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気ままな短編集

おばあちゃんとわたし

作者: 辺 鋭一

ちょっとしたネタをもとに描いた作品ですので、規定ギリギリの短め作品です。

そのため手軽に読める作品となっておりますので、途中で読むのをやめず、どうか最後まで読んでやってください。


では、行ってみましょう。

   ●



 わたし、くしさきかなみ。6才。

 小学2年生になったばかりの女の子です。

 好きな物は給食の杏仁豆腐とおばあちゃん。

 嫌いな物は意地悪してくる男の子と、大きなトラック(怖いです)。

 そんな、一部を除いてごく普通な女の子です。

 このおうちに、おばあちゃんと一緒に住んでます。

 ここまでは、わりと普通です。

 でもうちのおばあちゃん、なんだか変なんです。

 だって、わたしに触ろうとしても、すり抜けちゃうんですから。

 普通こんなこと、ありえませんよね?

 でも、わたしはかしこいから、おばあちゃんがなんなのか知ってるんです。


 うちのおばあちゃんは、『ゆうれい』さんなんです!!


 だって少し前に、お化けの話がのっている本を読んだんですから。

 だから、ゆうれいが普通の物に触れないということも、普通の人には見えないということも知っています。

 だけど、わたしはどうやら普通じゃなかったみたいで、おばあちゃんのこともはっきり見えるし、お話だってできます。

 それに、ゆうれいさんは怖い物だ、って本には書いてありましたけど、そんなことはありません。

 おばあちゃんはとっても優しく笑ってくれますし、わたしの事を見るととってもうれしそうにしてくれます。


 しかも、おばあちゃんはゆうれいなのに、なんだかあったかいんです。

 触れはしないけど、おばあちゃんにくっついていると、なんだか心がぽかぽかしてきます。

 やっぱりおばあちゃんもわたしと同じように、他の(ゆうれい)とは違うんでしょう。

 そう考えると、なんだかとっても嬉しいです。

 お揃いって、いいですよね!!





 おばあちゃんといるのはとっても楽しいし、いろいろなお話をしてくれます。

 わたしは、そのお話を聞くのが大好きです。

 おばあちゃんがわたしにしてくれるお話は、本当にいろいろあります。


 『むかしむかし――』から始まるおとぎ話。

 『ほんの少しむかし』の、戦争のお話。

 おばあちゃんの家族のお話。

 幸せだったころのお話。

 とってもつらい出来事があった、と言う話。

 大切な人が、事故で死んでしまったというお話。


 どれもこれも面白いし、わくわくもするんですけど、つらいお話をする時のおばあちゃんの顔は、あんまり見ていたくないです。

 哀しそうな、つらそうな顔を見ていると、わたしまで暗い気持ちになってきます。

 そんなときは決まって、わたしはおばあちゃんに抱き着きます。

 もちろん触ることはできませんが、おばあちゃんの近くにいるだけで、おばあちゃんはにっこりと笑ってくれます。

 それを見ると、わたしの中の今までの哀しい気持ちがすっと消えていってしまいます。

 おばあちゃんって、本当にすごいですね!!




 でも、おばあちゃんといて一つだけ困ることがあります。

 それは、おばあちゃんがくれるお菓子の事です。

 おばあちゃんはわたしを喜ばそうと、いろいろなお菓子を出してくれます。

 それはもう、見ているだけでおなか一杯になりそうなほどたくさんのお菓子を、お盆いっぱいに出してくれます。


 金平糖、どら焼き、かりんとう、醤油のおせんべい、おまんじゅう、ポン菓子(お米の形をしたサクサクのお菓子)、飴、干し芋、玉子ぼーろ、最中、柿ピー、栗ようかん、水ようかん、芋ようかん、大福、お団子(あんこ、みたらしなど)、安倍川餅、黄粉餅、たい焼き、今川焼、などなど。

