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異世界でもコツコツ強くなっていきます!  作者: 黒陽
序章 異世界への招待
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第一話 アイリスとの出会い

 第一話 アイリスとの出会い


 一日目


 輝は目を覚ました。死んだはずなのではないかと不思議に思いながらも異世界に本当に来られたかもしれないという期待があった。


「(ここはどこだ?)」


 輝は白いシーツの引かれたベッドの上にいた。ベッドの右には窓があった。窓からはぼんやりと外の風景が見える。人々が道を歩いている。しかし皆ローブの様なものを羽織っている。


 輝はベッドの左側を見るとすぐに驚いた。そこには椅子に座っている女性がいた。それも相当の美人さんが。その女性は寝ている様子だ。


「あの誰ですか?」

「あ! やっと起きた!」

「ここは……」

「昨日道で倒れていましたからね、ここは私の家です」


 実はその女性が輝を看病していた。どうやら異世界に飛んだ際に輝はかなり疲労していた様で、この女性が助けてくれた様だ。


「ありがとうございます」

「いえいえ、そんな。それよりローブを着ておられないところから見ると、あなたは……どこから来ましたか?」

「私は……(日本って言うべきか? でも普通に日本語通じているよな)外から来ました」

「外ですか、なるほど」


 ここに来て輝は目のピントがあって来た。ここで女性の魅力を目の当たりにした。若くて、美人、髪は茶色だ。肌は白色で、何と言っても豊満な胸に目がいってしまう。歳は大学生ぐらいだ。目は透き通った青い色だ。


「私の顔に何かついてますか?」

「いえ何も、それよりここは……?」

「この地名ですか?ここはハイルランドの商業都市ルーマスです」

「(完全に異世界だな)」


「そういえば、あなたのお名前は?」

「(なんていえば…)テルです」

「テルさんですね、いい名前ですね。私はアイリスです」

「(可愛い名前だな)可愛い名前だな(あぁ!)」


 輝は頭で思っていることをついつい言ってしまった。

「(絶対引いてるよな)」

「…ありがと」


 アイリスは顔を赤らめてお礼した。頬はリンゴの様に赤くなっている。

「(マジかよ、超可愛いじゃねーか。年上もいいかも)」


 輝はアイリスにこの世界について聞いてみた。

「アイリスさん」

「‘さん’なんてつけなくていいよ、私もテルって呼ぶから。それで何?」


 アイリスの話し方が変わったことを輝は聞き逃さなかった。確かにかしこまった言い方ではなくなった。

「じゃあ、アイリス、この世界について少し教えてくれない?」

「いいけど…もしかしてこの世界の人じゃないの」

「(これって言っていいのかな)そんな感じかな」

「やっぱり! テルって魔法とか使えたりする?」


 アイリスはこの話になってから目を輝かせていた。異世界について興味がある様だ。

「異世界人って多い?」

「いいえ、本でしか読んだことないけど…それでどんな魔法?」

「(使えんのかな、わからん)使えないかな」

「なんだ、だった出て行って」

「えぇ!」


 輝はなぜか追い出された。テルが使えないと言った途端目の色が戻り、輝への興味も削がれたようであった。

「(現金なやつだな、可愛かったけど)」


 輝は早速一目惚れした女性に振られてしまったのだ。


 彼女の家を出るとすぐ大通りに出た。人々がローブを羽織って歩いている。

「(なんでみんなローブなんか暑いのに、宗教的なやつかな)」


 ローブの色は十人十色、赤茶色もあれば、紺色もあり、緑色、白色もある。


 輝が少し歩いて行くと紺色のローブを羽織った背の低い人が輝に話しかけた。

「兄ちゃん、名前は?」

「(なんだこいつ、勧誘か?)テルだけど」


 その人はローブの頭部を脱いだ。そこには男性の顔があった。特に変わった特徴はない。

「テルか、俺はボンド。根性のありそうだからさ、いい仕事を特別に紹介してやる。どうだ?」

「(これって危ない仕事じゃないよな、でも金いるしな)どんな仕事ですか?」

「興味あるか? ついてくな」


 ボンドは大通りを抜けた路地に歩いて行った。輝は急いで彼について行くと、階段を降りて行った。


 そしてボンドは止まった。

「ここだ」


 そこには地下闘技場だと思われるステージが中心にあり、それを囲むようにして、観客が観戦している。ステージの上には強そうな男二人が戦って降り、決着がついたようだ。男たちはローブを羽織っていないが、観客は色とりどりのローブを羽織っている。

