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異世界でもコツコツ強くなっていきます!  作者: 黒陽
三章 ギルド入会
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第二十二話 ギルドドレアニク

 第二十二話 ギルドドレアニク


「ありがとうございました」

「いえいえ」


 案内をしてもらった男にお礼を済ませた輝はギルドの前に立った。扉は大きく少なくても四メートルはある。古臭い音をだしながら扉は開くと、中には教会のように広い天井に講堂のようになっていた。しかし、中心あたりに、椅子一つがあり、それ以外には見受けられなかった。また、その椅子には誰かが椅子に座っていた。


「誰だ?」

「自分から名乗れ!」

「テルだ、このギルドに入りに来た」

「正気か? それとも狂気か?」

「仕方ないだろ、推薦状はここにしか当てられてないんだから」

「うちは十分間に合っているんだがな」

「でも……」


 すると、先ほどの男が扉から入って来た。

「悪いね、テル君」

「(どういうことだ?)」

「リーダーいいんじゃないですか?何も嘘をつかなくても」

「嘘?」

「あぁ、間に合ってなんかいないんだよ、このギルドは」

「魔力切れで来れないやつなんかいらないんだよ!」

「リーダー、話だけでもさ」

「分かった! テル、こっちに来い」


 輝は慌てて、椅子に座っているリーダーと思われる男の元へ行った。その男は、体が大きく、コロシアムであったような男たちと似ている。歳は、案内をしてくれた男と同じぐらいで、三十歳程度といったとこだろう。


「推薦状を見せろ」

 テルは慌ててポケットから取り出した。


「本当にここしかないんだな……分かったよ、フィン」

「フィン? 俺はテルだけど……」


 すると、先ほどの男も寄って来た。

「私がフィンだ。私もドレアニクのメンバーだよ」

「よろしくお願いします」

「こちらこそ」


「俺はドレアニクのリーダー、ミサンガだ。役に立たなかったらすぐに追い出してやるからな!」

「よろしくお願いします」

「あぁ」


 二人以外にはどこにも人の姿は見られなかった。

「他にメンバーいないのですか?」

「俺たちとあともう一人だ」

「えぇ! 立ったの三人!」

「これで、四人だがな」

「何でこんなに……」

「もう一人のメンバー兼副リーダーを見ればわかるよ」

「なるほど(どんな人なんだろ、超怖かったりして)」

「……」


 静かになった。



「そういえば、テル君、本当に入るのかい?」

「はい」

「身分証明書を貸してくれないか?」


 輝はこれもポケットから取り出した。すると、フィンは中身を確認した。

「テル君、君ってH級なのかい?」

「そうだけど……」

「じゃあ、魔法学校は?」

「入ってないけど……」

「歳はいくつかな?」

「十七歳」

「あぁ、ちょっとね……師匠は誰なの?」

「知らないと思いますが、ベルトという男性です」

「何級だ?」

「C級だと行っていました……」

「ふむ、修行にはどこに行った?」

「ダスラン島」

「おい、ミサンガ! こいつ、ベルトさんの弟子だぞ」

「(なんかタメ口だな、さっきまでバリバリ敬語だったのに)」

「失礼、実はベルトさんはこのギルドの創設者の一人なんだ」

「えぇ!」

「このギルドはベルトさん、そして副リーダーと、もう一人によって作られてね、私とリーダーは後で入ったんだよ」

「副リーダーともう一人ね……」

「ちょっと失礼するよ」


 フィンは輝の身分証明書を持って、奥に入って行った。少しすると、すぐに戻って来た。

「じゃあ、これね」


 輝は早速見てみると、何も書かれていなかった裏面に、何かの紋章が入っていた。

「これは?」

「これはドレアニクの紋章だよ」


 紋章は、黒色の龍のようなものが円のようになっており、中心に三つの色の違う点が描かれていた。それぞれ、緑、白、赤色の点であった。身分証明書自体はクリーム色、または薄い黄色なので、色彩がはっきりしていた。


「それでもまさかベルトが……」

「そういえば、ベルトさんの魔法はもちろん知っているよね」

「はい、風の自己稼働系魔法ですよね」

「そうだね」

「自己稼働系? ベルトめ、適当なこと言いやがって」


 ずっと黙っていたミサンガが話し始めた。

「自己稼働系なんてのはないんだよ、すべての魔法は条件稼働系だ。その中でも、自分の意識が条件であるものを特に自己稼働系っていうやつがいるだけだ」

「それでフィンの魔法は?」

「私の魔法はコンタクトの魔法だ。これは遠くに離れていても脳内に語りかけることができるんだ*聞こえるかい*」

「なんかすげー」

「でもこれも条件があるのか?」

「あぁ、半年以内に会ったことがある人物、何か独特の共通点があるの二つが条件だ。この場合は紋章だね」

「へぇー、半年以内っていうのが厳しいね」

「そうだね、そういえばテル君の魔法は何なのかな?」


 輝は少しためらいながら言った。

「俺の魔法は熱魔法、体温を上げることができるんだ。それで、完全に条件稼働系魔法、その時の感情によって発動できるかがかかっていて、その感情の高まり度合いによって熱の温度も変わるんだ」

「どんな感情の時なんだい?」

「恥ずかしみ、つまり恥をかいたときに体温が上がるんだ」

[他は言わなくていいのですか?]

「(いいんだよ)」

「体温が上がるってことは、細胞が死んでしまうとかということはないのか?」

「そう思ったこともあったけど、今までは百度以上でも普通に動けてます」

「つまり、速度、威力共に大幅に上がるのか。体内の栄養素が急激に減ってしまうように聞こえるから、そこが問題なのか」


 フィンは一人で納得したように、うなずいていた。

「(栄養素のこと考えてなかったけど、あの魔法を使うと腹が減るのはこれのせいだったのか)」

[そのようですね]


 最後にミサンガが話し始めた。

「俺の魔法は時間を止めることができる、だから俺だけが動ける時間があるんだ」

「つよ、やばい」

「やばい? まぁいい、だが無論条件稼働系だ」

「どんな条件なんだ?」

「俺はこの魔法をウェイト・ア・セカンドと呼んでいる」

「一秒待てつまり、ちょっと待ってということ?」

「そうだ、時間が止められるのはたったの一秒。しかも十秒以上の時間を空けないと次が使えないんだ」

「連発はできないってことか……」

「そうだ」

「じゃあ、使い物にならないじゃねーか」

「あとちなみに、大気の動き、つまり空気の動きの時間も止まっているから、俺は動けないんだ。唯一できることは考えること、別の人より、一秒だけ長く考える時間があるということなんだ」

「……(全く使えねーじゃねーか)」


 すると、ギルドの扉が力強く開いた。

「あんたたち! 何勝手なこと言ってんの、私のことは話してないでしょうね」

「あたし?」

 輝は急いで振り返った。

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