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ゴミステーション発に乗り  作者: 柳 空
第一章 前日譚
14/59

第五幕 閑話休題、そして始動③

第五幕終幕です。

やっぱり、結局平和的な話になってしまった…。

次こそは、戦闘シーンを…っ!



楽しんで読んでいただけたら幸いです!

「レヒツ…。悪いがこの勝負、勝たせて貰うぞ…っ!」

亮は、片手に構えていた銃のグリップを強く握り締めた。

「ふん。やれるものなら、やってみろ!です!」

無表情ながらもレヒツは、好敵手ライバルを見つめる、熱い眼をしていた。

『READY?』

何処からともなく、声が響いてくる。

『…GO!』

さぁ、開戦だ。


「ちっくしょおおおおおっ!!」

「いえー。五連勝ー。」

亮は悔しさに膝を折り、レヒツは誰に向ける訳でもなくピースを作る。

「はー…。レヒツちゃんって、強いんですねぇ…。」

ツヴァイの隣で、先ほど落ち合ったばかりの閑崎かんざきが、感心したように呟いた。

「まぁ、シューティングゲームは得意分野ですからね…。」

ー…にしても、前に勝負した時はまだ五分五分の実力だったはずだが…、いつの間に練習したんだ?

ツヴァイは、閑崎に返事をしながら、考えた。


亮がアインスに揺さぶりと言う名の物理攻撃を食らわせて撃沈させた後、午後から出向く筈だった野田から電話が入った。

「…え、いいんですか?」

『ああ。今日のはこっちで何とかする。ここ暫く、まともな休みなんてなかったんだろ?今日くらい休んだって、神さんも閻魔も怒りゃしねぇよ。』

「すみません。ありがとうございます。」

何処からかアインスの体調不良を聞いたらしく、今日の仕事を無かったことにしていいという内容だった。

二日休んだら怒られるのか。とは聞けず、素直に謝罪と礼を言う。

正直、自分自身も大分身体にきているのを自覚していたため、ありがたさに自然と頭が下がった。

『いいってのいいっての。あー、それより。大丈夫なのか?いちは。風邪なんて、アイツ初めてだろ?』

「はい、まぁ…。でも、今は落ち着いています。」

『そうか…。』

ツヴァイの言葉に安心したのか、野田は小さくそう呟いた。

沈黙が降りる。

「さっきまでは仕事行くと言っていたんですけど、亮が何とかしてくれまして、今はサキさんが作ったおかゆ食べてます。」

なんとなく気まずくなって、ツヴァイはそんなことを口にしていた。

電話越しに野田の笑い声が盛大に聞こえてきた。

声は大きいが、少し遠く感じるから、きっと腹を抱えて大笑いをしているのだろうと当たりをつける。

『野田さん。うるさいですよ!』

遠くで、女性の声が野田をしかる。

『ああ、悪い悪い。…はー…ははっ…、あー、どうせあれだろ?半ば実力行使でいちを撃沈させたんだろ?』

「よく、分かりましたね…。」

まさしくその通りだ。

ツヴァイはつい先ほどあった大騒ぎを思い出し、遠い目をした。

『あっはは!いやー、何があろうと、お前らのやることは大して変わらんな。』

「そうですね。」

確かにと思って、フッ。とツヴァイが笑うとあ、今笑ったな?と野田が言う。

「笑ってはいけませんか?」

なんとなく、そんなひねくれた返事をするが、野田はいんや。と気にしたふうでもなく、むしろ少し嬉しそうに否定した。

『そんなことないさ。笑った方がいいに決まってる。』

優しく、野田はそう言った。

「…そうですか。」

ぶっきら棒に返す。照れ隠しだ。

『そうだよ。…あ、そうだ。おい、ツヴァイ。』

「なんですか?」

突然、空気を切り替えて野田がツヴァイを呼ぶ。

『今日の午後、どうする気だ?』

「どうって…」

ツヴァイは、リビングを覗く。

「なぁ、亮。今日の午後、仕事無くなったんだが。何か予定とかあるか?」

「は?お前らの予定なんて知るわけ…あー、待て。仕事無くなったんならちょっと付き合え。」

「分かった。何処だ?」

「ゲーセン。こないだ結局、行けなかったとこの。」

「ああ、分かった。…と、聴こえましたか?」

『あぁ。…そうか、ゲームセンターか…。』

野田は、何かを考え込むように呟くと、うーん…。と、唸り出した。

「……あ、」

『おい、ツヴァイ。それに二人追加してもいいか?』

どうしたのだろうか。と訊ねようとツヴァイが口を開こうとするのと同時に、野田の方が先に訊ねてきた。

「え?あ、ちょっと待ってください。…あ、ちなみに誰ですか?」

亮に確認しようと一旦携帯から耳を離しかけ、ツヴァイは思い出したように、慌てて訊ねた。

『新しくウチに配属になった奴らだ。片方はこの間お前と会ったっつってたぞ?』

「……ああ。分かりました。」

野田の言葉に、頭をぎった美人を思い出す。

