第六幕 猫の子子猫、獅子の子子獅子②
エアコン直りました!
やっと戦闘書けました!
次いでに、英語のテストがヤバイです!
(だ、誰か助けてください…。)
楽しんで読んでいただけたら幸いです。
「痛ってぇえええっ!?」
「あ、悪い。」
「あ、丁度いいクッション。」
開いた床から落ちた子は、身体中を強かに打ち付けた上に、背中に二人分の重さを受けて悲鳴を上げた。
しかし、落ちた高さがそう高くなかったおかげで、大怪我は免れたようだ。
アインスは軽くなれど謝るが、夏は完全にその気が無いようだ。
「おい、テメェらどけっての!重ぇんだよっ!!」
腕の力とで床から無理やり立ち上がった子の背からアインスと夏が落ちる。
「…おい、クッションが動いてんじゃねぇよ。」
「誰がクッションだっ!」
「まぁまぁ、二人共。落ち着いて。…と言うか、落ち着かないと、」
夏と子が睨み合い出した中、アインスは背後でしたコツリという音の方へと振り返った。
「ほら、来たよ。敵が。」
「やぁ、セプテット。敵だなんて、酷い言い方じゃあないかい?」
振り返った先には、刀を片手に持ったルネが居た。
背後には、恐らく、外へ出る為の扉があった。
「おい、ルア。どーいうつもりだ?さっさと説明しろっ!!」
子がアインスより前へ出てルネに向かって怒鳴った。
「ねぇ、セプテット。『子』を十二個揃えて、何と読むか知っているかい?」
「無視するなよっ!」
しかし、ルアはそれに答えず、アインスだけに問い掛けた。
暴れかける子を夏が首根っこを捕まえて押さえ込む。
「卯さんに言いつけるぞ。」
その言葉を添えて。
「…猫の子子猫、獅子の子子獅子。…でしょ?」
数拍置いて、アインスが答えた。
呼び方の訂正は諦める。
いちいち言うのも面倒だ。と、自分に言い聞かせる。
「正解だ。流石だな。」
パチパチと手を叩くルア。
馬鹿にしているとしか思えない行動に、アインスは苛立った。
「じゃあ、次の問題だ。」
薄く笑いを浮かべた表情に変化はないが、ルアの声音が変わった。
「…君達は、猫の子なのか、はたまた獅子の子なのか。それを教えておくれよ。」
ルアが持っていた刀をアインスへ向かって投げた。
「それを使え、セプテット。」
「………」
アインスは、刀を凝視したまま固まる。
「…使え。」
もう一度、ルアが言った。
「あの人を倒すには、私、…いや、俺を倒せなければ夢のまた夢だぞ?」
ルアが指を鳴らした。
すると、すぐにあちこちから黒づくめの男達が出てきた。
が、人間にしては動きがあまりに無駄が無さ過ぎる。
「…機械人形か…。」
「うっわ。どんだけいんだよ…。」
夏も子も嫌そうに顔を顰めた。
全員同じ顔に設定されて無い事が、余計に二人の癪に障った。
「おや、人らしい機械人形は嫌いか?殺し屋の癖に、生きてもいないモノを殺すのを、躊躇うのか。」
ルアが面白そうに、不思議そうに、笑った。
「殺し屋かんけーねぇだろ。仕事じゃねぇのに殺せるかっつうのっ!!」
そう言いつつも、無慈悲に向かってきた機械人形を服の内側に隠していた二つのククリで真っ二つにしていくが、
「はっ!?」
「おいっ、馬鹿っ!!」
上半身だけになった機械人形が足の代わりに腕を使って、子に向かってきた。
それに気付いた夏が、頭を打ち抜いた。
パンッ!と音を立てた銃。
一瞬後には機械人形は動きを完全に停止した。
「おい、馬鹿じゃねぇのお前!機械人形に『死』なんて無ぇんだから、司令塔の頭を壊さなきゃいっそ首だけでも襲ってくんだぞ!?馬鹿!!」
パンパンパンッ!
怒鳴りながら、連続して発砲する。
夏は一弾も外さず、頭のど真ん中を打ち抜いた。
「うっせ!んなこたぁ知ってんだよ!!バカバカ言うな!バーカっ!!」
子は身体を捻り、戻る反動で両手に持ったククリで、機械人形の頭を綺麗に半分に切り離す。
「子供かっ!!馬鹿だから馬鹿だっつってんだよ馬鹿!ってか、知ってんなら最初っから頭狙えよっ!お陰でテケテケみてぇのが増えたじゃねぇかっ!気持わりぃっ!!」
「…テケテケってなんだよっ!?」
「突っ込むとこそこかよ!!」
夏の背後に機械人形が銃を向ければ子がククリで貫き、子の背後で機械人形が刀を振り被れば、夏が撃ち抜く。
言い合いながら確実に機械人形の軍勢を片付けていく二人の息は完全に合っていた。
―『同族嫌悪』。
普段は仲が悪いのに、戦闘では息ピッタリな二人に、ルネはそんな事を思った。
そして、目線を先程から刀を目にしたまま動こうとしないアインスに注がれた。
「…どうした?戦わないのか?二人だけに任せて、お前は戦わないのか?この、意気地無し。」
ルアはアインスを嘲笑った。
しかし、アインスは依然俯いたまま、
「…なんとでも…。」
ポソリと、そう呟いた。
パァンッ!!
銃を撃った。
「…そうか。…なら、仕方ないな…』
「「!?」」
ルアの姿が徐々に揺らぎ、消えた。
同時に、機械人形達の動きも停止した。
夏と子が驚いたようにルアを、ルアが居た場所を見た。
アインスが放った銃弾は、ルアの足元にあった球体を射抜いていた。
球体はパチッパチッと火花を散らしている。
『あぁ、そうそう、子。君の質問への答えだけど、理由も事情も何もかも、この試験に全て合格すれば分かるよ。知りたかったら、頑張って全て合格する事だね。』
部屋中からルアの声が聞こえるようだ。
耳に木霊する音が煩い。
「…ホログラムだったのかよ…。」
子が驚きに染まった声で呟いた。
「………」
夏は何も言わず、アインスを見た。
「………」
アインスも何も言わず、球体を見つめていた。
ガチャンと、扉が開く音がした。
『…第一試験、合格です。次の試験へ、お進みください。』
機械的な女性の声が部屋に響いた。
「…ッチ…。舐めやがって…ゲームのつもりかよ…っ。」
子は、さっさとと開いた扉から、アインスの右横を通り過ぎて出て行った。
「…行くぞ、アインス。」
夏は、一度アインスの左横で立ち止まると声を掛け、それから扉をくぐった。
「………」
アインスは球体から、刀に目を移し、しばらく見つめた後、
「…あぁ…。」
刀を跨いで扉の向こうへと足を進めた。
誰も居なくなった部屋はシン…。と静まり返った。
「…全く…、本当に徹底してるんだな…。」
ー野田さんの所で抜いたと聞いていたから、期待していたのだが、…
コツリコツリと部屋にルアの声と足音が響いた。
捨て置かれたままになってしまった刀を拾い上げる。
「…だが、抜かなければならないのだよ。お前は。でないと…、」
ー一生掛かっても、『アイツ』は、殺せない。