第二十三話 ミッションの失敗?
第二十三話 ミッションの失敗?
ギルドに入ってきたのは女性であった。見た目は同じく三十代前半、体は引き締まっている。顔も美しいと言ってもいいが、自身のことをあたしと呼ぶのとや、胸がまな板であることは減点対象だろう。
「そんなやつは入れさせないよ」
「アカリ、お前仕事は?」
「そんなのやってられないわ、テルとやら、さっさと出て行きなさい」
「そんな急に……」
「アカリ、俺たち三人だぜ、あと俺一様リーダーだぞ」
「あんたは暇だからでしょ、フィンも私も忙しいだけだからじゃない」
「……」
「それでもさ、副リーダー。テル君はベルトの弟子なんだよ」
「だから嫌なんじゃない、あと副リーダーって呼ばないでよ、フィン」
「アカリ!」
「二人とも黙っていて! そしてあんたはさっさと出て行って」
「*さっき三人で創設したって言っていただろ、それはベルトさん、アカリ、そして*」
「フィンやめて! もしかして、もう紋章あげちゃってるの」
「あぁ」
「じゃあ、もういいわ。だからその話だけは!」
「わかったよ」
輝はフィンの話そうとしていたことを知りたかったが、あえて聞かないでおいた。
「テル! ベルトは今どこなの? 教えて!」
「知らないんだ」
「知ってんでしょ! 教えて!」
「本当に知らないんだ」
「アカリ、テル君は知らないよ。ベルトのことだから、うまく逃げたんだろうね」
「……」
アカリは座り込んだ。
「私はアカリよ、魔法はコピーそれだけよ」
「コピーって、これも条件稼働系か?」
「そうよ、条件は左手にそのコピーしたいものを握って、右手は空けておくの、するとコピー品が右手に現れるわ。それで、左手を離すと、コピー品が全て消滅するっていう仕組みなの」
「全然使えるじゃん、ミサンガに比べたら……」
「おい、テル!」
「ミサンガ、あんた教えてないの?」
「……何をだ?」
「ミサンガは学校を首席で卒業した、天才よ。そんな彼が皆より一秒長く考えられるというのはね、かなりの違いなの」
「なるほど(まさか頭がいいとはね)」
するとアカリはポケットからお札を出した。
「(十マジクだ)」
それを左手にぎり、右手を空けて置いた状態で、下に向けた。すると、みるみるうちに、お札の山ができた。
「これ使えば大金持ちに!」
「まぁ、そんなに簡単にはいかないけどね」
左手をかけた途端、山は消え去った。
「でも、支払う時に握っていれば……」
「コピー品は魔力の塊なの、だから、魔機を使うと簡単に確認できるのよ」
「魔機って?」
「何も知らないのね」
「アカリ、テル君はH級だ。魔法学校にも行ってないから、仕方ないよ」
「ばかは嫌ね」
「テル君、魔機は、君の使った魔法の地図とか、使用者の機力を使って使う魔法の道具のことだよ」
「なるほど、幾つでも入る魔法のリュックもか?」
「そうだ、よく知ってるな」
「アカリさん、制限はありますよね? 例えば、家や人までは…」
「できるわよ」
「……(えぇ!?)」
「だけど無理なの」
「ん?」
「魔力が足りないのよ、ものの大きさや複雑さによって魔力の消費量が違うの、だから複雑な動植物は難しいのよ。あと一様、教えて置いてあげるけど、魔法を使うときの魔力は法力っていうのよ」
「機力と法力か……」
「ちょっといいか!」
ミサンガが席を立った。
「アカリ、フィン、俺はテルがいくら十七歳でも魔法学校を受けるべきだと思うんだ、お前らはどう思う?」
「いいんじゃない」
「そうですね、ちょっと待ってみてはどうでしょう」
「おぉ、いいな、フィン。一ヶ月、テルに与える。その中で仕事を見つけることができたのなら、ここに残っていいぞ。そうじゃないなら、魔法学校に行ってもらうからな」
「解散でいい?」
「あぁ」
アカリ、フィンは二人とも、ギルドをでて外に行ってしまった。ミサンガは、輝にギルド内を案内した。一階には講堂と一つの部屋があり、二階には五つの部屋がある。それぞれの部屋には、机、ベットのみがあり、トイレ及びシャワーは一階にあるとのことであった。すると、ミサンガもギルドを出て行った。
輝は二階に上がっていき、ベルトと書かれた部屋を見つけた。そこには、何も置いてなかったが、机の上には、紙が置かれていた。
「(なんだ?)」
[読んでみますね
テルへ
ドレアニクにどうにかついたか? 多分、全員一致で魔法学校に送ることになるだろうから、学園生活楽しめよ。あと、全員本当の魔法は教えないだろうから、信じ込みすぎんなよ!
ベルトより]
「(ベルト! これも魔機なのか……)」
すると紙はチリとなって消えた。このメモはおそらく輝が着く前に書かれたものと考えられる。つまりは、ベルトはここに来ていたということだ。輝は不気味に思いながらも、冷水シャワーの後、ベルトのベッドで眠りについた。
「(長い一日だった……)」
六十日目
輝は起きて、用を足し終えると、ギルド内を見渡した。ギルド内には、多くの紙が貼り付けられている板があった。
「(これって全部、ミッション的なやつなのか?)」
[そうみたいですね]
しかし、どのミッションもさえないものばかりであった。
[畑のお手伝い:日給一マジク
店番:日給一マジク
留守番:日給一マジク]
「(全部安すぎんだろ、後こんなつまんないのかよ)」
[そうですね]
「(もうわかんねーから、適当に選ぶぞ)」
輝は板から一つの紙をとった。
「(これはなんだ?)」
[ブーム畑:日給一マジク食事付き]
「(ブームってなんだよ、でも食事付きだからいいか)」
輝はギルドをでた。しかし、どうすれば良いのかわからずに、ギルドの前で人が通り過ぎるのを待つことにした。
「(誰もこないな……)」
輝はそのまま眠ってしまった。
テルが目を覚ますと、ちょうど太陽が空高くに、正午の時間であった。しかし、誰も通った気配もなく、何もせずにいた。
[そろそろ何かをしたらどうですか?]
「(仕方ねーだろ、何もすることないんだからよ)」
そして、日も沈みかけてきた頃、初めての男性が通った。
「すいません」
「悪いな、忙しいんだ」
「(この世界でも結局こうか……)」
また、別の男性が通った。
「すいません」
しかし、無視をして歩いて行った。
「(くそ)」
すると、かなり年の老いたおばあさんがやってきた。
「なんか困っているのかね?」
「まぁ、はい」
「もしかして、ドレアニクの新入りかね?」
「はい、テル申します」
「ほー、珍しいね。それでどうしたいんだ?」
「実は、この紙にある、ブーム畑に……」
「あいつら、何も説明してなかったのか?」
「説明?」
日も暮れてしまい、薄暗い中、輝とおばあさんは地面に座って話し始めた。