「休憩中、観客コロシアム、勝者ボーズキン、次の挑戦者はいませんか」


 ステージの上にいる審判が叫んでいる。審判は緑色のローブを羽織っている。

「テル、ヤンネーか?」

「(多少は力あると思うけど、ボディービルダーみたいなやつに勝てんのか)……」


 するとボンドは輝の右腕を掴みあげた。

「まぁいいか、審判!こいつ出たいって」


 ボンドは輝をステージの方へと押し出した。輝はそのまま観客の拍手に誘われて、ステージに立った。


「兄ちゃん、名前は?」

「テルです」

「了解。じゃあテル、知っていると思うがルール説明だ。ルールは簡単、素手のみで相手に降参または動けなくした場合に勝利だ。それでは開始するぞ。9連勝ボーズキン対挑戦者テル、ファイト開始!」


 開始早々ボーズキンはテルに向かって走った。ボーズキンは体が大きく、185cm程度ある。腹筋はもちろん、腕も足も太くむきむきだ。服装は、海水パンツのようなものを着て、筋肉を強調している。


 対して輝はキョロキョロで、弱そうだ。服装も普段着である。


 輝はボーズキンが走って着たのに対し、逃げ始めた。力比べでは正気がないと見た輝の少し頭を使った戦法だ。

「ちょこまかしやがって!」

 だが、ボーズキンの体力を奪うどころか、輝はどんどん疲れて行った。逃げる方が体力を消費することを考えない無謀な戦略であったことを意味する。


 そんな時、ボーズキンの左手のパンチ輝に当たりかけた。スレスレで避けた輝はその勢いで愛を滑らせた。転んでる輝はとても起き上がる気力はなかった。


 ボーズキンは余裕の笑みを浮かべ、輝にゆっくり近づいて行った。

「どうやって痛ぶってやろうかな」

「ぶちブリリリいい」


 ボーズキンは左腕で輝の服を剥ぎ取った。服はビリビリにさけ、とても使えるものではなくなった。輝の上半身は丸見えだ。

「次は下だな」


 ボーズキンは笑いながら、左腕を振りかざした。輝はどうすることもできず、ただぼーっと終わるのを待っていた。次はボーズキンによってズボンが破られた。

「ビリリイーー」

「派手な下着着てんだな、勝負下着か?」


 ボーズキンは輝を見て笑った。輝の着ていた下着は輝の好きな赤色のボクサーパンツ、観客も目を覆い隠したり、笑ったりしている。


「はぁはっっっは」

「あいつマジウケル」

「弱すぎだろ」


 輝は今までに味わったことがないほどに恥じた。普段は赤色でない時もあるが、よりによってなぜなのかと多少後悔した。

「(どうしよ、すごい恥ずかしい、みんな見てるし。なんか暑いな)」

「そろそろ終わりにしてやるよ。俺の必殺ボーズキンダイブでな」


 観客は盛り上がって着た。そしてボーズキンは少し離れ、助走をつけて輝の上に飛び乗った。するとその途端ボーズキンは動かなくなった。ピクリとも動かない。輝の肌が赤く腫れていた。

「(痛ってー)……」


 審判はすぐに二人の元にやって着てボーズキンを輝の上から退けた。輝はくらくらとし、審判の顔を見るとそのまま気絶してしまった。だが、ボーズキンは輝に触れた部分が火傷していて、死んでいたため、輝の勝利となった。

「勝者挑戦者テル!」


 しかし輝はこの後のことを何一つ覚えていなかった。

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