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美しい世界
小説を書いている。でもこれは、先生には売らない。僕だけの小説。
箱に憑りつかれた男の話。
ねえ、宮内さん。これはあなたの物語だよ。
あなたの罪を記録したものだよ。この小説は、蒐集物に加えられる。
あなたの罪が、あなたの闇が、蒐集物の一つになるのだよ。あなたの一部が蒐集物の一つになる。
あなたは蒐集物になったのだ。
ああ、なんて美しい物語だろう。
この世界には、こんな美しい物語があふれているのだろう。
なんて、この世は鮮やかなのだろう。
宮内さんから、僕はあの部屋を受け継いだ。
蒐集者でなくなった宮内さんはずっと老け込んでしまった。可哀想だなと思うけど、仕方がない。だって、罪を犯していたのだからね。
罪を犯したら、蒐集は続けられないのだからね。
大丈夫だよ、僕はくだらない人間だから。きっと罪をおかさない。
罪を犯したとしても、その時はきっと今の僕のように次の蒐集者が現れる。
蒐集物は、今日も、明日も、その先も、永遠に生き続ける。
次の蒐集者が現れるまで、僕が蒐集者だ。
僕は、真田春生は、蒐集者になったのだ。




