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第44話 今日は新鮮な一時であった

 因みに何故私がハルちゃんに気づいたかと言うと、ノワールが「スキル共有」を使っている時に、私が「真理眼」観ていたら、線というか、つながりみたいなものが見えたのだ。

 だから、チラッとそっちを見ると彼女がいた訳。

 まあ、偶然に近いね。


 で、私は思ったんだけど!

 ハルちゃんって結構前から私達の戦いを見てたんじゃない?

 それって私を助けに来てどうなのよ。


 よし、聞いてみよう。

 私はハルちゃんの方に振り返った。


「ねぇ、ハルちゃん」

「ん?」

「ハルちゃんは私を助けに来たんだよね?」

「そうじゃ」

「じゃあ、なんでずっとノワールを止めなかったの? 助けに来たなら普通私を助けてよ!?」


 ハルちゃんはそも当然様に。


「そんなの決まっておる」

「なにが」

「その方が面白そうだったからじゃ!」


 私は大きくため息を付いた。

 面白いからって。

 そらないよハルちゃん。


「よいではないか。お主は生きているであろう」


 まあ、そうなんだけどさ。


 ヤバイもう眠い。

 帰ることにしよう。


「ハルちゃん、もう私帰るね。眠いのよ」

「そうか、また来るがよい、ノイルも喜ぶだろう」

「分かったよ、ノイルちゃんのよろしく言っといて」

「よかろう」


 と言うことで私は「瞬間移動」で自分の部屋に戻ったのだった。



 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 妾は魔王、ハルツィナ・ロア・アンファングと言う者じゃ。


 早速だが妾の部下に付いて説明しようと思う。

 妾は一応魔王だから魔王軍と言うのを持っている。

 魔王ハルツィナ軍とも呼ばれたりもする。


 魔王軍は第一師団~第七師団まである。

 それぞれの団長は妾が絶対的に信頼を置いている者に任せておる、妾の「スキル共有」で妾のことを真の主と認めているから裏切りはありえない。

 もちろん他に「スキル共有」をしている者もおるがいかんせん強さがたりん。


 第一師団団長 ノワール・セイブル

 第二師団団長 ブラン・ホワイト

 第三師団団長 ルージュ・レッド

 第四師団団長 アジュール・ブルー

 第五師団団長 ヴェール・ビリジアン

 第六師団団長 ジョーヌ・マシコット

 第七師団団長 ヴィオレット・アマランス


 それぞれ、なかなかのつわものだ。

 ブランは昔、妾に決闘を挑んできたりしてそれを妾が悉くぼこぼこにしたものじゃ。


 おっといかん、つい昔の思い出に浸かる所じゃった。


 この中で妾直属の部下は第一師団の団じゃ。

 第一師団は精鋭ぞろいの師団で有名だったりする。

 皆、第一師団に入れた者を英雄の様に見ていたりな。


 そんな第一師団団長のノワールには娘がいる。

 名を、ノイル、ノイル・セイブル。

 この子は可愛いのだ。

 妾の周りは皆、妾を王と慕ってくれる。

 別にこれが嫌な訳ではない、ただ妾とて友達と呼べる関係の者も欲しくもなるのだ。

 ノイルはまだ生まれて間もない頃からの付き合いじゃ。

 妾がノワールに頼んで世話もしたことがある、これがもう可愛いのなんの、ノワールは妾に失礼が無いかとかを気にしていたがな。


 だからか、ノイルは妾にも懐いてな。

 者心付いてからは友人として接してくれた。


 だが、そんなある時ノイルが失踪した。

 妾は直ぐに誘拐じゃと解った。

 ノイルはあの歳で、まあまあ強い。

 魔物に遣られそうになれば逃げることは容易い。

 だから誘拐だと解ったが、行方までは掴めなかった。


 妾もノワールも自分の無力さに嘆く日々だった。

 闇雲に探しても見つかる訳が無い。

 探知にも引っ掛からなければどうしようもない。


 だが、ある時に探知にノイルが引っ掛かった、それも直ぐ近くに、じゃ。

 妾は心底安堵した。

 近くという事は如何にかして帰ってこれたのだろう。

 誘拐されてから日にちも結構、経っている。

 今なお捕まって居るならこんなとこに居る訳が無い。


 ノワールが『ゲート』を使った様だ。

 娘が帰ってきて嬉しいのだろう、そっとして置いてやるか。


 そして少し時間が経ってからある出来事が起きた。

 ノイルが目もくれずに妾の所まで猛スピードで遣って来ているらしいのだ、と暗部から連絡があった。

 妾は魔王じゃ、だからか日中警備は部下にされている、要らんと言っておるのにのう。

 その者らとノイルがぶつかっている、というではないか。

 妾は何かあるのだと思い、ノイルと二人で内密に話せるよう、緊急で手配させた。

 ノイルは妾の所まで必死の形相で向かってきたが、妾を見た瞬間泣き出してしまった。


 そして、ノイルは泣きながらも、必死に妾に事情を話した。


 何という事じゃ! ノイルを助けた者がノワールの勘違いで殺され掛けてると。


 妾は直ぐにノワールの所に行こうとしたが半分諦めていた。

 ノワールとそヤツが戦闘してからもう時間が経っておるじゃろう、残念じゃがそヤツはもう……と思っておった。


 だが、信じられないことに、ノイルを助けた人間は何とノワールに対して優勢に戦っていたのじゃ。

 妾は目を疑った。

 そんなことがあり得るのか?

