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お題で30分:雨

作者: 木耳

ハッピーエンドではありませんので、そこはご注意を。

滅茶苦茶ブランクがある人が書いてるので、文章力もご注意を。

梅雨という時期柄、このところはずっと雨が続いている。大学になってまで机を並べる姉も同じ様なことを考えているらしく、大きな溜め息を吐いた。

「雨だとなーんかやる気でないっていうかさあ」鉛筆をくるくる回しながら、レポートが進まない言い訳をする姉。

「久々に晴れてた昨日のうちにやっておけばよかったのにねー」

とっくに終えた私は意地らしく返して、姉の本棚から適当な本を手に取る。普段は色々なものを投げ散らかす姉にしては珍しく、ブックカバーが掛かっていた。それを外すと、踊っていたのは「失敗しない新興宗教」という文字。ナンジャコレ? 相変わらず姉は集中していないようで、思考回路が止まった私の隙をついて本を奪い取った。そしてそのまま、鍵のかかる引き出しに入れて鍵を掛けてしまった。

「他のはいいけどそれはだめ!」

姉が珍しく怒る。ブックカバーといい反応といい、何やら怪しい。しかし、平凡な日常に現れた「宗教」の文字はあまりにもショッキングで、気圧されてそれ以上は追及出来なかった。


そんな事もすっかり忘れたあの日、やはり梅雨の日。姉は忽然と姿を消した。それを知ったのは私がサークルから帰ってきた時。机の上にはボロボロのブックカバーを残して。だけどその時は失踪したなど思うはずもなく、ブックカバーを掛けるだなんて珍しい、と呑気に思った。その瞬間、消え去った記憶が忽ち蘇った。再び、脳裏にあの文字が踊った。「失敗しない新興宗教」。あの怪しい本にブックカバーを掛けなくてもよくなる、ということ? 嫌な予感が体を駆け巡った。

まさか、そんな筈はない。そう思いつつ、姉のパソコンを無断で開いて確認する。パスワードは、姉が入力するさまを見て知っていた。だが、入力しても認証されない。手が震えていた。何度か失敗してから、ようやっとログインしてもなお、震えが止まらない。むしろ、震えは激しくなった。

デスクトップには「教祖」やら何やら、物騒な文字にアイコン、pdf……。ゾッとした。本当に教団を建てるつもりだったのだと、がらんとした部屋で思い知った。「人が死ぬのは決まって雨の日」、そんな言葉を聞いた事がある。

その日から私は、姉は死んだと周囲に言うようになった。本当は、自分に言い聞かせる為に。宗教を興して儲けるような汚い人間と決別する為に。あの体たらくだが愉快な姉と、汚い姉は別人だと思うために。姉のようにはならない為に。


あれから四年、梅雨入りしたばかりの今日。私は古書店で一冊の本を見つけた。細部まで読み込まれたに違いないボロボロさ。残っている筈は無いのに、「あの日」の残り香を感じた様な気がした。

恐らく私に残った道徳心は今日死ぬだろう。実に呆気なく。

表を見ればしとしと雨が降っている。 私は、本を手に取った。

と、まあ、今のところ私にしかわからないような自己満足の短編でした。

稚拙ながら、お読みいただきありがとうございました。

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