ミラージュ対策班発足!
「今日集まった皆さんは新しく発足した超能力テロ対策班のメンバーとして配属されました。皆さんのことを理解するために軽く自己紹介お願いします」
僕はそう言って浅井さんと場所を代わった。
「私はこの班の補佐を務めることになった、科学捜査研究所の浅井ようこです。長年、超常犯罪について研究してきました。あなたたちの精神衛生面や、この班の待遇向上を主な任務にしています。任務を遂行するために必要なことがあれば私に相談してください」
その後に自らは何の力もないことを伝える。彼女の言葉に全員が僕を見た。あの人は一体何をするためにいるんだろう。とでも考えてるようだ。
「はい。皆さん、何かあったらこの人を頼るように」
「ちょっと待ってください。この班の班長って、浅井さんですか?」
至極まっとうな疑問を眼鏡をかけてパソコンをいじくっていた刑事、市田伝七が言葉にした。
「いいえ僕です。新倉蒼夜。先月まで交番勤務でした。だから君たちと同じで刑事一年目です。現場では僕が指揮をとります。ちなみに僕の力は人の心が読めることです。でもご心配なく。普段は使わないようにしているので」
波多が篠原に力の正体明かした以上、皆のあいだに隠し事は無用かなと思い、自己紹介で自分の力についてしゃべるようにした。反応としては市田が僕は刑事一年目じゃないといい、篠原が……一瞬僕をすごい目でにらんだ。それだけだった。
「はい。じゃあ次は私ですね。篠原音羽、先月まで交通課勤務でした。頼りないリーダーを補佐して必ずミラージュを捕まえたいと思っています。力は嘘を見抜く能力『ライアーディテクター』です。よろしく皆さん」
完全なるスマイル。交通課でもそれなりの噂になっていたと言われる。波多が凍り付いていた。篠原の完全仕事モードを目にしたからだ。篠原を真似て波多を見たら、彼からのオーラは激しく波形を変化させ、いかにも混乱という様相を呈していた。
「頼りないリーダー、同感です。市田伝七、先月まで本庁サイバーテロ対策室にいました。刑事としては先輩なので、わからないことがあればなんでも僕に聞いてください。よろしく」
明らかに自分の出を鼻にかけていて、班内の輪を乱しそうな彼を仲間にしたのは、彼のITスキルの高さと、これまでの功績からだった。
自己紹介は混乱から疑惑、へと心情を変えた波多をおいて進んでいく。
「『墓場の烏』こと、礼文九郎。浅井さんの紹介でこの課の面接を受けました。科捜研で検死官を務めていました。力というのは変ですが、死者の声を聴くことができます」
全員がザワッとなった。頬が少しこけて髪も目にかかるいかにも不気味な男。彼が死者の声を聴くと言ったからに間違いはない。波多は放心している。
「ルーキー、大丈夫?」
篠原がおどけた感じで彼の肩をたたく。波多はようやく気を取り直した。
「波多達郎。前の課では『恋愛占い師』と呼ばれてました。ここにいる澄ました顔の乙女、篠原さんの占いもしたことがあります。興味があったら声をかけてください。信じてもらえないかもしれませんが、フラグを見てある程度操作できるフラグメイカーです」
「はい。彼に恋愛経験なんて実はほとんどないんで、恋愛相談なんかしたらいけませんよ。それと波多君、後でもう一度相談、いいかな?」
笑顔で突っ込みを入れる篠原。内心を伺うことのできる僕には、彼女の中にドロりと黒いものが渦巻いていることがわかる。
「はい。皆さんこれからできるだけ仲良くしてください。特に篠原さんと波多君の間にはただならぬものが渦巻いているようですが」
波多の頭にげんこつマークが描かれたフラグが立っていることは気にしないでおこう。そう僕は決めて挨拶を終えた。