 また、それだけではのども乾くだろうと、飲み物はカルピス、麦茶、ヤクルト、ジュース(りんご、オレンジ、ぶどうなどなど)、サイダー、コーラなんかもよく出ました。

 そんな感じで毎日いろいろなお菓子がわたしの前に並ぶわけですが、本当に、こまっています。


 ……食べられないんですよね……。


 いえ、べつにまずそうだから食べられないと言う訳ではありません。むしろとてもおいしそうなんです。

 ただまあ、いくらおいしそうだといっても、食べられないんですよね……。


 だって、触れないんですから。


 考えてみればわかると思いますが、おばあちゃんはゆうれいさんです。

 そのゆうれいさんが出してくれたものは、当然この世のものではありません。

 だから、わたしが触ろうとしてもすり抜けてしまうんです。

 それじゃあ食べようがありませんよね。

 匂いとかはわかるので、なんだかもったいないような気分になります。


 そのことをおばあちゃんに言おうかとも思いましたが、わたしにお菓子を差し出してくるときのおばあちゃんの笑顔を見ていると、何も言えなくなってしまいます。

 ホント、ずるいです。

 仕方がないので、お菓子を掴み、そのまますぐに口の中に持って行く――ふりをします。

 おばあちゃんからは手の中にお菓子があるように見えているはずなので、私が食べていないことに気がついてはいないと思います。

 お盆の上をよく見ればお菓子が減っていないのはわかるのですが、おばあちゃんはそれに気づいていないようです。

 ああ、良かった……。






 そんなふうに、わたしとおばあちゃんは毎日毎日朝から夜まで一日中、ずっと一緒に遊んでいます。

 でも、最近お外が騒がしいんです。

 時々夜になるとカメラを持った人が家の周りをうろうろしたり、昼間でも近所の人がうちの様子を見に来たりしてました。

 なんでも、わたしのおうちにゆうれいがいることが他の人にばれてしまったみたいで、心霊写真を撮ろうとする人が集まってきて騒がしくなり、ついには近所の人たちが協力して神社の人を呼び、幽霊を追い払おうという話になったとか。


 ……ゆるせません……!


 おばあちゃんはこんなに良いゆうれいさんなのに、こわいからって追い出すなんて、絶対に許しません。


 ……おばあちゃん、出て行かなくていいんですよ? わたしが守ってあげますからね?


 わたしがおばあちゃんにそう言うと、おばあちゃんはどこか困った顔をして、それでも笑って頭を撫でてくれました。

 ……通り抜けちゃってるので、感触はないですけど、それでも温かさは伝わってきます。

 この温かさ、絶対に守って見せます……!




 そして数日たって、わたしたちの家に大人の人たちが数人やってきました。

 どの人も白い和服のようなものを着ています。

 その人たちは家に入って来るなり、私には目もくれずにおばあちゃんに詰め寄っていきました。


 ……危ない! おばあちゃんを守らなきゃ!!


 わたしはそう思って、その人たちとおばあちゃんの間に割って入ります。

 大人の人たちは、わたしを見てとっても驚いた顔を浮かべています。

 それはそうでしょう、普通ならゆうれいさんを守る女の子なんているわけありませんからね。

 

 ……でも、わたしはおばあちゃんと離れたくない……!!


 だから、わたしは大人の人たちに向かって、叫ぶ。



 ――帰って! おばあちゃんを追い出さないで!!



 普段は出さない大きな声を出したためか、障子どころか家中が震えます。

 わたしもびっくりしました。ここまでうちはぼろかったんでしょうか。

 でも、わたしのその声も家のぼろさも手伝っての事でしょう、わたしに気圧されたのか、大人の人たちは顔色を変えてすごすごと引き下がっていきました。


 ……よかった、おばあちゃんを守れた……。


 わたしは気が抜けてしまって、その場に座り込んでしまいました。

 それでも、首だけを後ろに向けて、肩ごしにおばあちゃんに向かって笑いかけます。

 私の視線の先では、おばあちゃんも顔色を変え、なんだか不安そうにしています。

 きっと、さっきの人たちがよほど怖かったのでしょう。


 ……でも、大丈夫。わたしがきっと守ってあげるから……。


 























 ――ダカラ、ズットイッショニイヨウネ? オバアチャン……?














   ●

いかがでしたでしょうか?


この話の落ちがわかったところで、もう一度最初からこの作品を読んでみることをお勧めします。

そうすると、今までと感じ方が変わってくる文章がいくつか出てくると思いますので。



私がホラー作品を書くのはこれが初めてです。

なので、感想やご意見、不自然な点や誤字脱字、筋の通った酷評などは大歓迎です。

振るってお叱りの声をお寄せくださいませ。


それでは最後になりますが、ここまで読んでくださった貴方に、最大限の感謝を。


またどこかでお会いしましょう。

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― 新着の感想 ―
[一言] はじめまして。 最後の一文を読んだらまた読み返さずにはいられないですね! こういうひねりのきいたお話大好きです。その文章力を見習いたい。 ホラーといっても怖くなく、むしろ心があったまる感じで…
[良い点] ほんわか可愛らしくて安心して読んでいたら……まさかのオチで、おおっ、上手い! と思いました。 でも怖いと言うよりいいもの読んだ~という満足な読後感があって素敵です。 [気になる点] ええと…
2012/08/28 07:26 退会済み
管理
[良い点] 逆だったんですね♪途中、ホンワカから雲行きが怪しくなってきたとおもったら…でした。雰囲気が一気に逆転してビックリしました★ [気になる点] どら焼きが二つありました [一言] 結構、最後が…
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