第百二話 待ちわびてた物
第百二話 待ちわびてた物
「先生! 私ちゃんと教えていますよ!」
ケレンは真っ先に反応した。
「わかっているわ。やっぱり教えられる女性は美しいわね」
「これでキリも!」
ケレンは嬉しさを顔に表した。その頬を赤くする微笑が輝を惚れさせたのだ。
「それよりも、テルに用があるの」
サクラ先生は輝を嬉しそうに見た。
「は、はい」
「(誰かが会いに来たのか? もしかしてベルト!?)」
輝は個人特訓室から退室し、先生をついて教員室まで行った。
「あの、それで、用とは……」
教員室には特別誰かがきているということではなかった。
「テル! 所持金を確認して!」
「は、はい」
輝は例のイアホンを渡され、E-gameに再びログインした。そして、チェックしたゲーム内通貨額が増えていることに気が付いた。
「えぇ!? 五千イーグ……」
すぐにログアウトした輝は戻って驚いていた。
「これってどういうことですか?」
すると、サクラは嬉しそうに答えた。
「それがね、テルとプレイしてたマルチリストの王様いたでしょ」
「スカーレットのことですか?」
「その彼が、あなたにって!」
「いや? なんで? あの四国戦争はお金を稼ぐためと言っていたのに……」
「それがね、賞によってもらえる賞金が違うのは知ってるよね? あれ、言った?」
「まぁ、それは大体予想がつくけど……」
「それが、彼の賞は一番お金を持っていたプレーヤーだったんだって! だから、彼のコンクが全てイーグになったってこと!」
「スカラはいくら持ってたんだ!」
「それは知らないよ。でも、かなり多いからテルに送ってたんだよ」
「……(これって俺の金を使おうとしていたって言ってるようなもんじゃね)」
「それでね、実はもっとあったんだけど! これを買いました!」
サクラ先生が嬉しそうに見せたのは一つの箱だった。どうやら輸送物らしい。それを重そうに机に上げて見せた。
「早く開けて!」
輝は急かされるままに包みを開き、中を覗くと……
「もしかして! えぇ、マジで! いや、違うだろ」
「いいえ、そうよ! それはあなたの言っていたタンタルよ」
「いや、でもこんなに!」
そこにあったのは、いびつな形をした多い鉱石だったのだ。
「まぁ、これは後席のままだから加工代がかからなくてね」
「ほう」
しかし、その鉱石がどうであれ、輝の今現在持っているもの以上に量がありそうであった。そうだ、輝が驚いたのはその大きさなのだ。
輝が持っていたのはもともと握りこぶし程度のもので、長い剣を作ろうにも長さが足りなく、針のようになってしまっていた。逆に、小さなものしか作れないのでは、ケレンのどこまで出るのかわからない氷などと比べても劣っていたのだ。しかし、今輝の目も前にある鉱石は両手の平二つの定積と、片手のひらほどの厚みがあった。
「でもね、これ鉱石だからどれほど出るかわからないでしょ?」
「まぁ、そうですね……」
「だからもう三箱これがあるわ」
「えぇ……」
「つまり合計四箱ね」
「……えぇー、スカラいくら送ったのですか?」
「それは秘密よ。まぁ、知らなくてもいいじゃない! じゃあ、これは部屋に送っておくから、暇なときにでも頑張ってタンタルを取り出してね!」
「あの、他のメタルとかが混合していたりは……」
「しているかもね」
「えぇ、じゃあ、えぇ? (何、合金を使えってこと? いや、でも溶ける温度が違うと……?)」
「だから、これは温度調節の特訓だとも思ってね。蒸留みたいな感じで、違う温度で溶けるものが変わってくるでしょ?」
「いや、でもコントロールって……」
実際、熱のコントロールは輝が今まで考えてこなかった課題であった。しかし、常にフル活用していても魔力が足りなくなると言ってこともなかったのだ。
「いや、コントロールって別にできなくても! 集中できればいいんじゃないんですか! 俺、魔力もともと高めだし」
「いや、そういうことじゃないわ。あと、魔力高めっていうのは、教えておいてあげるけど、人族の中ではね。同じかそれ以上の種族だっているのよ! 例えば、ケレンのミラーノ族とかは同等だと思うしね。あと、昔滅亡したかまだ子孫が残っていると言われているサーミー一族なっていうのはすごかったらしいわ」
「サーミー一族! (それってもしかして)」
[はい、ダスラン島のバーナスの一族ですね]
「(すげー)」
「他に何か有名な種族とかってあるんですか?」
「まぁ、有名どころは機力が高いドアフ族とかね。エルビー族と人族はまぁ、多いでしょ」
「そうですね」
「あとは魔獣族ぐらいかな?」
「魔獣族? 魔獣のことですか? あの、ギルドが倒す……」
「そうよ。でも、魔獣の中でも知力が高くて話すことができると、魔獣族って呼ばれるわ」
「魔獣族か……なんか悪者って響きですね」
「何言ってるの? 悪者って響きっていうか、悪者よ!」
「悪者? 特に事件があるとかってことはないと思いますが……」
「それはギルドのおかげよ。街中ではね。でも、田舎の方とかになってくると、厄介なのもって! 何について話してるのよ!」
「ちょっと興味があったもので……」
「とにかく、魔力と機力の制御は重要だわ。だからそれも訓練すること! わかった!」
「はい……わかりました」
輝は魔獣族という存在をより知りたいと好奇心、胸の高まりを抑えなかった。敵の存在がより力への執着を増させるとはよく言ったもので、輝もすぐにでも特訓に戻りたいという気持ちも出始めていた。
「ケレン! おかえり!」
「早くしなさいよ! 別に待ってたわけじゃないけどね、あんたなんかいなくたって! いない方がこっちも有利っていうのに!」
「それより、ケレンの種族ってすごいんだな!」
「ミラーノ族のこと? まあね」
「しかも、その翼もあるし…… 人族は……」
「そうよね、人族はほんと弱いやつばかり! ほんと情けないわ! きっとキリはどっかのいい血族なんだろうね」
「また、あいつかよ! そう言って意外と人族かもしれないぞ」
「そんなわけないじゃない!」
「魔獣族かもね」
「何言ってるの? そんなわけがないじゃない! そう言ってるあなたが魔獣族なのかもね!」
「えぇ? それはなんでも投げやりだって!」
「そうでもないわ! 魔獣族は人族に似ているからね! 人族より強いけど! だからやっぱりあなたはないわ」
「ひどいな! って、魔獣族が人族に似てるってどういうことだよ!」
「何? 知らないの? 魔獣族は人族と同じって言ってもいいのかしらね。でも、人族とは違って魔力を解放できるかなんかで、そうすると体が紫色に変色して鎧みたいになるのよ」
「へぇ…… なんか強そうだな」
「だから言ってるでしょ! ものすごく強いって!」
そうして、輝は魔獣族により好奇心を得た。聞いた話では、いかにもファンタジーの中の悪役というイメージが輝を高めたのかもしれない。




