向き合って、合格と言われたものは先に戻り、不合格者は別の部屋へ行くようであった。しかし、その女性は何をしているかわからず、ただステージにいる人物を見つめるだけであった。
「合格!」
「不合格!」
「不合格!」
完全に不合格の割合が多かった。輝は自分のぶん、それも当分来ない出番を待ちながら、別の人の話を盗み聞きしていた。
「あの女誰だよ?」
「お前知らないのか? レディールルだぞ」
「あのレディールル! あんな老けてたなんてな」
「それでも本当なんかな、あの人の魔法が法力、機力、筋力、知力とかが一度にわかるらしいぞ」
「すげー、でも信じられねーな」
「そうだな、お前受かるといいな」
「お前もな」
輝は勿論のことレディールルなど知ることはなく、ただ彼女は力を見透かせることを知った。
「(受かるかな?)」
ちなみに、ホールにいる人々はそれぞれ人種が違った。人族とエルビーがやはり多いが、そのほかにも鱗のあるものや、羽のようなものが生えたものもいた。
この入学試験は、一人あたり一分程度かかっていた。ここに二千人がいるとしても、二千分以上つまり33時間を超えている。一日以上待たなければならないことを意味していた。勿論のこと、試験に受かったものは席で寝ており、輝も最前列まではかなり時間があったために、寝ることにした。
六十二日目・ジュライ三十一日
輝が目を覚ました時には、日がすでに登りきっていた。また、試験もまだ続いていた。
「おいおい、知ってるか?」
「もし不合格だったら、魔法を消されるらしいぞ」
「そんなことできるのか?」
「知るかよ、それでも受けた奴らのほとんどが魔法使えなくなったらしいよ」
「ますます落ちれるかよ」
輝まであと十人であるため、輝は列に並んだ。テルの後ろには数人が、前には十人程度いる。そんな中で、レディールルが倒れてしまった。すると、スーツを着た男性が現れた。
「レディールルは法力切れにより試験を続けられなくなりました。彼女ほどの腕はないですが、私ボルグスがその役目を受けたいと思います。
皆はざわついた。
「ボルグスって、あの!?」
「やばくね」
「すげー」
その男性は、小さな体つきで、身長も百センチもない短身だった。顔つきは、四十代のおっさんといったところで、髪の色も黒色だ。
ちなみに、今まで輝が出会って来た人物の髪の色を思い出そう。輝は典型的な黒髪で、ミサルガは黒髪だ。アイリスは茶髪、ライキは金髪、ベルトは焦げ茶色だ。他にも、フィンは金髪、アカリは赤い髪を持っている。おばあさんは年相応の白髪であった。
「私は魔法を使わない、私のバッチを取ることができたら合格だ!」