「…亮。ゲーセン、野田さんの所から二人、一緒に行ってもいいかって。」

「おん?野田さんとっから?…別にいいぞ?」

亮はツヴァイの質問に不思議そうに首をかしげながらもオーケーを出す。

「分かった、ありがとう。…いいみたいです。何処で合流しますか?」

『そうだなぁ…。…現地集合、でいいか?』

「はい。分かりました。」

『おう。じゃ、楽しんでこいよ。』

「はい。失礼します。」

ピッ。と軽い音を立ててツヴァイは通話を切った。


―と、いうことが二時間ほど前の事だ。

「くっそぉおおおおっ!もう一回!もう一回だ!!」

「いいよ。じゃあ、次あれやろ。」

「えっ、まだやるんですか?」

亮とレヒツの通算二桁以上の対戦を見ていた閑崎は、驚いた顔をした。

「放っておいて大丈夫ですよ。いつも、あんな感じです。」

「へー…。…僕、ゲームなんて滅多にした事無いから、あんなにはきっと出来ないですよ。……あの…。今日はいちさんはいらっしゃらないんですか?」

閑崎が辺りを見回す。

目がキラキラと輝いている。

「すみません。今日は風邪ひいて、家で休んでいます。ここのところ根を詰めすぎていていまして…。」

ツヴァイは、ほんの少し言葉に申し訳なさをにじませながら告げた。

「…えっ…。」

あきらかに、びっくりした。という顔をした閑崎は、顔を青くした。

「だ、大丈夫なんですか!?風邪?ホントに風邪ですか!?ちゃんと食べてらっしゃりますか!?何か買って行った方がいいですか!?ああ、それとも…」

いや、真っ青が正しいようだった。

「い、いえ、お気遣いなく。」

若干どころか、大分引いてツヴァイが告げる。

「本当ですか!?あ、いちさんって、果物フルーツは何が好きですか!?桃缶とかがやっぱりいいですかね?」

「ほんとに、お気遣いしないでください!」

普段なら絶対に見ることが出来ないだろうツヴァイの慌てた姿に、亮達はゲームに夢中で気付かない。

そんなツヴァイに助けの手を差し出したのは、

「ちょっと、閑崎さんっ!ツヴァイさんが困ってますよ!」

ペシン。という効果音が合っているかのような、軽い動作で、暴走した閑崎を止めたのは、小柄な女性だった。

隣には、アイスを持ったリンクスが居た。

ってっ!さ、向坂さぎさかちゃん…?ちょっと、何も殴る事は無いじゃないか。」

「閑崎さんが暴走したのが悪いんですよ。少しは自重してください。」

えー。と閑崎が言うと、えー。じゃないです!と言い返す。

そんな、閑崎に説教する向坂と呼ばれたポニーテールの女性に、ツヴァイは見覚えがある気がした。

とにかく謝るように向坂に言われた閑崎が、ツヴァイに頭を下げた。

「すみません、少しばかり暴走してしまいました。」

―今ので少しなのか。

「いえ、驚きはしましたが。そんな、謝らないでください。それだけ心配してくださるなんて、有難ありがたいくらいです。」

嘘は言っていない。

しかし、ここにアインスが居なくてよかったと思うのは、きっと悪い事ではないはずだ。

そんなことを考えていると、向坂がツヴァイに向き直った。

「ツヴァイさん、本当にすみません。」

「いえ、気にしないでください。…えぇっと、向坂…さんでしたね。」

「はい。そうです。」

女性は笑って頷いた。

「あの、何処かでお会い、しましたか?」

ツヴァイの言葉に、向坂ははい。と答えた。

「先日、署での騒ぎの時に、お恥ずかしながら、人質になってしまっていた者です。」

その言葉に、ツヴァイの記憶が繋がった。

「あぁ、あの時の方ですか。お怪我とか、もう大丈夫なのですか?」

「はい。お陰様で、大した怪我が無く、今はもうこの通りで」

『あ、ちょ。お前、それはひきょ!あぁぁああああああっ!!』

話の途中、そんな断末魔が聞こえてきた。

三人が振り返ると、亮が撃沈し、レヒツは拳を掲げていた。

「…負けちゃった…んですかね?」

「…みたいですね…。」

向坂の苦笑い混じりの言葉に、ツヴァイは丁寧に返した。

そんな二人のやり取りを見ていた閑崎が何かを思いついたのか、口を開いた。

「…あの、ツヴァイさん。」

「はい。なんですか?」

「…えーっと、あー…、大したことではないんですけど……」

閑崎が言い淀む。

ツヴァイは首を傾げて次の言葉を待った。

「…その、…敬語、やめませんか?今日から僕達は、正式に野田さんの部下、裏社会課の配属になったんですから。」

それが気になって…。と言うと、閑崎はさらに何かを思い出したのか。あ。と呟いた。

「そう言えば、まだちゃんとした自己紹介してなかったか…。」

閑崎はそう言うと、服を整え、咳払いを一つした。

「…コホン。改めまして、僕は閑崎。閑崎かんざき耀翔あきとだ。裏社会課の新人だ。よろしく、ツヴァイ君。」

