フレンド〜友達だなんて思っちゃいけなかった〜
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 『友達だなんて思っちゃいけなかった。………』
あれはいつもとなんらかわらない出来事だと思ってた。
いつもと同じようにふざけあってただけで。
でも、あまりにも尚がしつこかったから。
殴ってしまった。
軽くだけど。
おまけにこんな事まで言ってしまった。
『馴れ馴れしいな。……ウザっ』
言った後すごく後悔した。
あの時の尚の顔といったら……
一瞬、無表情になって笑顔に戻った。でもとっても寂しそうな笑顔だった。
『うわっ!ヒドイッ』
でもそう言ったからいつも同じで大丈夫だと思った。
いつもとかわらないと。
そう思い込んでた。
勝手に。
次の日の朝。
尚はいつも遅刻ギリギリで学校にくる。
これはいつもの事。
5分前の予鈴が鳴る。
尚はまだ来ない。
「ねぇ、明。尚って最近うざくない?」
何の話のつながりでこんな会話なったのか思い出せないけど、いきなり真衣がそう言い出した。
「そうかな?」
私は、はっきり言うことができなかった。
だって正直にいうと最近尚にイラつく事が少なくなかったから。
でもそれをはっきり人前で言えるほどの私の怒りはなかった。
「私はだめだな。見てると本当にイラつく。しつこいんだよね。そう思わない?」
そういえば真衣は前々から尚を嫌っていた。
クラス替えしたばかりのときはそうでもなかったが慣れていくうちにお互い合わないのが分かったのか段々離れていった。
二人が合わないのは真衣が大人過ぎ、尚が子供っぽいからだろう。
「さぁ?」
私はここで否定とか賛成とか決めるのが面倒で嫌で適当に返事を返した。
本当ならここで逃げずに素直に言うべきだった。
本鈴が鳴る少し前に尚が慌てて入ってきた。
真衣と話していたすぐ近くの後ろのドアから。
話を聞かれたかなっと焦ったが、尚は笑顔で元気よくあいさつしてきたからそれはないようだった。
尚はよく寝ていることが多いが、その日は尚は机に顔を伏せて寝ている時間がいつもより多かった気がする。
結局その日、尚とした会話は朝のあいさつと授業変更のことだけだった。
それ以外はいつもと特に変わりなく過ぎていった。
次の日。
尚はまた遅刻ぎりぎりでくるのかなっと思っているうちに本鈴がなってしまった。
尚は朝のホームルームが終わっても来なかった。連絡はまだ入っていないそうだ。
尚は1時間目が終わってもお昼になっても午後の授業が始まっても姿を見せなかった。1年の時から休んだことのない尚はその日来なかった。
メールしても返事は返ってこなかった。
次の日、尚が休んだ理由が分かった。交通事故にあったそうだ。
確か尚は自転車通学だった。前に一緒に帰ったが尚の運転は見ていてとっても危なっかしいものだった。軽い接触事故だったらしので怪我自体はそんなにひどくないらしい。来週には退院できるそうだ。
心配で大丈夫かな?お見舞いに行こうと思ったが3日前のことが頭によみがえり行くのためらったが今はそんな事はいってらないと思い帰りいこうと決心した。
その日の放課後。私は先生に尚の入院した病院を聞いて見舞いへと向かった。
尚の入院していたのは市内の総合病院だった。病室の名前の欄は尚だけようだった。
病室のドアに手をかける。
なんだか、あけるのをためらってしまう。
そんなふうに迷っていると、ドアの隙間から声が聞こえてきた。
泣きじゃくるような声にそれをなだめるような青年の声。
「うっっっ・・・・・ぐすっ・・」
「大丈夫?」
「うっ・・・すぐる・・・」
「考えごとしなが自転車乗るのは危ないって前から言ってたろ。」
「・・・うん。」
そういえば前に尚が言っていた。年下の癖に私よりしっかりした、従姉妹がいると。名前は確かすぐる。
「来週から行けそう?」
「……行けない。」
か細く今にでも倒れてしまいそうな返事。
「友達とケンカでもしたの?」
「……違うよ」
澄んでいて悲しみがあふれだしそうな小さな声だった。
「じゃあ、どうして?」
「……クラスメートの…………明ちゃんに……………………」
中々続かない言葉にすぐるが優しく問いかける。
「何があったの?」
「嫌われてたの……明ちゃんに…………友達だなんて思っちゃいけなかった…………明ちゃん……グスッ…うっ…」
「…尚」
一つ一つの言葉から尚がどれだけ苦しみ泣いたのかが覗えた。
尚は声をあげながら泣いてた。
その後どうなったのか私は知らない、尚の泣いている声を聞きたくなかったから。
尚の言葉が頭から離れない。
『友達だなんて思っちゃいけなかった……』
やっぱり聞いていたんだろう。一昨日の朝の真衣との話しを。
尚が泣く程、考え悩みこむなんて思わなかった。
普段から尚はいつも笑っていて感情がうまく読み取れなかったし、さっきみたいに泣いてるところも見たことがなかった。
はっきり言ってショックだった。
尚は傷ついたりしない。
普段の尚を見ているといつも笑ってて悲しむなんてしないような子だと勝手に思っていた。
身近すぎて、分からなくなってた。
尚がどんなときに怒って、いつ笑って、何の話をすると喜んだのか、そして何を言ったら
悲しむのか。
ずっと近くにいたのに。
何1つ分からなくなっていた。
尚はなんでも笑って物事を流せるほど大人じゃなくて
十七歳のただの普通の女の子で
みんなと同じ絶妙で独特的なバランスな感情の中にいた。
なにも言わないから、怒らないから、悲しまないから、
なにを言っても大丈夫だと思ってた。
本当は全然そうじゃないのに。
全然平気なはずないのに。
『友達だよ』って一言 真衣と話しているときにいえば尚はこんなふに悩んで泣かずにすんだかもしれない。
悩みすぎて事故にあうこともなかったかもしれない。
私は尚をちゃんと見ていなかった。
でも尚を嫌いになったわけじゃない。
ただ言葉がたりなかっただけ。
『友達だよ。』
明日に言いに行こう。
泣かせて悲しませてしまった尚に。
きっと今私は目が赤くて恥ずかしくて行けないないから。
明日必ず。