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聞き取り完了

部屋に戻った僕たち。皆、あまりのことに沈み込んでいるようだ。特に篠原はあれからうつむいたまま一言もしゃべろうとしない。重い空気が流れていく。

「ただいま戻りました。検死の結果、いや何と言うべきか聞き取りをした結果をテープに入れてきたんですが、皆さんお聞きになられますか?」

「いや、僕は遠慮しておく。あの画像を処理すれば何かわかることがあるかもしれないから」

 真っ先に青ざめた顔で答えたのは市田だった。その言葉にへんっと鼻を鳴らす篠原。

「なんだよ篠原。言いたいことあるならちゃんと言えよな」

「別に。どうしても聞きたいなら答えてあげないこともないけど?」

 完全にやつあたりなのは見えている。椅子を左右に回転させながら爪をいじっている篠原は完全にどこかの女子高生だ。

「市田。ここで再生するから、しばらく席はずしてくれ」

 止めるより他になかった。市田は打たれ弱いのだ。篠原だけでなく彼まで使い物にならなくなるのは得策ではない。

「それでは、再生しますよ?」

 不気味にほほ笑む礼文。この場が彼に掌握されたような錯覚に陥る。

『あつい苦しい。何が起こってるの。誰か助けて』

「この方は若い女性のようですねえ」

 彼の言葉で、彼が質問する声がかき消される。

『私は火事だっていう叫びを聞いて、階段付近のあの部屋の近くまで来たの、。そしたらいきなりシャッターが閉まりだして』

「彼女からは聞き取れそうなことはこれだけでした」

「あ、あのさ礼文。彼女どうなったの?」

「聞くな。聞いたらだめだ篠原」

 震える篠原のそのセリフを波多が泣きそうな声で止める。

「彼女? そう断定するのは篠原さん。早計ですよ。僕にわかるのはこの声の主が真っ黒だったというそれだけですから。なにしろ」

「わ、わかった礼文。続きを早くしてくれ」

 僕は皆の心を読み取りせかす。全員がつぶれることもあり得た。

「そうですね。なら、重要そうな情報は、これでしょうか」

『カメラを持った人間? そう言えば見たわ。煙の中笑いながら立っていた黒い影が何か持っているのを。行方はよくわからないけど、そのまま死んだんじゃないかしら。だって煙が充満するほどの密閉性だったもの」

「これくらいですね。しかしながら『彼ら』の中に該当する証言をした人物はいませんでしたよ。言ってる意味わかりますよね」

「ああ、わかった。つまり犯人は死んでいないと」



聞き終えた僕たち。皆、先ほどよりさらに沈み込んでいるようだ。波多なんかは口を開けて思考を停止させている。

「なんだ篠原。そんな顔君らしくないな」

くけけ。と笑いながら市田が晴れ晴れとした顔して戻ってくる。

「あつい。くるしい。何が起こってるの。誰か助けて」

 熱に浮かされたような顔で手を伸ばしながら、篠原は市田のほうへ近づいていく。僕からしてみれば篠原の魂胆はバレバレだが、何も知らない市田はぎょっとして床にへたり込んだ。

「うわああ、ちょちょっと、篠原さん。しっかり。うそだろ。篠原さんしっかりしてくれよ。は、班長。篠原が取りつかれた」

「何うろたえてんの? 馬鹿じゃない?」

 すっと、篠原は何げない顔で立ち上がり市田を見下ろす。

「そこまでにしてくれ。皆、犯人はわかったか?」

 このままでは収集がつかない。遊んでる場合ではないのだ。

「わかるわけないだろ班長。これだけじゃ」

「一応一通りの画像解析を済ませてみたけど、用意周到なのか犯人を判別できるようなデータはとれなかったよ」

 市田が悔しそうに言う。

「班長。この音声データ借りて行っていい?」

「ああ、いいが。何に使うんだ?」

「全てが真実だとは限らない。でしょ」

「ああ、しかししゃべってもらわなくて大丈夫なのか?」

「やってみるだけ」

 篠原が意味深な顔でヘッドホンを頭につける。

「よし、波多は遺体の確認をして来い」

「班長。その命令嘘ですよね?」

「いや、礼文と一緒にもう一度行ってくれ。何かわかるかもしれない」

 波多は礼文に引きずられるように出ていく。

それを確認して今まで黙っていた浅井さんに声をかけた。

「こんな感じですね。大丈夫そうですか?」

「大丈夫って? 蒼也くんが思っている通りの意味で?」

「はい」

 こういう時しゃべらなくても伝わるのは便利だ。

「こんな状況でふざけたことできるのなら、やっていけると思うけど? まあ、職務中ということを忘れがちなのはそれ以前の問題だけど」

 僕はその言葉に苦笑した。


 


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