第百一話 進展の有無
第百一話 進展の有無
輝は言われるがままに引っ張られる髪の毛一本に法力を注ぎ込んだ。そして、同時に棒への明かりをつけた。
「こ、これで、いいのか?」
「そうそう、じゃあ次からは髪の毛を引っ張らなくても法力を流せるように!」
「わ、わかったよ」
輝は髪の毛の一本に力を込めるようにした。しかし、そう上手く行くものでもなく、髪全体に法力が流れ、魔機の棒の明かりさえも弱くなっていた。
「これじゃ、意味にないじゃない! それぞれが違うってことを感じ取るの!」
「どっちも力だろ!」
「感じ違うの!」
「味? 見た目? 匂い? 何なんなんだよ!?」
「違う力がなって感じだって!」
「何それ? 意味わかんないって!」
「じゃあ、私のイメージね!」
そう言うとケレンは、まず氷を手から放出した。荒々しい氷がケレンの手から現れたのだ。力強く、角張った氷だ。
「これが法力ね。ドット来る感じのね。重いけど、力が強い。でも圧迫感が強いって言うか……」
「まぁ、何となくわかるかな……?」
「次はね」
ケレンは、氷を手から放出したのだ。しかし、これは弱々しかったのだが、繊細なサラサラとした流れるような氷だったのだ。
「これが機力ね。弱いでしょ! 威力も弱すぎてとてもじゃないけど、攻撃には使えないの。これだけじゃね。でも、これは流れるような力なの。圧迫感もほとんどないけどね」
「だから、魔機を触っただけで出るのか?」
「そうそう、抵抗もなくね」
「(サラサラ流れる機力)」
えっと、すると、輝は体を流れる力をどこかに感じた。
「(えっと、あぁ、いろんなところを流れてるなぁ)」
[ほんとにわかってますか?]
「(……トクはわかってんだろ!)」
[まぁ。言われてみれば、何と無くわかりますね。なんか不思議だと思っていたけど、納得です]
「(俺だってわかっているって)」
[そうでしょうね。ケレンの説明はなかなかうまかった]
「(次は法力だな)」
輝が次に感じたのは、体から押し出すように、そう感じたのだ。
「(あっちに流れてるな! 今はこっち)」
輝は何かがわかったかのようにケレンに言いかけた。
「ケレン、法力が出せれば、だいたい使える理由がこれか?」
「よくわかったね」
「まぁ、俺結構才能あるし!」
「何言ってるの? わかっただけで、まだ操れるわけじゃないでしょ!」
「これからだよ。すぐにできるって!」
そうして、それから始まったのは、輝の孤独な特訓であった。ケレンは自分の訓練があるそう言ったのだった。
オーガスト 一日
輝の訓練は続いていた。輝は同時でなくとも、片方のみを用いると言うことが可能になったのだ。
「(法力だけ!)」
[おぉ、上手くできる]
「(次は、機力!)」
[完璧ですね! でも、同時に?]
「(……)」
輝は同時に使おうとすると、どうなるのかは簡単であった。どちらもの力を制御なく使ってしまうのだ。つまり、コントロールが不可能になると言うことであった。
その後、輝の孤独な訓練はさらに続いていたのだ。そんな日、サクラ先生からの招集があった。
オーガスト 三十日
「今日は全員揃ってますね」
教室には、キリ以外の全員がいた。
しかし、マリカは立ち上がった。
「あの……キリはどうしたのですか?」
「マリカにはまだ言ってなかったね。彼の師匠はAプラス級以上の魔導師だから、師匠の元で訓練できるのよ!」
「いや、それは知ってます。でも、今日はテストについてなのでは?」
「あぁ、そう言うことね。それなら心配ないわ! 彼は試験勉強とかはしなくて大丈夫らしいからね」
「そうなのですね……」
輝以外の生徒はまるで当たり前かのように考えていた。
「(大した余裕だな)」
[まぁ、強いだろうね]
「(なんか、うざいけどな)」
[そう言うことは勝ってから言ってください]
「(俺に勝てないって言うんだな)」
[もちろんですよ。まだ力の制御ができないじゃないですか]
「(今に見てろ!)」
「まぁ、とにかく二年前期の試験が決まったわ」
「どうせ戦闘でしょ!」
「いつもそうじゃん」
「何を言っているの? 今回は魔機と魔法の完璧なコントロールを審査するわ」
「でもどうするつもりですか?」
「競ってもらうわ」
「結局、戦闘じゃないですか」
「違いますよ。それぞれの競う相手は私が決めますし、それが戦闘とはかぎりません」
輝は珍しく発言した。
「つまり、俺とケレンの創造対決とか、ですか?」
「詳しくは当日まで言えないけど、そのようなものよ。つまり、私が言ったことをしっかりとやっていれば問題ないですね」
「後先生!」
「何、テル。今日は妙に発言が多いわね」
「あの、クラス内順位とはどう決まるのでしょうか?」
「あれは試験後にある下克上によって決まるわ。今の順位はこの前の順位を引き継いでいる。それで、勝った相手の順位を奪うと言うこと」
「つまり、俺がキリに勝てば!」
「一位と言うことね」
どの生徒も苦笑した。あるものは声に荒げて笑ってさえもいた。
「なんで笑うんだ!」
「キリに勝てるわけがないだろ!」
「あいつウケる!」
「……」
[馬鹿にされてますね]
「(黙ってろ!)」
「とにかく、これで今日は終わるわ! 解散! 頑張ってね!」
皆は揃って自室や訓練室に戻って行った。ちなみに、現在の順位はと言うと、
一位キリ
二位ケレン
三位テル
四位クラーク
五位カイ
六位チリキ
七位ノア
八位メイス
九位マリカ
十位サノル
である。つまり、順位的には輝は高い。しかし、逆に言えば、下との戦闘をも意味していた。
ノーベンバー 一日
輝の訓練はケレンともに再開した。
「でも、ケレンなんで……」
「何? 授業の時あなたがああ言ったからおそらく私たちは戦うことはないわ」
「だから?」
「だから、教えてあげるんでしょ」
「脅威じゃないってことか」
「どうでもいいから! 自分でどこまでできるかやって見せて!」
輝は法力のみを髪一本に集中させた。
「まぁ、なかなかね」
「次は、機力よ」
輝の握った棒の先が光った。先の一点のみだ。
「なるほどね。まぁ、まだまだだけど、で次は?」
「次……」
「まさか、同時に使えないの?」
「……」
「あぁ、もう呆れた! それじゃあ意味ないじゃないの!」
「いや、使えるけどコントロールが……」
「それは使えるとは言わないわ!」
「……」
そんな時、個人用特訓室にノックがあった。
「あの……」
そこにいたのはサクラ先生だった。




