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気持ち悪いといふ感情

いつもの如く、薄暗い部屋の中で作業をする男。

毎度の如く、紫色の蛇が部屋を訪れた。


「あっみりん♪ 暇ヒマ潰し、持ってきてやったなのぉ.☆」

「ねぇ、らっぴ。何度も言うようだけど、ボクの名前は網目……」

「あみりんの本当の名前が何でも構わねぇなのぉ☆ 名前なんて記号なのぉ☆ らっぴが楽しめれば、ばっちおーらいなのぉ☆」


楽しげに尾を揺らして近付いたラピスは、何処からともなくゲームソフトを取りだした。


「こいつをよろしくなのぉ☆」

「……ゲームの攻略法ってわけじゃないよね。いつものように、管理者モードへのアクセス方法を調べればいいの?」

「うみゅっ☆ ついでに、データ改ざん方法も教えとけなのぉ☆」

「はぃはぃ。じゃぁ、何時もの通り、データを調査して、まとめた物を渡すから、1分待ってね」


ゲームソフトを受け取った男は、明日の天気の話をするかのように軽く答えると、右の(てのひら)にあるソフトを眺めた。ソレは徐々に男の手の中に埋まっていき、スゥっと男の手をすり抜けた。

手の甲から落ちてくるゲームソフトを左手で受け止めた男は、器用にクルクルとソフトを指先で回して机の上に置く。その間に右手はマウスを動かし、文書作成ソフトを立ち上げる。

ものすごいスピードでカタカタとキーボードが叩かれる。キーボードの上を踊る指は、ラピスの眼には捉える事が出来なかった。

あっという間に、画面の中には管理者モードを立ち上げる方法や、データの改ざんの仕方がまとめられていき、全てが討ち終わったところで、プリントアウトされた。

きっちり1分後、男は印刷した書類を差し出した。


「らっぴ、お待たせ。これでいいかな?」


受け取った紫色の蛇はニンマリと笑う。


「おっけおっけなのぉ☆ これで、せんじーに人間変身して貰えるなのぉ☆」

「……せんじー?」

「うみゅ? 気にするななのぉ☆」


にぱっと笑うと、いそいそと部屋を出て行くラピス。

一人部屋の中に取り残された男は「せんじー、せんじー」と呟くと、おもむろに検索を始める。

しかし、いくら彼が検索しても『せんじー』という単語は探し出せなかった。


「なんだろう? 『分からない』って、変な感じだ……もやもやして嫌な感じ……『気持ち悪い』?」


呟いて首を傾げ、しばし思考する。

唇に人差し指を当て、目をパチクリと瞬いた彼は、「そうか」と小さく零すと、妙にすっきりした表情を浮かべる。


「そっか、コレが『気持ち悪い』だ―――また、らっぴから一つ教わったね」


頷くと、再びネットの海に潜り、その中で漂う噂を拾い集め始めた。

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