第55話 保険は大事
「私は、ヴィオレットと申します。お見知り置きを」
いやいやいや、どうしてだよ。
もしかしてこのヴィオレットさんは、ガイみたいに戦闘狂何ですか!?
美しいだけに残念な人だ。
しかし試合か、まあいいか。
「武器術」がどんな感じか確かめられるし。
あれ? 私の思考も戦闘狂じゃね? いや、そんなわけない。
「まぁハルちゃんのお願いだしね。いいよ」
「おお! また何か今度礼をしよう」
「いいよ、それでルールとかあるの?」
「そうじゃな」
ハルちゃんはチラッとヴィオレットの方を見て考える素振りをみせる。
その間に私はヴィオレットさんを鑑定。
ヴィオレット・アマランス
HP1210(体力460 パワー360 スピード390)
MP120
スキル
「成長補正」……どんな過程であれ、それに打ち込んだ程、補正かかる。
魔法適正
土
……言葉が出てこねぇ。
ノワールも大概だったんだけど、この人はもうそれをずば抜けてる。
そもそも、私のステータスのHPだってチートなのに、この人はどうなってんの?
マジで可笑しい。
これ、私と遣る意味ある? 絶対私じゃ勝てねぇわ、まぁチートがなければだけど。
ハルちゃんに抗議したい、ハルちゃんを見ると。
ん? 何故か物凄く笑顔だ、無邪気……いや邪気が滲み出ている。
……嫌な予感が。
「それじゃ、魔法なし、スキルなしの剣だけの勝負で行こう」
うわ、それ私むっちゃ不利じゃん。
私の専売特許とも言っていい『光の剣』が使えなくなる、あ、でもそれは向こう側も魔法が使えないから同じな訳か。
でも、スキルを使えないのはキツイよね。
だって私のスキルの恩恵は戦いにもろ影響しているし。
それに、ヴィオレットさんの方はスキル戦い用じゃないし。
もういいや。
恩恵スキルは普通のスキルじゃないからいいよね。
ぶっつけ本番だけど、恩恵装備能力の「戦技創造」も使ってみよう。
別に勝たなくてもいいんだし、でも勝ちたいから手は抜かないけど。
痛いのは嫌だから「却下」で痛覚を消そう、まだ試合は始まってないしいいんだよ。
「ええ、私はそれで構いませんが。そちらはこれでいいのですか? 些かそちらが不利のようですが」
いや、些かどころか諸不利だけど。
「別にいいよ。その上で勝し」
「なるほど、その自信いつまで持つか楽しみです」
今のはちょっととしたサービスかな、だって戦闘狂の人達って何故か煽ったら喜ぶんだよね。
分からん。
でも、言ったからには無様にはまけれないな。
「言った本人が言うのもアレじゃが、本当に良かったのか? お主が一方的に不利じゃぞ?」
「う~ん。別に私は今回勝ちじゃなくて、恩恵スキルの確認が目的だからね。でも、負けるのは嫌だから勝ちには行くけど」
「お主も大概じゃな、だが妾はこの試合どうなるか楽しみじゃ」
いや、楽しみにされてもね。
「良し、善は急げじゃ。早速やるぞ、お互いある程度離れるのじゃ」
私達は一定の距離をとった。「完全防御」と「森羅万象」が使えないのはキツイかもしれないけど。
それでも、勝つようには努力するよ。
「あまり期待を裏切らせないでくださいね」
「凄い自信だね。まるでもう勝つことが確定しているみたいに」
「そうですね。この試合私が勝たせてもらいます」
「それは、やってみないと分からないよ」
話はこれぐらいにして、私は無駄のない構えをとる。
この空間は広いし結界も貼ってあるみたいだから頑丈なはず。
だから、あっちも全力で来るだろうな。
あ、因みに「完全防御」の自動発動は切って無いよ。
ノワールとの戦いの時に私は学んだのだ、切ったらえらいことに成るって、だから命の危機以外発動しないように出来ないか、そう思って自宅で試したら出来ました。
これで、腕を切られても発動はしない。
だってね、これで命落としたらバカみたいだしね保険は必要だよ、保険は大事。
「じゃあ、始めるのじゃ!」
「戦技【力の執着】【力の暴挙】」
これは、「戦技創造」でさっき私が創った戦技だ。
どちらも一定時間、身体能力を底上げ出来る能力。
そもそも、私とヴィオレットさんの自力が違いすぎる。
底上げでもしない限り、ヴィオレットの動きさえ付いてはいけないだろう。
だから私は最初から身体能力を底上げしたら? と考えた訳だ。
私の視界からヴィオレットさんが消えた。
いや、私がヴィオレットさんの動きに付いて行けてい無いだけだ。
第六巻を前回まで研ぎ澄ませ、「武器術」の追加効果で感覚が鋭くなっているはずだ。
観えた!!!
私は横からくるのをいち早く感知し、カラドボルグを相手が向かっている方に添えた。
剣と剣ぶつかり合い、私は盛大に吹っ飛ばされた。
「うあああぁぁぁ!!!」
部屋の壁まで突き飛ばされた。
クソ!! どんな力だ!!
だけど、初撃で決めなかったのは失敗だったね。
おかしな所があれば教えてくれると嬉しいです。




