第百話 上達のしない学生
第百話 上達のしない学生
A組はB組と違い、個人の特訓部屋が体育館の代わりにあった。そして、輝が現在いるのは、そう、その個室だ。しかも、それはケレンなのだ。
「(近い! めっちゃ近い!)」
[ちゃんと言われたことをするんですよ!]
「(わかってるよ! でも可愛いな〜)」
「さっきから何見てるの! 気持ち悪い! 先生にしろって言われてるからするんだから! じゃあ、最初のお題は……」
「お題はケレンで!」
「なんで!」
「ダメ? 難しすぎるかぁ〜(乗れ乗れ!)」
「わかったわよ! 私ね、私!」
二人は創造に取り掛かった。ケレンはもちろん氷を使っており、対して輝はタンタルを用いていた。
「なんか難しいなぁー」
「私はもう、出来たけど!」
ケレンは輝に完成した自身の模型を見せた。
「すごいね、でも、ケレンはもっと可愛いかな……なんか控えてるって感じだけど?」
「何? もう、いいでしょ、次しましょ次!」
「いや、待って! 終わってないから」
輝の創造はまだまだといったレベルであった。だいたいの形はできているものの、それは大まかなものであった。顔とわかるがどこが目かなどがあいまいだったのだ。
「もう、待ってられないわ! ちょっと、法力を使いすぎてるのよ!」
「機力を使えっていってんだろ! わかってるけど、できないんだよ!」
サクラ先生が輝に休みの間に話したように、機力は法力に比べて力が弱いものの、器用に扱えるとのことであった。
「だから、体の底から最も押し出す感じで! わかる?」
「いや、わかんないって」
ケレンは呆れた顔で輝を見た。
「じゃあ、魔機を使ってる時どうしてるわけ?」
「普通に持ったら出るでしょ」
「いや、そうじゃなくて、去年やったでしょ! 私が教えた!」
「あの、明かりの付く棒的なやつの」
「そう、それで止めたり出したりするのしなかった!」
「やったのは覚えてるけど、ケレンに夢中だったからなぁー(振り向いてくれないかな)」
しかし、ケレンの顔にあったのは嫌悪だった。
「いったでしょ! 私はキリに気になってるの! あんたなんか!」
「まぁ、とにかくどうすればいいんだ!」
「いや、思ったけど私に教える義務はないんだし、いいや」
「いいやって……」
すると、サクラ先生が部屋に入った。
「仲良くやってる? 去年の事件の話聞いたわ、知らなかったのごめんね。だけどね、これいい機会だと思うの。だから、ケレンも色々輝に教えてあげてね。あと、半年でどこまでいけるか! 気になるわ!」
「えぇ、半年って! 先生! なんでこんなやつと!」
「そんな教えることもできない子をキリはどう思うかな?……」
「……わかりました。先生! 私やります! こいつに学ばせます!」
ケレンは急にやる気を出し始めた。サクラ先生はすでにケレンを見抜いたということだ。そして、もしかしたら輝のことを知った上でのことなのかもしれなかった。
「(いや、絶対何も思わないだろ)」
[女の子の恋の力はすごいですからね]
「(知ったか、すんなよ)」
とにかく、それから輝には毎日ケレンからの授業があった。が、かなりの苦難を強いられていた。なぜなら、言ってしまえば、輝よりも実年齢が若い。そして、先生でもない。つまり、ケレンは未熟なのだ。教えてことが自身の使っている力を最もよく知る方法だとサクラ先生も教師として見切っていたのであった。
「だから、機力を感じるの。体全体で」
「だからそれがわかんないんだって!」
ケレンのため息は止まらないどころか、日に日に増していった。しかし、輝もしたくてしているわけではなかった。もちろん、恥ずかしい・情けないという思いもあるのだ。
「法力が回っているのはわかるでしょ!」
「まぁ、多少」
「多少って、もっと。あぁここにあるなっていうの」
「できるって!」
「じゃあ、やって見せてよ!」
「わかったよ! (指先に)ほら!」
「いや、どこにやってるの?」
「だから、この指先に!」
「指先? なに、子供じゃあるまい。髪の毛よ、髪の毛! 先生言ってたでしょ」
「(できるかよ、まず、髪の毛がある意識がないわ)」
魔法・魔機の使用は感覚によるものが大きかった。つまり、論理的に教えることは大変困難だったのだ。
「髪の毛の意識なんてないって言いそうな顔してるね」
「あぁ、うん(筒抜けかよ)」
「もう、これだけいるとわかってくるわ。じゃあ、引っ張るよ!」
「えぇ、って痛」
ケレンは輝の髪一本を引っ張った。
「はい、これわかる!」
「わかる、わかるから」
「じゃあ、そこに集中!」
「でも、指が……」
「何? 私が直接触っているとでも!」
輝は髪を確認して見た。すると、ケレンは氷でできたピンセットで輝の髪を引っ張っていたのだ。
「俺、毎日シャワー浴びてるぞ!」
「あんたの髪なんか触りたいわけないでしょ」
「なんだよ、キリのならとかいうんだろ」
「……とにかく!」
輝は髪が引っ張られている感覚の先に力を集中させた。しかし、輝には法力と機力の判別が特になく、ただ力んでいると言った程度であった。
「はい、次!」
ピンセットは輝の熱によって溶けていった。
「先生はきっとこの熱に耐えられるようにってことも考えていたのかしら?」
「いや、ただめんどくさいからだろ」
「あんたはいいの! 先生、A級魔導師だよ! とにかく、この髪!」
そして、輝とケレンはとにかく反復練習を繰り返した。そうして、一ヶ月が過ぎる頃、輝はようやく自在に力を操作できるようになった。
セプテンバー一日
今日も輝とケレンの訓練は続く。しかし、輝は次のステップに入っていた。
「じゃあ、今日からは、機力と法力をバラバラに使うっていうのね!」
「いや、それぐらいできるって!」
「ただ力んでるだけでしょ!」
「まぁ……って、ケレンって教えるのうまいんだな」
実際ケレンの教え方が丁寧であったのは事実であった。典型的な自分で学べという性格の師匠はベルトタイプ、そしてキリの師匠魔賢者マグニスのように、知識のある魔導師はケレンを教えるように、一から説明と反復を繰り返していたのだ。
「どう思われるかな?」
「なんだ、キリにか?」
「黙って! じゃあ、同じように、髪の毛に集中するんだけど、次はこの去年使った棒を持って見て」
輝は言われる通りにして見せた。
「わかる? 髪の毛の方の力と、手の方の力。違うでしょ!」
「違うって……(わかんないよ!)」
そうして、ケレンは深いため息をゆっくりとついた。
「だ・か・ら!」