 人間だというのに。

 見た目から見て6,7歳のだろう。


 妾はしばし傍観する事に決めた。

 なに、危なく成ったら助ければいいのじゃ、そう思っていた。


 そしてこれは人間がヤバイと思った時が訪れた。

 ノワールが『エクスプロージョン』を打ち、「スキル共有」で「完全隠蔽」を使ったのだ。

 これは、妾が知る限り、隠蔽スキルの最上位互換のスキルじゃ。

 これを使われたら妾とて探知にに悩む。

 だが、人間がノワールの居場所が解る様な動きをした様になきがした。


 まさが……そんな訳が無い。

 だが……妾は斬られても死ぬ前に治せるよう、回復魔法をホールドして見守る事に決めた。


 そん訳が無いと思いつつも。

 だが、実際、妾の直感は正しかった。

 その人間はノワールの攻撃を見事受け止めて見せたのじゃ。


 妾はその人間に興味がわいた、こんな事は初めてじゃった。

 その人間に対して「鑑定」を行なったが、なんの役にもたたなかった、アヤツはステータスを偽造していたからだ。

 そのステータスを信じる気には成れんかった、あれではノワールと対等どころか瞬殺で終わっているだろうからだ。


 そのあと、ノワールは召喚魔法で恐竜を出した。


 それでもそヤツは動じた素振りも見せない。


 それどころか恐竜に向かっていったのだ。


 妾はヤツには恐竜を倒すすべがあると見た。


 結論から言うと恐竜は無残にも一瞬の内にやられた。

 そこで気付いたがヤツの武器は『光の剣』ではないか、それも4つ。

 あまり知られていないが、『光の剣』は形状変化で形を変えれるのだ。


 ということは、ヤツには少なくても今スキルが5つは有るということじゃ。


 そして「瞬間移動」でノワールの後ろを取って終わってしまった。

 ノワールめ、何時もなら交わせたであろうに。


 それにしてもヤツは妾が見た限りスキルを完全に使いこなしていた、あれが人間たちのいう神童というヤツかのう。

 妾も人間だからと侮っている節があるのう。

 これはちと、認識を改めねばな。


 妾はヤツがノワールを殺さないと解っていた。

 なぜなら、ノワールは殺気をだして殺そうとしていたに対して、ヤツはノワールのことを気遣いながら戦っていたからだ。

 まあ、その事はいいとしても、ノワールが殺せと言った時、殺さないと分かっていても、まさか、説教するとは思わなんだ。

 これには今日一番に、驚いたかもしれぬな。


 まあ、ノワールは戦技を使ってい無い、それは妾が許すまで使うなと言いつけたからなのだ。

 ノワールの戦技は強力過ぎて回りに被害が起こるからのう、だが、何故だろうか。

 ノワールが戦技を使っても結果は同じように思えるのは。


 さて、そろそろ妾も出て行こうかのう。

 と、思っていたが、ヤツは妾に気付いていたのだ。

 薄々、妾もそうではないか、とは思っておったが、まさか本当に気付いて居たとは。

 一応「完全隠蔽」のスキルを使っているのだがな。


 そして、会話している内に事もあろうに、妾のことをハルちゃんと呼びたいと言い出したのだ。

 これには、笑わずには居られなかった。

 魔王を前にこうも平然としている人間など初めての事だったし、そもそも妾の事をハルちゃんと呼ぼうなどと、魔族にも居なかったぞ。


 妾は好きに呼べばよいと思った。

 いや、寧ろその方が新鮮でいいとさえ思ってしまった。


 そしてま、また話しているとヤツはノイルを助けたのは当然と、しかも可愛い正義などと、言いおった。

 その事を、熱く興奮しながら熱弁するのだ。

 付け足しで、心底どうでも良さそうにノイルを攫ったヤツら潰す様に手配した、と。


 お前は一体何者なんだと、突っ込みたかったが、それ以上に笑いがこみ上げて来た。

 こんな人間初めて見たわ。

 こヤツと居ると何故か新鮮な気持ちに成れるのう。


 そして、妾はノワールに諭して謝らせた。

 まぁ、妾も見ていて少し楽しかったのは内緒じゃな。

 だからノワールを止めなかったなどどは流石に言えんのう。

 いや、逆に言ったら面白そうではないか?


 そして、ヤツは眠いから帰ると言い出した。

 妾はまた来るように言った。

 その時、ノイルが喜ぶとも言ったが一番は妾もまた、こヤツを気に入ったからかもしれぬのう。


 さて、妾達も帰るとしよう、帰ったらノイルにどう説明するか、流石にど直球でお父さんが負けたとも言いずらいしのう。


 今日は新鮮な一時であった。

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