プロローグ
混濁していた意識がハッキリしていく。
目の前は真っ暗。それで私は、瞼を閉じていることに気が付いた。
体が地面に触れている。どうやら私は倒れて気を失っていたらしい。
ゆっくりと瞳を開きながら上体を起こしていく。
短く切られた髪が揺れる。目に入ってきた髪を指で払い、そして周りの景色を見ようと目を凝らした。
……光が眩しい。
黒から白、一気に明るい世界を視界に入れた為、世界が白く染まっている。
視界が戻ってくる。戻ってきた景色の中で最初に視界に入ったのは、道路から大きく外れて電柱に勢いよくぶつかっているワゴン車、ではなく。中で意識を失っている人達、でもなく。
誘拐されていた女の子を抱えて立っていた”蒼い何か”だった。
いや、”何か”というよりは”何者か”と言う表現の方が正しいと思う。
だってその蒼く発光しているのはヒトの輪郭をしているから。
倒れていた身体をゆっくりと起こしながら、その”蒼いヤツ”を見据えた。
視界が半分くらいボヤけてる。倒れて頭を強く打ったのだろう、視界が完全に戻っていないみたいだ。
でも、拙い視界からでも判る。
ソイツから発せられる濃くそれでいてとても澄んでいる、力強い群青色の光。
私は不覚にも、今の異常な状況も忘れて、ソイツから発せられるその光に見惚れてしまった。
まるで、ソイツの強い意志を現しているような、その光に