それに習うように、向坂も居住まいを正した。

「改めまして、向坂さぎさか愛心こころです。これから宜しくお願いします。」

代表するように閑崎がツヴァイに向かって手を差し出した。

「改めまして、ツヴァイです。…こちらこそ、よろしく。」

ツヴァイはその手を受け入れた。

それに、閑崎は満足そうな顔をした。

「…何か、訊きたいことでもあれば答えるよ?」

なんでもは無理だけどね。と閑崎は、爽やかに笑った。

「あ、なら…」

ツヴァイは何となく、以前から気になっていて、聴けていなかった事を訊ねることにした。

「…あの、…閑崎さんは、アインスの性別、知っているのか?」

「うん。知ってるよ?男の子…だよね?」

ごく当たり前だというように告げた閑崎は、ポケットから一枚の写真を取り出した。

「これを見る限り、どう見ても男の子だよね?」

「えっ…。」

思わず固まってしまう。

「?…どうしたの?ツヴァイ?」

そんなツヴァイの様子に、リンクスが不思議そうに見上げてくるが、

―これは…、どう答えるべきなのだろうか…。

というか、答えていいのだろうか。

差し出された写真に写っていたのは、アインスだ。

しかし、これはどう考えても、

「…小さい…。」

今でこそ、周りに比べ大分、いや、かなり小柄なアインスだが、身長もさることながら、写真の顔立ちは、今に比べて幼い。大分。

「いやぁ、ここに配属が決まった時に野田さんが見せてくれたんだけど、あんまりにも可愛くって!野田さんに頼み込んで一枚貰ったんだ!」

デレーッと今にも写真に頬擦りし出しそうな顔で写真を眺める閑崎。

「気持ち悪いですよ…。」

そんな閑崎に、引く向坂。

ツヴァイは固まり、リンクスはさらに頭の上にクエスチョンマークを増やしていた。

―性別を知った上で、この反応…。つまり、この人は……ショタコン…!?

内心でそんな答えが出てしまったツヴァイは、溜め息を吐いた。

ー本当に、ここにアインスが居なくてよかった。

リンクスは、訳が分からないまま、とりあえずツヴァイの背をさすった。


・━━━━━━━━━━ † ━━━━━━━━━━━・


「ァフェッックッ!」

「…ぷっ。…なぁに、それ?くしゃみ?」

「うぅ…。誰か噂してんのか?」

ツヴァイが色んな意味で大変な目に遭っている頃、アインス素直に布団にくるまって、サキの持ってきた桃缶を頬張っていた。

「ん、うまい。」

「ふふ。アインスは、桃缶好きだったんだねー。初めて知ったよ。」

「んー?んー…。好きっていうか、風邪ひいたら桃缶!っていうイメージがあるからなぁ…、初めて風邪ひいたけど。」

また一つ頬張る。

「そっかな?あ、あーん…。ん、美味しい。私は、どっちかっていうと、パイナップルかなぁ…?」

「へー、そうなんだ。」

最後の一つはサキにあげると、アインスはご馳走様。と手を合わせた。

「んじゃ、薬ここに置いとくね。」

サキが皿を乗せたお盆を持って部屋を出ようとした時だった。

ピンポーン。

「誰だろ?」

滅多に客の来ないアインス達の家に、誰かがやってきた。

「はーい、どちら様…」

ガチャン。と誰かも確認せずにサキが玄関を開けると、

「やぁ、来ちゃった。」

「おい、離せ!俺は別に行くなんて言ってねぇ!」

いつもの作務衣ではなく、しっかりと着物を着たKと、首根っこを掴まれた夏がいた。


「いやー、しかし君が風邪ねぇ…。」

「明日、天変地異でも起きんじゃねえの?」

「夏、それは酷いよ…。」

アインスの部屋で、三人はサキが剥いた果物をつつきながら、そんなどうでもいいような事を話していた。

「にしても…。Kはともかく、夏まで御見舞に来るなんて、ビックリだよ。」

「馬鹿言うな。誰がテメェなんぞの見舞いに来るか。」

ふん。と鼻を鳴らして夏はそっぽを向いた。

その言葉と態度に、Kはニヤリと笑った。

「あっれー?じゃあなんでこの家の外をウロウロしてたのかなぁ?お見舞いじゃないとなると…、まさかストー」

「仕事の話だ!仕事の!それ以上は何か話すな!」

「なんだい。最後まで言わせてくれたっていいじゃあないかい。」

言葉を遮られたKが、つまらなそうに口を尖らせる。夏はそれに、うるせぇ。とだけ返した。

「…で。仕事の話って?」

『仕事』という単語を聞き、アインスは、そのやり取りを笑う事もせず、夏に先を促した。

「あぁ、それなんだがな。組合ルアからだ。」

夏は、しっかりとアインスに向き合うと、表情を引き締めて告げた。



「明日、午前十時。ノッテディルナ、アイツの組織はらのなかで組合の会議がある。それに参加するように、だとさ。」


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